Devin の使い方入門:セットアップから最初のプロジェクトまで

近年、AI 技術の急速な発展により、私たちの開発スタイルは大きく変わりつつあります。特に注目されているのが、Cognition Labs が開発した完全自律型 AI ソフトウェアエンジニア「Devin」です。
従来の AI 開発ツールとは一線を画し、コード補完だけでなく、要件定義から設計、実装、テスト、デプロイまでの開発プロセス全体を自律的に実行できる画期的なツールとして、世界中の開発者から注目を集めています。
初心者の方でも、自然言語での指示だけで本格的な開発を始められるため、プログラミングの学習ハードルを大幅に下げてくれる存在と言えるでしょう。
この記事では、Devin の基本的な使い方から、セットアップ、そして最初のプロジェクト作成まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
背景
従来の開発環境には多くの課題が存在していました。まず、開発環境の構築だけでも膨大な時間と技術知識が必要で、初心者にとって大きな壁となっていたのです。
開発環境構築からプロジェクト開始まで、まさに立ちはだかる壁のようでした。下記の図で従来の開発フローを見てみましょう。
mermaidflowchart TD
A[プロジェクト要求] --> B[技術選定]
B --> C[環境構築]
C --> D[依存関係設定]
D --> E[コーディング]
E --> F[テスト作成]
F --> G[デバッグ]
G --> H[デプロイ準備]
H --> I[リリース]
style C fill:#ffcccc
style D fill:#ffcccc
style G fill:#ffcccc
特に問題となっていたのが、技術選定の複雑さ、環境構築の手間、そしてデバッグ作業の煩雑さです。これらのステップは初心者にとって非常にハードルが高く、多くの人がプログラミング学習を諦めてしまう原因にもなっていました。
AI エンジニアが注目される理由
近年、AI 技術の進歩により、開発者の作業を支援するツールが次々と登場しています。GitHub Copilot のようなコード補完ツールから始まり、ChatGPT のようなコード生成 AI まで、開発者の生産性向上に大きく貢献してきました。
しかし、これらのツールはあくまで「支援」の域を出ず、最終的な判断や統合作業は人間の開発者が行う必要がありました。そこで登場したのが、完全自律型の AI エンジニアという概念です。
Devin が解決する開発者の悩み
Devin は、従来の AI 開発ツールが抱えていた以下のような課題を解決します:
項目 | 従来の AI ツール | Devin |
---|---|---|
作業範囲 | コード補完・生成のみ | 開発プロセス全体 |
自律性 | 人間の指示が必要 | 完全自律実行 |
統合作業 | 手動で統合が必要 | 自動統合・テスト |
エラー対応 | 手動デバッグ | 自動エラー検出・修正 |
プロジェクト管理 | 別ツールが必要 | 統合された管理機能 |
これにより、開発者は創造的な作業により集中できるようになり、特に初心者の方は技術的な障壁を気にすることなく、アイデアの実現に専念できるようになったのです。
課題
開発環境構築の複雑さ
多くの初心者が最初に直面する課題は、開発環境の構築です。Node.js のバージョン管理、パッケージマネージャーの選択、エディタの設定、Git 設定など、実際にコードを書き始める前に覚えることが山積みでした。
さらに、プロジェクトごとに異なる技術スタックや依存関係の管理は、経験豊富な開発者でさえ頭を悩ませる問題です。特にフロントエンドとバックエンドを含むフルスタック開発では、複数の言語や框架を同時に扱う必要があり、設定の複雑さは指数関数的に増加していました。
プロジェクト開始時のハードル
新しいプロジェクトを始める際には、以下のような多くの決定事項があります:
- 技術スタックの選択: React、Vue.js、Angular など
- バックエンド選択: Node.js、Python、Go など
- データベース選択: MySQL、PostgreSQL、MongoDB など
- デプロイ環境: AWS、Vercel、Netlify など
これらの選択肢の多さは、初心者にとって「選択麻痺」を引き起こし、なかなかプロジェクトを始められない原因となっていました。
初心者が直面する技術的障壁
初心者の多くは、以下のような技術的な壁にぶつかります:
mermaidflowchart LR
A[学習開始] --> B[環境構築でつまずく]
B --> C[挫折]
A --> D[コーディング開始]
D --> E[エラーが発生]
E --> F[解決方法がわからない]
F --> C
A --> G[プロジェクト構想]
G --> H[技術選択で迷う]
H --> I[進まない]
I --> C
style C fill:#ffcccc
特に、エラーメッセージの意味がわからない、適切なライブラリの選び方がわからない、コードの構造化方法がわからないといった基礎的な部分での躓きが多く、これが学習継続の大きな阻害要因となっていました。
解決策
Devin の自律型開発機能
Devin が提供する最大の価値は、その「完全自律性」にあります。従来の AI ツールのように「人間がコードを書いて AI が補完する」のではなく、「AI が人間に代わってプロジェクト全体を開発する」という革新的なアプローチを採用しています。
具体的には、以下のような自律的な開発プロセスを実行できます:
mermaidsequenceDiagram
participant User as ユーザー
participant Devin as Devin AI
participant GitHub as GitHub
participant Deploy as デプロイ環境
User->>Devin: 自然言語で要求
Devin->>Devin: 要件分析・設計
Devin->>Devin: コード実装
Devin->>Devin: テスト実行
Devin->>GitHub: コミット・PR作成
Devin->>Deploy: 自動デプロイ
Devin->>User: 完成報告
このプロセスにより、ユーザーは技術的な詳細を気にすることなく、アイデアを実現に移すことができるようになります。
セットアップの簡略化
Devin のセットアップは、従来の開発環境構築と比較して大幅に簡略化されています。必要なのは以下の 3 つのステップだけです:
- アカウント登録(5 分程度)
- GitHub 連携(3 分程度)
- 初期設定(2 分程度)
合計でも 10 分程度で開発を始められるため、環境構築に丸一日かかってしまうような従来の開発スタイルとは大きく異なります。
自然言語でのタスク指示システム
最も画期的な機能が、自然言語でのタスク指示システムです。プログラミングの専門知識がなくても、日常会話と同じような感覚で AI に開発タスクを依頼できます。
例えば:
- 「ToDo アプリを作って」
- 「ユーザー登録機能を追加して」
- 「デザインをもっとモダンにして」
このような自然な指示で、Devin は適切な技術選択から実装まで全て自動で行ってくれるのです。
具体例
アカウント登録からセットアップまでの手順
それでは、実際に Devin を始める手順を詳しく見ていきましょう。初心者の方でも迷うことなく進められるよう、ステップごとに丁寧に解説いたします。
Step 1: アカウント登録
まず、Devin 公式サイト(https://app.devin.ai)にアクセスします。
javascript// アクセス先URL
const DEVIN_URL = 'https://app.devin.ai';
登録方法は以下の 3 つから選択できます:
- Google アカウント(推奨)
- GitHub アカウント
- メールアドレス
Google アカウントでの登録が最も簡単で、後の GitHub 連携もスムーズに進められるためおすすめです。
Step 2: 組織設定
アカウント登録後、組織名の入力画面が表示されます。
typescriptinterface OrganizationSetup {
name: string; // 会社名や個人名など
plan: 'Core' | 'Team'; // プラン選択
}
// 例:個人利用の場合
const myOrganization: OrganizationSetup = {
name: 'MyPersonalProjects',
plan: 'Core',
};
初心者の方には「Core プラン」がおすすめです。最初に 20 ドル(約 3,000 円)を支払い、以降は従量課金制となっています。
Step 3: GitHub 連携設定
GitHub 連携は、Devin の機能を最大限活用するために必須です。連携時には以下の権限を許可する必要があります:
mermaidgraph LR
A[GitHub連携] --> B[リポジトリアクセス]
A --> C[Issues管理]
A --> D[Pull Request作成]
A --> E[ワークフロー実行]
B --> F[コード読み書き権限]
C --> G[課題管理権限]
D --> H[レビュー権限]
E --> I[CI/CD権限]
これらの権限により、Devin は GitHub 上でのプロジェクト管理を完全に自動化できるようになります。
最初のプロジェクト作成(ToDo アプリ)
初心者に最適な最初のプロジェクトとして、シンプルな ToDo アプリを作成してみましょう。このプロジェクトを通じて、Devin の基本的な使い方を習得できます。
プロジェクト要求の作成
Devin に以下のような自然言語でタスクを指示します:
typescript// タスク指示の例
const taskDescription = `
シンプルなToDoアプリを作成してください。
要件:
- タスクの追加・削除・完了機能
- レスポンシブデザイン
- ローカルストレージでの永続化
- TypeScript + Next.js を使用
`;
Devin の動作プロセス
指示を受けた Devin は、以下のような段階的なプロセスで開発を進めます:
mermaidstateDiagram-v2
[*] --> 要件分析
要件分析 --> 技術選定
技術選定 --> プロジェクト初期化
プロジェクト初期化 --> コード実装
コード実装 --> テスト作成
テスト作成 --> デバッグ
デバッグ --> 完成確認
完成確認 --> [*]
デバッグ --> コード実装 : エラー発見時
実際の生成コード例
Devin が生成するコードの一例をご紹介します。まず、基本的なコンポーネント構造から見てみましょう。
typescript// types/todo.ts - 型定義
export interface Todo {
id: string;
text: string;
completed: boolean;
createdAt: Date;
}
export interface TodoState {
todos: Todo[];
filter: 'all' | 'active' | 'completed';
}
次に、メインの ToDo コンポーネントです:
typescript// components/TodoApp.tsx - メインコンポーネント
import React, { useState, useEffect } from 'react';
import { Todo, TodoState } from '../types/todo';
export const TodoApp: React.FC = () => {
const [state, setState] = useState<TodoState>({
todos: [],
filter: 'all',
});
// ローカルストレージからデータを読み込み
useEffect(() => {
const savedTodos = localStorage.getItem('todos');
if (savedTodos) {
setState((prev) => ({
...prev,
todos: JSON.parse(savedTodos),
}));
}
}, []);
return <div className='todo-app'>{/* UI実装 */}</div>;
};
タスクの追加機能の実装:
typescript// components/TodoApp.tsx - タスク追加機能
const addTodo = (text: string) => {
const newTodo: Todo = {
id: Date.now().toString(),
text: text.trim(),
completed: false,
createdAt: new Date(),
};
setState((prev) => {
const updatedTodos = [...prev.todos, newTodo];
// ローカルストレージに保存
localStorage.setItem(
'todos',
JSON.stringify(updatedTodos)
);
return {
...prev,
todos: updatedTodos,
};
});
};
このように、Devin は型安全性を保ちながら、実用的なコードを自動生成してくれます。
GitHub との連携設定
Devin の大きな特徴の一つが、GitHub との深い統合です。プロジェクト作成から Pull Request 作成まで、全てを自動化できます。
リポジトリの準備
bash# Devinが自動実行するコマンド例
npm init -y
npm install next react react-dom typescript @types/react @types/node
npm install -D tailwindcss postcss autoprefixer
npx tailwindcss init -p
自動コミットと PR 作成
Devin は開発作業完了後、自動的に以下の処理を実行します:
typescript// Devinが実行するGit操作(概念的な表現)
const gitWorkflow = {
commands: [
'git add .',
'git commit -m "feat: implement basic todo app functionality"',
'git push origin feature/todo-app',
'gh pr create --title "Add Todo App" --body "Implements basic todo functionality with TypeScript and Next.js"',
],
};
このような自動化により、開発者は Git の操作に詳しくなくても、適切なバージョン管理が行えるようになります。
実際のコード生成例
最後に、Devin が生成する完整なコンポーネントの例をご紹介します:
typescript// pages/index.tsx - メインページ
import { GetServerSideProps } from 'next';
import { TodoApp } from '../components/TodoApp';
interface HomePageProps {
title: string;
}
export default function HomePage({ title }: HomePageProps) {
return (
<div className='min-h-screen bg-gray-50 py-8'>
<div className='max-w-md mx-auto'>
<h1 className='text-3xl font-bold text-center mb-8 text-gray-800'>
{title}
</h1>
<TodoApp />
</div>
</div>
);
}
export const getServerSideProps: GetServerSideProps =
async () => {
return {
props: {
title: 'My Todo App',
},
};
};
スタイリング用の Tailwind 設定:
css/* styles/globals.css - スタイル設定 */
@tailwind base;
@tailwind components;
@tailwind utilities;
.todo-app {
@apply bg-white rounded-lg shadow-lg p-6;
}
.todo-item {
@apply flex items-center gap-3 py-2 border-b border-gray-200;
}
.todo-input {
@apply w-full px-4 py-2 border border-gray-300 rounded-lg focus:outline-none focus:ring-2 focus:ring-blue-500;
}
レスポンシブ対応とアクセシビリティを考慮した、実用的なコードが自動生成されているのがわかります。
まとめ
Devin は、初心者からベテラン開発者まで、幅広い層の開発者にとって革新的なツールです。特に初心者の方にとって、以下のようなメリットがあります:
技術的なハードルの大幅な軽減 複雑な環境構築や技術選択に悩む必要がなく、アイデアの実現により集中できます。
学習効率の向上
生成されたコードを読むことで、ベストプラクティスや最新の開発手法を自然に学習できます。
プロジェクト完成率の向上 途中で挫折することなく、最後までプロジェクトを完成させられる可能性が高まります。
初心者が次に取り組むべきステップ
Devin に慣れてきたら、以下のようなステップで学習を進めることをおすすめします:
-
小さなプロジェクトを複数作成
ToDo アプリの次は、天気アプリやカウンターアプリなど -
既存プロジェクトの改善
機能追加や UI の改善を依頼してみる -
より複雑なプロジェクトへ挑戦
データベース連携や API 統合を含むプロジェクト -
生成されたコードの理解
Devin が生成したコードを読んで、開発パターンを学習する
Devin は、プログラミング初心者の強力なパートナーとなってくれるでしょう。自然言語での指示だけで本格的な Web アプリケーションを作成できる時代が、ついに到来したのです。
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