MongoDB とは?ドキュメント志向データベースの強み・弱み・最新動向を総解説
データベース選定で「MongoDB」という名前を聞いたことはありませんか?従来のリレーショナルデータベース(RDB)とは異なる「NoSQL」の代表格として、世界中で採用されているドキュメント志向データベースです。
近年、スケーラビリティや開発速度を重視するプロジェクトで MongoDB の採用が増えています。しかし、「本当に自分のプロジェクトに適しているのか」「どんな弱みがあるのか」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。
本記事では、MongoDB の基本概念から強み・弱み、そして 2025 年の最新動向まで、初心者の方にもわかりやすく丁寧に解説していきます。
背景
データベース技術の進化
データベースは長年、リレーショナルデータベース(RDB)が主流でした。MySQL や PostgreSQL などは、テーブルと行・列で構造化されたデータを管理し、ACID 特性により高い整合性を保証してきました。
しかし、インターネットの普及とともにデータ量が爆発的に増加し、従来の RDB では対応しきれない課題が浮上してきたのです。
以下の図は、従来の RDB とドキュメント志向データベースの構造の違いを示しています。
mermaidflowchart TB
subgraph rdb["RDB(リレーショナルDB)"]
users["users テーブル"]
posts["posts テーブル"]
comments["comments テーブル"]
users -->|外部キー| posts
posts -->|外部キー| comments
end
subgraph mongo["MongoDB(ドキュメント志向)"]
doc1["{ user, posts: [...] }"]
doc2["{ user, posts: [...] }"]
doc3["{ user, posts: [...] }"]
end
rdb -.->|データ正規化| mongo
図で理解できる要点:
- RDB は複数のテーブルに分割し、外部キーで関連付ける
- MongoDB は関連データを 1 つのドキュメントにまとめて格納
- データの取得方法が根本的に異なる
NoSQL の台頭
2000 年代後半、ビッグデータや Web サービスの急成長に対応するため、「NoSQL」という新しいデータベースの概念が生まれました。
NoSQL は「Not only SQL」の略で、RDB とは異なるアプローチでデータを管理します。MongoDB は、その中でも「ドキュメント志向」という分類に属しているのです。
ドキュメント志向データベースとは
ドキュメント志向データベースは、データを「ドキュメント」という単位で管理します。ドキュメントは JSON や BSON(Binary JSON)形式で表現され、階層構造や配列を持つことができます。
この方式により、複雑なデータ構造を柔軟に表現できるようになりました。
課題
RDB が抱える制約
従来の RDB は、以下のような課題を抱えていました。
スキーマの硬直性
RDB では、事前にテーブル構造(スキーマ)を定義する必要があります。後からカラムを追加したり、データ型を変更したりするには、ALTER TABLE などの DDL(Data Definition Language)を実行しなければなりません。
開発速度が求められる現代において、この硬直性は大きな制約となります。
水平スケーリングの困難さ
RDB は垂直スケーリング(サーバーのスペック向上)が基本で、水平スケーリング(サーバーの台数増加)には向いていません。シャーディング(データ分割)を行う場合も、複雑な設計と運用が必要です。
以下の図は、スケーリングの違いを示しています。
mermaidflowchart LR
subgraph vertical["垂直スケーリング(RDB)"]
server1["サーバー<br/>CPU: 4コア<br/>RAM: 8GB"]
server2["サーバー<br/>CPU: 16コア<br/>RAM: 64GB"]
server1 -.->|スペックアップ| server2
end
subgraph horizontal["水平スケーリング(MongoDB)"]
node1["ノード1"]
node2["ノード2"]
node3["ノード3"]
node4["ノード4"]
node1 ---|シャーディング| node2
node1 ---|シャーディング| node3
node1 ---|シャーディング| node4
end
図で理解できる要点:
- 垂直スケーリングは、1 台のサーバーのスペックを上げる方式
- 水平スケーリングは、複数のサーバーにデータを分散させる方式
- MongoDB は水平スケーリングに優れている
JOIN クエリのパフォーマンス
RDB では、複数のテーブルを結合する JOIN 操作が頻繁に発生します。データ量が増えると、JOIN のパフォーマンスが低下してしまうのです。
開発プロセスにおける課題
RDB を使った開発では、以下のような課題もありました。
ORM(Object-Relational Mapping)の複雑さ
オブジェクト指向プログラミングと RDB の間には「インピーダンスミスマッチ」という問題があります。オブジェクトのデータ構造とテーブルの構造が一致しないため、ORM ライブラリを使ってマッピングする必要があるのです。
しかし、ORM の設定や N+1 問題の解決には、相応の知識と経験が求められます。
スキーマ変更のコスト
アジャイル開発では、仕様変更が頻繁に発生します。その度にスキーマを変更し、マイグレーションスクリプトを作成し、既存データを移行する作業が必要になります。
このプロセスは時間がかかり、開発速度の低下につながっていました。
解決策
MongoDB のアプローチ
MongoDB は、前述の課題を以下のアプローチで解決します。
柔軟なスキーマレス設計
MongoDB はスキーマレス(Schema-less)、より正確には「動的スキーマ(Dynamic Schema)」を採用しています。
同じコレクション内でも、ドキュメントごとに異なる構造を持つことができます。新しいフィールドを追加する際も、ドキュメントに直接追加するだけで済むのです。
以下のコードは、MongoDB のドキュメント構造の例を示しています。
javascript// ユーザードキュメントの例
const user1 = {
_id: ObjectId('507f1f77bcf86cd799439011'),
name: '田中太郎',
email: 'tanaka@example.com',
age: 28,
};
javascript// 同じコレクションに異なる構造のドキュメントを格納可能
const user2 = {
_id: ObjectId('507f1f77bcf86cd799439012'),
name: '佐藤花子',
email: 'sato@example.com',
age: 32,
address: {
prefecture: '東京都',
city: '渋谷区',
},
skills: ['JavaScript', 'TypeScript', 'React'],
};
上記のように、user1 には存在しない address や skills フィールドを user2 に追加できます。
埋め込みドキュメントによるデータモデリング
MongoDB では、関連するデータを 1 つのドキュメントに埋め込むことができます。これにより、JOIN 操作なしでデータを取得できるのです。
javascript// ブログ記事ドキュメントの例
const blogPost = {
_id: ObjectId('507f1f77bcf86cd799439013'),
title: 'MongoDB 入門',
content: 'MongoDB の基本的な使い方を解説します。',
author: {
name: '山田一郎',
email: 'yamada@example.com',
},
// コメントを埋め込み
comments: [
{
user: '鈴木次郎',
text: 'とても参考になりました!',
createdAt: new Date('2025-01-15'),
},
{
user: '高橋三郎',
text: '続編を楽しみにしています。',
createdAt: new Date('2025-01-16'),
},
],
tags: ['MongoDB', 'NoSQL', 'データベース'],
createdAt: new Date('2025-01-10'),
updatedAt: new Date('2025-01-10'),
};
このドキュメント 1 つで、記事本体・著者情報・コメント・タグをすべて管理できます。
水平スケーリングの容易さ
MongoDB は、シャーディングによる水平スケーリングを標準機能として提供しています。
シャードキーを指定するだけで、データを複数のサーバーに自動的に分散できるのです。これにより、データ量が増えてもパフォーマンスを維持できます。
以下の図は、MongoDB のシャーディングアーキテクチャを示しています。
mermaidflowchart TB
client["アプリケーション"]
mongos["mongos<br/>(ルーター)"]
config["Config Servers<br/>(メタデータ管理)"]
shard1["Shard 1<br/>(データ:A-M)"]
shard2["Shard 2<br/>(データ:N-Z)"]
shard3["Shard 3<br/>(データ:数値)"]
client -->|クエリ| mongos
mongos -->|メタデータ参照| config
mongos -->|データ取得| shard1
mongos -->|データ取得| shard2
mongos -->|データ取得| shard3
図で理解できる要点:
- mongos がルーターとして機能し、適切なシャードにクエリを振り分ける
- Config Servers がメタデータを管理
- 各シャードが分散してデータを保持
レプリケーションによる高可用性
MongoDB は、レプリカセット(Replica Set)という仕組みで、データの冗長化と高可用性を実現しています。
プライマリノードに障害が発生しても、セカンダリノードが自動的に昇格し、サービスを継続できます。
具体例
Node.js × TypeScript での MongoDB 利用
実際のプロジェクトで MongoDB を使う際の具体例を見ていきましょう。
環境構築
まず、必要なパッケージをインストールします。
bash# MongoDB 公式ドライバーのインストール
yarn add mongodb
# TypeScript の型定義をインストール
yarn add -D @types/mongodb
接続設定
MongoDB への接続を管理するモジュールを作成します。
typescript// src/db/connection.ts
import { MongoClient, Db } from 'mongodb';
// 接続 URL(環境変数から取得)
const MONGODB_URI =
process.env.MONGODB_URI || 'mongodb://localhost:27017';
const DB_NAME = process.env.DB_NAME || 'myapp';
let client: MongoClient;
let db: Db;
typescript/**
* MongoDB に接続する関数
* @returns データベースインスタンス
*/
export async function connectToDatabase(): Promise<Db> {
// すでに接続済みの場合は再利用
if (db) {
return db;
}
// 新規接続
client = new MongoClient(MONGODB_URI);
await client.connect();
db = client.db(DB_NAME);
console.log(`MongoDB に接続しました: ${DB_NAME}`);
return db;
}
typescript/**
* MongoDB から切断する関数
*/
export async function disconnectFromDatabase(): Promise<void> {
if (client) {
await client.close();
console.log('MongoDB から切断しました');
}
}
型定義の作成
TypeScript でドキュメントの型を定義します。
typescript// src/types/user.ts
import { ObjectId } from 'mongodb';
/**
* ユーザードキュメントの型定義
*/
export interface User {
_id?: ObjectId; // MongoDB が自動生成するID
name: string;
email: string;
age: number;
address?: {
prefecture: string;
city: string;
};
skills?: string[];
createdAt: Date;
updatedAt: Date;
}
CRUD 操作の実装
ユーザーデータの CRUD(Create, Read, Update, Delete)操作を実装します。
typescript// src/repositories/userRepository.ts
import { Collection, ObjectId } from 'mongodb';
import { connectToDatabase } from '../db/connection';
import { User } from '../types/user';
/**
* ユーザーコレクションを取得
*/
async function getUserCollection(): Promise<
Collection<User>
> {
const db = await connectToDatabase();
return db.collection<User>('users');
}
typescript/**
* ユーザーを作成
*/
export async function createUser(
userData: Omit<User, '_id'>
): Promise<ObjectId> {
const collection = await getUserCollection();
const result = await collection.insertOne({
...userData,
createdAt: new Date(),
updatedAt: new Date(),
});
return result.insertedId;
}
typescript/**
* ID でユーザーを取得
*/
export async function getUserById(
id: string
): Promise<User | null> {
const collection = await getUserCollection();
return await collection.findOne({
_id: new ObjectId(id),
});
}
typescript/**
* すべてのユーザーを取得(ページネーション付き)
*/
export async function getUsers(
page: number = 1,
limit: number = 10
): Promise<User[]> {
const collection = await getUserCollection();
return await collection
.find()
.skip((page - 1) * limit)
.limit(limit)
.toArray();
}
typescript/**
* ユーザー情報を更新
*/
export async function updateUser(
id: string,
updateData: Partial<Omit<User, '_id'>>
): Promise<boolean> {
const collection = await getUserCollection();
const result = await collection.updateOne(
{ _id: new ObjectId(id) },
{
$set: {
...updateData,
updatedAt: new Date(),
},
}
);
return result.modifiedCount > 0;
}
typescript/**
* ユーザーを削除
*/
export async function deleteUser(
id: string
): Promise<boolean> {
const collection = await getUserCollection();
const result = await collection.deleteOne({
_id: new ObjectId(id),
});
return result.deletedCount > 0;
}
インデックスの作成
パフォーマンスを向上させるため、頻繁に検索するフィールドにインデックスを作成します。
typescript// src/db/indexes.ts
import { connectToDatabase } from './connection';
/**
* インデックスを作成する関数
*/
export async function createIndexes(): Promise<void> {
const db = await connectToDatabase();
const usersCollection = db.collection('users');
// email フィールドにユニークインデックスを作成
await usersCollection.createIndex(
{ email: 1 },
{ unique: true, name: 'email_unique' }
);
console.log('インデックスを作成しました');
}
集計パイプラインの活用
MongoDB の強力な集計機能を使ってデータを分析します。
typescript// src/services/analyticsService.ts
import { connectToDatabase } from '../db/connection';
/**
* 都道府県別のユーザー数を集計
*/
export async function getUserCountByPrefecture() {
const db = await connectToDatabase();
const usersCollection = db.collection('users');
return await usersCollection
.aggregate([
// address フィールドが存在するドキュメントのみ
{
$match: { 'address.prefecture': { $exists: true } },
},
// 都道府県でグループ化
{
$group: {
_id: '$address.prefecture',
count: { $sum: 1 },
},
},
// カウント順にソート
{ $sort: { count: -1 } },
])
.toArray();
}
以下の図は、Node.js アプリケーションと MongoDB の連携フローを示しています。
mermaidsequenceDiagram
participant App as Node.js アプリ
participant Driver as MongoDB Driver
participant DB as MongoDB Server
App->>Driver: connectToDatabase()
Driver->>DB: 接続要求
DB-->>Driver: 接続確立
Driver-->>App: Db インスタンス
App->>Driver: collection.insertOne()
Driver->>DB: Insert クエリ
DB-->>Driver: InsertResult
Driver-->>App: insertedId
App->>Driver: collection.findOne()
Driver->>DB: Find クエリ
DB-->>Driver: Document
Driver-->>App: User データ
図で理解できる要点:
- MongoDB Driver が Node.js と MongoDB Server の橋渡しをする
- 非同期処理により、効率的にデータ操作を行う
- 各操作の結果が Promise として返される
Next.js での活用例
Next.js の API Routes で MongoDB を使う例を見てみましょう。
typescript// app/api/users/route.ts
import { NextRequest, NextResponse } from 'next/server';
import {
createUser,
getUsers,
} from '@/repositories/userRepository';
import { User } from '@/types/user';
/**
* GET /api/users
* ユーザー一覧を取得
*/
export async function GET(request: NextRequest) {
try {
const { searchParams } = new URL(request.url);
const page = parseInt(searchParams.get('page') || '1');
const limit = parseInt(
searchParams.get('limit') || '10'
);
const users = await getUsers(page, limit);
return NextResponse.json({ users });
} catch (error) {
console.error('ユーザー取得エラー:', error);
return NextResponse.json(
{ error: 'ユーザーの取得に失敗しました' },
{ status: 500 }
);
}
}
typescript/**
* POST /api/users
* ユーザーを作成
*/
export async function POST(request: NextRequest) {
try {
const body = await request.json();
// バリデーション
if (!body.name || !body.email) {
return NextResponse.json(
{ error: 'name と email は必須です' },
{ status: 400 }
);
}
const userId = await createUser(
body as Omit<User, '_id'>
);
return NextResponse.json(
{ message: 'ユーザーを作成しました', userId },
{ status: 201 }
);
} catch (error) {
console.error('ユーザー作成エラー:', error);
return NextResponse.json(
{ error: 'ユーザーの作成に失敗しました' },
{ status: 500 }
);
}
}
Docker での MongoDB 環境構築
開発環境で MongoDB を簡単に立ち上げる方法を紹介します。
yaml# docker-compose.yml
version: '3.8'
services:
mongodb:
image: mongo:7.0
container_name: mongodb
ports:
- '27017:27017'
environment:
MONGO_INITDB_ROOT_USERNAME: admin
MONGO_INITDB_ROOT_PASSWORD: password
volumes:
- mongodb_data:/data/db
restart: unless-stopped
volumes:
mongodb_data:
driver: local
上記の設定ファイルで、以下のコマンドを実行すれば MongoDB が起動します。
bash# MongoDB コンテナを起動
docker compose up -d
# ログを確認
docker compose logs -f mongodb
bash# MongoDB シェルに接続
docker compose exec mongodb mongosh -u admin -p password
# コンテナを停止
docker compose down
MongoDB の強み
MongoDB の主な強みをまとめます。
| # | 項目 | 説明 |
|---|---|---|
| 1 | 開発速度の向上 | スキーマレス設計により、仕様変更に柔軟に対応できます |
| 2 | 水平スケーラビリティ | シャーディングにより、データ量の増加に対応可能です |
| 3 | 高パフォーマンス | ドキュメント単位でのデータ取得により、JOIN が不要です |
| 4 | JSON ライクな構造 | JavaScript や TypeScript との親和性が高く、開発効率が向上します |
| 5 | 豊富な機能 | 集計パイプライン、全文検索、地理空間検索など |
| 6 | 高可用性 | レプリカセットによる自動フェイルオーバー |
| 7 | クラウド対応 | MongoDB Atlas により、運用負荷を軽減できます |
柔軟なデータモデリング
MongoDB は、データの構造を後から変更しやすい特徴があります。アジャイル開発や MVP(Minimum Viable Product)開発に最適でしょう。
高速な読み書き
インメモリストレージエンジンや、適切なインデックス設計により、高速なデータアクセスが可能です。
開発者体験の向上
JavaScript エコシステムとの親和性が高く、フロントエンドエンジニアでも扱いやすいデータベースです。
MongoDB の弱み
一方で、MongoDB には以下のような弱みもあります。
| # | 項目 | 説明 |
|---|---|---|
| 1 | トランザクション処理 | RDB ほど洗練されていません(改善されてきています) |
| 2 | 複雑な JOIN | 基本的に非推奨のため、データモデリングの工夫が必要です |
| 3 | データの重複 | 埋め込みドキュメントにより、データが重複する可能性があります |
| 4 | ストレージ使用量 | JSON 形式のため、RDB よりも容量を消費しやすい傾向です |
| 5 | 学習コスト | RDB とは異なる設計思想のため、学習が必要です |
| 6 | 整合性の保証 | 結果整合性(Eventual Consistency)が基本です |
トランザクション対応の遅れ
MongoDB は、長らくドキュメント単位でのトランザクションのみをサポートしていました。
複数ドキュメント間のトランザクションは MongoDB 4.0 から対応しましたが、RDB ほど成熟していません。金融システムなど、厳密な整合性が求められるシステムでは注意が必要です。
データ重複の管理
埋め込みドキュメントを使うと、同じデータが複数の場所に存在する可能性があります。
例えば、ユーザー情報を複数の記事ドキュメントに埋め込んだ場合、ユーザー情報を更新する際は、すべての記事ドキュメントを更新しなければなりません。
メモリ消費量
MongoDB はインデックスをメモリ上に展開するため、大量のインデックスを作成すると、メモリを大量に消費します。適切なキャパシティプランニングが重要です。
最新動向(2025 年版)
MongoDB の最新動向を見ていきましょう。
MongoDB 7.x の新機能
2023 年にリリースされた MongoDB 7.0 では、以下の機能が追加されました。
暗号化クエリブル暗号化(Queryable Encryption)
データベース管理者でさえ復号化できない、エンドツーエンドの暗号化機能です。プライバシー規制が厳しい業界での採用が進んでいます。
タイムシリーズコレクションの強化
IoT やログデータなど、時系列データの管理が大幅に改善されました。自動的にデータを圧縮し、古いデータを削除する機能が追加されています。
MongoDB Atlas の進化
MongoDB の公式クラウドサービス「MongoDB Atlas」は、2025 年現在も機能拡張が続いています。
Atlas Vector Search
ベクトル検索機能が追加され、AI や機械学習のアプリケーションとの統合が容易になりました。
Embedding(埋め込み表現)を MongoDB に保存し、類似度検索を行えます。これにより、レコメンデーションエンジンやセマンティック検索の実装が簡単になりました。
Atlas Stream Processing
リアルタイムデータ処理機能が強化され、Apache Kafka のような Stream Processing を MongoDB 上で実行できるようになりました。
Atlas App Services
サーバーレス関数やトリガー、GraphQL API などを提供する統合プラットフォームです。バックエンド開発の負担を大幅に軽減できます。
AI 時代への対応
生成 AI の普及に伴い、MongoDB も AI 対応を加速させています。
Vector Database としての活用
OpenAI の GPT や Claude などの大規模言語モデル(LLM)が生成した Embedding を、MongoDB に保存して検索するユースケースが増えています。
typescript// ベクトル検索の例(TypeScript)
import { connectToDatabase } from './db/connection';
/**
* ベクトル類似度検索を実行
*/
export async function searchByVector(embedding: number[]) {
const db = await connectToDatabase();
const collection = db.collection('articles');
// ベクトルインデックスを使用した検索
return await collection
.aggregate([
{
$vectorSearch: {
queryVector: embedding,
path: 'embedding',
numCandidates: 100,
limit: 10,
index: 'vector_index',
},
},
])
.toArray();
}
上記のコードでは、$vectorSearch という集計パイプラインステージを使って、類似度の高いドキュメントを取得しています。
セキュリティの強化
近年、データベースのセキュリティが重要視されています。MongoDB も以下の機能を強化しています。
- ロールベースアクセス制御(RBAC)の改善
- 監査ログの強化
- LDAP および Kerberos 認証のサポート
- ネットワーク暗号化(TLS/SSL)の標準化
コミュニティとエコシステム
MongoDB は、活発なコミュニティと豊富なエコシステムを持っています。
ODM(Object Document Mapper)ライブラリ
Node.js では、Mongoose という ODM が広く使われています。TypeScript の型安全性を保ちながら、MongoDB を扱えます。
bash# Mongoose のインストール
yarn add mongoose
yarn add -D @types/mongoose
GUI ツール
- MongoDB Compass:公式の GUI ツール
- Studio 3T:高機能な商用ツール
- NoSQLBooster:クエリビルダーを備えたツール
これらのツールにより、開発者はより効率的にデータベースを管理できます。
まとめ
MongoDB は、ドキュメント志向という独自のアプローチで、従来の RDB が抱えていた課題を解決してきました。
MongoDB が適しているケース:
- スケーラビリティが重要なプロジェクト
- 仕様変更が頻繁に発生するアジャイル開発
- JSON ライクなデータ構造を扱う Web アプリケーション
- リアルタイム性が求められるシステム
- AI や機械学習との統合が必要なプロジェクト
MongoDB が適していないケース:
- 厳密なトランザクション処理が必要な金融システム
- 複雑な JOIN クエリが多いシステム
- データの正規化と整合性が最優先のプロジェクト
- レガシーシステムとの統合が中心の案件
MongoDB は万能ではありませんが、適切な場面で使えば、開発速度とパフォーマンスを大きく向上させることができるでしょう。
2025 年現在、AI 対応やセキュリティ強化など、MongoDB は進化を続けています。今後も NoSQL データベースの中心的な存在として、多くのプロジェクトで採用されていくに違いありません。
データベース選定の際は、プロジェクトの要件を正しく理解し、MongoDB の強みと弱みを考慮した上で、最適な選択をすることが大切です。
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