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PHP 本番運用ガイド:OPcache・FPM プロセス管理・ヘルスチェック実装

PHP 本番運用ガイド:OPcache・FPM プロセス管理・ヘルスチェック実装

PHP アプリケーションを本番環境で安定稼働させるには、適切な設定と監視が欠かせません。この記事では、OPcache の最適化、PHP-FPM のプロセス管理、そしてヘルスチェック実装の具体的な方法を解説します。

これらの設定を適切に行うことで、レスポンス速度が数倍向上し、メモリ効率も大幅に改善できるでしょう。実際の本番環境で遭遇しやすい問題とその対処法も含めてご紹介しますね。

背景

PHP の実行フローとパフォーマンスボトルネック

PHP アプリケーションは、リクエストごとにスクリプトを読み込み、パースし、実行するという処理を繰り返します。この仕組みは開発時には便利ですが、本番環境では大きなオーバーヘッドとなってしまいます。

以下の図で、PHP の基本的な実行フローを確認しましょう。

mermaidflowchart TB
    request["HTTPリクエスト"] --> nginx["Nginx"]
    nginx --> fpm["PHP-FPM<br/>プロセスプール"]
    fpm --> parse["PHPスクリプト<br/>読み込み・パース"]
    parse --> compile["バイトコード<br/>コンパイル"]
    compile --> execute["実行"]
    execute --> response["HTTPレスポンス"]
    response --> nginx
    nginx --> client["クライアント"]

    style parse fill:#ffcccc
    style compile fill:#ffcccc

図のように、リクエストごとに「読み込み・パース・コンパイル」の工程が発生します。これが繰り返されることで、CPU 使用率が上昇し、レスポンスタイムが悪化する原因になりますね。

図で理解できる要点:

  • リクエストごとに毎回パース・コンパイルが発生する
  • 赤色で強調した部分がパフォーマンスボトルネック
  • FPM プロセスプールで並列処理を実現

本番環境で求められる要件

本番環境では以下のような要件を満たす必要があります。

#要件重要度目標値
1高速なレスポンスタイム★★★100ms 以下
2安定したメモリ使用量★★★メモリリーク防止
3適切なプロセス数管理★★★CPU コア数の最適化
4障害の早期検知★★★ヘルスチェック実装
5ログ・モニタリング★★☆異常検知の仕組み

これらの要件を満たすために、OPcache、PHP-FPM、ヘルスチェックの 3 つの要素が重要になってきます。

課題

OPcache 未設定による性能劣化

OPcache を有効化していない環境では、以下のような問題が発生します。

課題 1:リクエストごとのコンパイルオーバーヘッド

毎回スクリプトをパースしてバイトコードにコンパイルするため、CPU リソースが無駄に消費されてしまいます。これにより、同じハードウェアでも処理できるリクエスト数が半分以下になることもありますね。

課題 2:ファイル I/O の増加

キャッシュがないため、リクエストごとにディスクからファイルを読み込む必要があります。特に大規模なフレームワークでは、数百ファイルを読み込むこともあり、ディスク I/O がボトルネックになるでしょう。

PHP-FPM プロセス管理の不適切な設定

PHP-FPM のプロセス管理方式には staticdynamicondemand の 3 種類がありますが、適切に選択しないと以下の問題が発生します。

以下の図で、それぞれの管理方式の違いを見てみましょう。

mermaidflowchart LR
    subgraph static["static方式"]
        s1["常に固定数の<br/>プロセスを起動"]
        s2["メモリ使用量:高"]
        s3["起動速度:速"]
    end

    subgraph dynamic["dynamic方式"]
        d1["負荷に応じて<br/>プロセス数を調整"]
        d2["メモリ使用量:中"]
        d3["起動速度:中"]
    end

    subgraph ondemand["ondemand方式"]
        o1["リクエスト時に<br/>プロセスを起動"]
        o2["メモリ使用量:低"]
        o3["起動速度:遅"]
    end

    style static fill:#ffeeee
    style dynamic fill:#eeffee
    style ondemand fill:#eeeeff

図で理解できる要点:

  • static:メモリは使うが高速、トラフィックが安定している場合に最適
  • dynamic:バランス型、多くの本番環境で推奨
  • ondemand:メモリ節約重視、開発環境や低トラフィック向け

課題 3:メモリ不足やプロセス枯渇

pm.max_children の設定が少なすぎると、リクエストが処理待ちになります。逆に多すぎると、メモリ不足で OOM(Out Of Memory)エラーが発生してしまいますね。

エラー例:

iniError: PHP-FPM: [pool www] server reached pm.max_children setting (5), consider raising it

課題 4:アイドルプロセスの無駄

dynamic 方式で pm.min_spare_serverspm.max_spare_servers が適切でないと、アイドルプロセスが多すぎてメモリを無駄に消費するか、少なすぎて突発的な負荷に対応できなくなります。

ヘルスチェックの不在による障害検知の遅延

ヘルスチェックが実装されていないと、以下の問題が発生します。

課題 5:PHP-FPM プロセスの異常を検知できない

プロセスが起動していても、実際には応答不能な状態(デッドロック、無限ループなど)になっている場合があります。この状態では、ロードバランサーは正常と判断してトラフィックを送り続けてしまいます。

課題 6:アプリケーションレベルの異常検知

データベース接続エラーやキャッシュサーバーの停止など、アプリケーションレベルの問題を早期に検知する仕組みがないと、ユーザーにエラーが露出してしまうでしょう。

解決策

OPcache の最適化設定

OPcache を有効化し、適切に設定することで、パフォーマンスを劇的に向上させることができます。

OPcache の仕組み

以下の図で、OPcache がどのように動作するかを確認しましょう。

mermaidflowchart TB
    request["HTTPリクエスト"] --> fpm["PHP-FPM"]
    fpm --> check{"OPcacheに<br/>キャッシュあり?"}
    check -->|はい| cache["キャッシュから<br/>バイトコード取得"]
    check -->|いいえ| read["ファイル読み込み"]
    read --> parse["パース"]
    parse --> compile["コンパイル"]
    compile --> store["OPcacheに保存"]
    store --> execute["実行"]
    cache --> execute
    execute --> response["レスポンス"]

    style cache fill:#ccffcc
    style read fill:#ffcccc
    style parse fill:#ffcccc
    style compile fill:#ffcccc

図で理解できる要点:

  • キャッシュヒット時は読み込み・パース・コンパイルをスキップ
  • 緑色の経路が高速化されたフロー
  • 初回アクセス時のみ赤色の経路を通る

基本設定

php.ini または ​/​etc​/​php.d​/​10-opcache.ini に以下の設定を追加します。

ini; OPcache を有効化
opcache.enable=1

; CLI モードでも有効化(任意)
opcache.enable_cli=0

この設定で OPcache が有効になります。opcache.enable_cli は、コマンドライン実行時にも OPcache を使うかどうかの設定ですね。

メモリ設定

OPcache が使用するメモリサイズを設定します。

ini; OPcache が使用するメモリ(MB単位)
opcache.memory_consumption=128

; インターン文字列用メモリ(MB単位)
opcache.interned_strings_buffer=8

; キャッシュできるファイル数の最大値
opcache.max_accelerated_files=10000

メモリサイズはアプリケーションの規模に応じて調整してください。大規模な Laravel や Symfony アプリケーションでは 256MB 以上を推奨します。

バリデーション設定

ファイルの変更を検知する設定を行います。

ini; ファイルの変更チェック間隔(秒)
; 0 = 毎回チェック、推奨は本番環境で 60-300
opcache.revalidate_freq=60

; タイムスタンプでバリデーションを行う
; 本番環境では 0(無効)を推奨
opcache.validate_timestamps=0

本番環境では opcache.validate_timestamps=0 に設定することで、ファイル変更チェックを完全に無効化し、最高のパフォーマンスを得られます。デプロイ時は opcache_reset() や PHP-FPM の再起動でキャッシュをクリアしましょう。

詳細設定

その他の最適化設定も行います。

ini; ファイルキャッシュの保存先(オプション)
; サーバー再起動後もキャッシュを保持
opcache.file_cache=/var/tmp/opcache

; 巨大なクラスファイルを最適化
opcache.optimization_level=0x7FFEBFFF

; JIT コンパイラを有効化(PHP 8.0 以降)
opcache.jit=1255
opcache.jit_buffer_size=100M

JIT(Just-In-Time)コンパイラは PHP 8.0 以降で利用可能で、さらなる高速化が期待できます。1255 は推奨設定値ですね。

PHP-FPM プロセス管理の最適化

プロセス管理方式の選択

環境に応じて適切な管理方式を選択します。

ini; /etc/php-fpm.d/www.conf

[www]
; プロセス管理方式
; static | dynamic | ondemand
pm = dynamic

推奨設定:

#環境推奨方式理由
1高トラフィック本番環境static安定したパフォーマンス
2中規模本番環境dynamicバランスが良い
3開発環境・低トラフィックondemandメモリ節約

static 方式の設定例

常に一定数のプロセスを起動する方式です。

inipm = static

; 常に起動するプロセス数
; 推奨: CPU コア数 × 2 〜 4
pm.max_children = 20

メモリ使用量は プロセス数 × プロセスあたりのメモリ で計算できます。1 プロセスが 50MB 使う場合、20 プロセスで約 1GB 必要になりますね。

dynamic 方式の設定例

負荷に応じてプロセス数を動的に調整する方式です。

inipm = dynamic

; 最大プロセス数
pm.max_children = 50

; 起動時のプロセス数
pm.start_servers = 10

; アイドル時の最小プロセス数
pm.min_spare_servers = 5

; アイドル時の最大プロセス数
pm.max_spare_servers = 15

設定値の目安は以下の通りです。

inipm.start_servers = (pm.min_spare_servers + pm.max_spare_servers) / 2
pm.min_spare_servers = CPU コア数
pm.max_spare_servers = CPU コア数 × 2
pm.max_children = メモリ容量に応じて調整

ondemand 方式の設定例

リクエストが来たときだけプロセスを起動する方式です。

inipm = ondemand

; 最大プロセス数
pm.max_children = 20

; アイドル状態でプロセスを維持する秒数
pm.process_idle_timeout = 10s

この方式は、トラフィックが少ない時間帯にメモリを節約できますが、突発的な負荷に対する応答が遅くなる可能性があります。

プロセス最大リクエスト数設定

メモリリークを防ぐために、プロセスを定期的に再起動します。

ini; プロセスが処理するリクエスト数の上限
; この数に達したらプロセスを再起動
pm.max_requests = 1000

この設定により、万が一メモリリークが発生していても、自動的にプロセスがリフレッシュされます。

プロセス状態監視の有効化

PHP-FPM の状態を監視できるエンドポイントを有効化します。

ini; ステータスページのパス
pm.status_path = /fpm-status

; ping/pong エンドポイント
ping.path = /fpm-ping
ping.response = pong

これらのエンドポイントは、次のセクションで説明するヘルスチェックで使用します。

ヘルスチェックの実装

ヘルスチェックを多層的に実装することで、障害を早期に検知できます。

レイヤー構成

以下の図で、ヘルスチェックのレイヤー構成を確認しましょう。

mermaidflowchart TB
    lb["ロードバランサー"] --> l1["Layer 1:<br/>TCP接続チェック"]
    l1 --> l2["Layer 2:<br/>FPM Pingチェック"]
    l2 --> l3["Layer 3:<br/>アプリケーション<br/>ヘルスチェック"]

    l3 --> db["データベース接続"]
    l3 --> redis["Redis接続"]
    l3 --> storage["ストレージ接続"]

    style l1 fill:#ffe6e6
    style l2 fill:#fff4e6
    style l3 fill:#e6f7ff

図で理解できる要点:

  • Layer 1:最も基本的なチェック(TCP 接続のみ)
  • Layer 2:PHP-FPM プロセスの応答確認
  • Layer 3:アプリケーションの依存サービスも含めた総合チェック

Layer 1: Nginx での TCP チェック

Nginx の設定で PHP-FPM への接続をチェックします。

nginx# /etc/nginx/conf.d/upstream.conf

upstream php_backend {
    # ヘルスチェック間隔と条件
    server unix:/var/run/php-fpm/www.sock max_fails=3 fail_timeout=30s;

    # 複数サーバーの場合
    # server 192.168.1.10:9000 max_fails=3 fail_timeout=30s;
    # server 192.168.1.11:9000 max_fails=3 fail_timeout=30s;
}

max_fails は連続失敗回数、fail_timeout は障害とみなす時間です。3 回連続で失敗したら 30 秒間そのサーバーを使わないという設定になりますね。

Layer 2: FPM Ping エンドポイント

PHP-FPM の ping エンドポイントを Nginx で公開します。

nginx# /etc/nginx/conf.d/health.conf

server {
    listen 8080;
    server_name _;

    # FPM Ping エンドポイント
    location /fpm-ping {
        access_log off;
        allow 127.0.0.1;
        allow 10.0.0.0/8;  # 内部ネットワーク
        deny all;

        fastcgi_pass php_backend;
        fastcgi_param SCRIPT_FILENAME $document_root$fastcgi_script_name;
        include fastcgi_params;
    }
}

このエンドポイントにアクセスすると pong という応答が返ってきます。外部からのアクセスは拒否し、内部ネットワークからのみアクセス可能にしていますね。

FPM Status エンドポイント

より詳細な情報を取得できる status エンドポイントも設定します。

nginxlocation /fpm-status {
    access_log off;
    allow 127.0.0.1;
    allow 10.0.0.0/8;
    deny all;

    fastcgi_pass php_backend;
    fastcgi_param SCRIPT_FILENAME $document_root$fastcgi_script_name;
    include fastcgi_params;
}

このエンドポイントから以下の情報が取得できます。

yamlpool:                 www
process manager:      dynamic
start time:           28/Nov/2025:10:00:00 +0900
start since:          3600
accepted conn:        15230
listen queue:         0
max listen queue:     5
listen queue len:     128
idle processes:       8
active processes:     2
total processes:      10
max active processes: 15
max children reached: 0
slow requests:        0

Layer 3: カスタムヘルスチェックエンドポイント

アプリケーションレベルのヘルスチェックを実装します。

php<?php
// public/health.php

// ヘルスチェック結果を格納
$health = [
    'status' => 'healthy',
    'timestamp' => date('c'),
    'checks' => []
];

// HTTP ステータスコード
$httpStatus = 200;

まず、基本的な構造を定義します。すべてのチェックが成功すれば healthy、1 つでも失敗すれば unhealthy になります。

php// データベース接続チェック
try {
    $pdo = new PDO(
        'mysql:host=localhost;dbname=myapp',
        'user',
        'password',
        [PDO::ATTR_TIMEOUT => 3]
    );

    $pdo->query('SELECT 1');
    $health['checks']['database'] = 'ok';
} catch (PDOException $e) {
    $health['checks']['database'] = 'error';
    $health['status'] = 'unhealthy';
    $httpStatus = 503;
}

データベース接続をチェックします。タイムアウトを 3 秒に設定し、接続が遅い場合も検知できるようにしていますね。

php// Redis 接続チェック
try {
    $redis = new Redis();
    $redis->connect('localhost', 6379, 3);
    $redis->ping();
    $health['checks']['redis'] = 'ok';
} catch (RedisException $e) {
    $health['checks']['redis'] = 'error';
    $health['status'] = 'unhealthy';
    $httpStatus = 503;
}

キャッシュサーバーの接続もチェックします。ping() メソッドで応答確認を行っています。

php// OPcache ステータスチェック
$opcache = opcache_get_status();
if ($opcache === false || !$opcache['opcache_enabled']) {
    $health['checks']['opcache'] = 'disabled';
    $health['status'] = 'degraded';
} else {
    $memoryUsage = $opcache['memory_usage']['used_memory'] /
                   $opcache['memory_usage']['free_memory'];

    // メモリ使用率が 90% を超えたら警告
    if ($memoryUsage > 0.9) {
        $health['checks']['opcache'] = 'high_memory';
        $health['status'] = 'degraded';
    } else {
        $health['checks']['opcache'] = 'ok';
    }
}

OPcache の状態もチェックします。メモリ使用率が高い場合は degraded(劣化)状態として報告しましょう。

php// レスポンスを返す
header('Content-Type: application/json');
http_response_code($httpStatus);
echo json_encode($health, JSON_PRETTY_PRINT);

最後に JSON 形式で結果を返します。正常時は HTTP 200、異常時は HTTP 503 を返すことで、ロードバランサーが自動的に検知できますね。

Nginx でのヘルスチェックエンドポイント公開

作成したヘルスチェックスクリプトを公開します。

nginxlocation /health {
    access_log off;
    allow 127.0.0.1;
    allow 10.0.0.0/8;
    deny all;

    fastcgi_pass php_backend;
    fastcgi_param SCRIPT_FILENAME $document_root/health.php;
    include fastcgi_params;
}

ロードバランサー設定例(AWS ALB)

AWS Application Load Balancer でのヘルスチェック設定例です。

json{
  "HealthCheckProtocol": "HTTP",
  "HealthCheckPort": "80",
  "HealthCheckPath": "/health",
  "HealthCheckIntervalSeconds": 30,
  "HealthCheckTimeoutSeconds": 5,
  "HealthyThresholdCount": 2,
  "UnhealthyThresholdCount": 3,
  "Matcher": {
    "HttpCode": "200"
  }
}

30 秒ごとにヘルスチェックを行い、2 回連続で成功したら正常、3 回連続で失敗したら異常と判定する設定です。

具体例

ケーススタディ 1:高トラフィック EC サイトの最適化

環境情報

#項目
1サーバースペック4 CPU コア、16GB RAM
2平均リクエスト数1000 req/sec
3ピークリクエスト数3000 req/sec
4PHP バージョンPHP 8.2

最適化前の問題

javascriptError: PHP-FPM: [pool www] server reached pm.max_children setting (10), consider raising it
Error: OPcache memory exhausted
Error 504: Gateway Timeout

プロセス不足と OPcache メモリ不足により、ピーク時にタイムアウトが頻発していました。

実装した設定

OPcache の設定を強化します。

ini; /etc/php.d/10-opcache.ini

opcache.enable=1
opcache.memory_consumption=256
opcache.interned_strings_buffer=16
opcache.max_accelerated_files=20000
opcache.revalidate_freq=0
opcache.validate_timestamps=0
opcache.file_cache=/var/tmp/opcache
opcache.jit=1255
opcache.jit_buffer_size=200M

大規模な EC サイトのため、メモリを多めに確保し、JIT も有効化しました。

PHP-FPM は static 方式を採用します。

ini; /etc/php-fpm.d/www.conf

pm = static
pm.max_children = 40
pm.max_requests = 500

; スロープロセス検出
request_slowlog_timeout = 5s
slowlog = /var/log/php-fpm/slow.log

; プロセス管理
pm.status_path = /fpm-status
ping.path = /fpm-ping
ping.response = pong

1 プロセスあたり約 80MB 使用するため、40 プロセスで約 3.2GB です。残りのメモリは OS とデータベースキャッシュに使用します。

結果

#指標最適化前最適化後改善率
1平均レスポンスタイム450ms85ms81% 改善
2ピーク時エラー率8.5%0.1%98% 改善
3CPU 使用率85%45%47% 削減
4メモリ使用率78%82%適正範囲

レスポンスタイムが大幅に改善され、エラー率もほぼゼロになりました。

ケーススタディ 2:中規模 SaaS の動的プロセス管理

環境情報

時間帯によってトラフィックが大きく変動する SaaS アプリケーションです。

#項目
1サーバースペック2 CPU コア、8GB RAM
2営業時間リクエスト200 req/sec
3深夜リクエスト20 req/sec
4PHP バージョンPHP 8.1

実装した設定

dynamic 方式でメモリを効率的に使用します。

ini; /etc/php-fpm.d/www.conf

pm = dynamic
pm.max_children = 30
pm.start_servers = 5
pm.min_spare_servers = 3
pm.max_spare_servers = 10
pm.max_requests = 1000

; プロセス管理タイムアウト
pm.process_idle_timeout = 30s

深夜は最小 3 プロセス、営業時間は最大 30 プロセスまで自動調整されます。

ヘルスチェックを 3 層で実装します。

php<?php
// public/health.php - 詳細版

$health = [
    'status' => 'healthy',
    'timestamp' => date('c'),
    'checks' => [],
    'metrics' => []
];

$httpStatus = 200;

// データベース接続とレイテンシ測定
$start = microtime(true);
try {
    $pdo = new PDO(/* 接続情報 */);
    $pdo->query('SELECT 1');
    $latency = round((microtime(true) - $start) * 1000, 2);

    $health['checks']['database'] = 'ok';
    $health['metrics']['db_latency_ms'] = $latency;

    // レイテンシが 100ms 超えたら警告
    if ($latency > 100) {
        $health['status'] = 'degraded';
    }
} catch (PDOException $e) {
    $health['checks']['database'] = 'error';
    $health['status'] = 'unhealthy';
    $httpStatus = 503;
}

レイテンシも測定することで、パフォーマンス劣化を早期に検知できますね。

php// ディスク容量チェック
$diskFree = disk_free_space('/');
$diskTotal = disk_total_space('/');
$diskUsagePercent = (1 - $diskFree / $diskTotal) * 100;

$health['metrics']['disk_usage_percent'] = round($diskUsagePercent, 2);

if ($diskUsagePercent > 90) {
    $health['checks']['disk'] = 'critical';
    $health['status'] = 'unhealthy';
    $httpStatus = 503;
} elseif ($diskUsagePercent > 80) {
    $health['checks']['disk'] = 'warning';
    $health['status'] = 'degraded';
} else {
    $health['checks']['disk'] = 'ok';
}

header('Content-Type: application/json');
http_response_code($httpStatus);
echo json_encode($health, JSON_PRETTY_PRINT);

ディスク容量も監視し、80% で警告、90% で異常として報告します。

結果

#効果説明
1メモリ効率 35% 改善深夜の無駄なプロセスを削減
2障害検知時間 90% 短縮ヘルスチェックで即座に検知
3ダウンタイム削減自動的に異常サーバーを切り離し

ケーススタディ 3:OPcache メモリ不足のトラブルシューティング

発生した問題

本番環境で以下のエラーが発生しました。

vbnetError: OPcache: Unable to allocate memory for interned strings (interned_strings_buffer)
Warning: opcache_compile_file(): Opcode cache is full, can't cache more files

エラーコード: なし(PHP Warning)

原因調査

OPcache の状態を確認するスクリプトを実装します。

php<?php
// opcache-status.php

$status = opcache_get_status(true);

echo "=== OPcache メモリ使用状況 ===\n";
echo "使用中: " . round($status['memory_usage']['used_memory'] / 1024 / 1024, 2) . " MB\n";
echo "空き: " . round($status['memory_usage']['free_memory'] / 1024 / 1024, 2) . " MB\n";
echo "無駄: " . round($status['memory_usage']['wasted_memory'] / 1024 / 1024, 2) . " MB\n";
echo "使用率: " . round($status['memory_usage']['current_wasted_percentage'], 2) . "%\n\n";

echo "=== キャッシュ統計 ===\n";
echo "キャッシュファイル数: " . $status['opcache_statistics']['num_cached_scripts'] . "\n";
echo "ヒット数: " . $status['opcache_statistics']['hits'] . "\n";
echo "ミス数: " . $status['opcache_statistics']['misses'] . "\n";
echo "ヒット率: " . round($status['opcache_statistics']['opcache_hit_rate'], 2) . "%\n";

実行結果を確認したところ、メモリ不足が判明しました。

makefile=== OPcache メモリ使用状況 ===
使用中: 126.45 MB
空き: 0.12 MB
無駄: 1.43 MB
使用率: 1.12%

=== キャッシュ統計 ===
キャッシュファイル数: 8543
ヒット数: 1523421
ミス数: 234
ヒット率: 99.98%

解決方法

設定を以下のように変更しました。

ini; 変更前
opcache.memory_consumption=128
opcache.interned_strings_buffer=8
opcache.max_accelerated_files=10000

; 変更後
opcache.memory_consumption=256
opcache.interned_strings_buffer=16
opcache.max_accelerated_files=16229

max_accelerated_files は素数が推奨されるため、8543 より大きい素数である 16229 に設定しました。

bash# PHP-FPM を再起動してキャッシュをクリア
sudo systemctl restart php-fpm

# または、graceful リロード
sudo systemctl reload php-fpm

結果

変更後、メモリ不足エラーは解消され、安定稼働するようになりました。

makefile=== OPcache メモリ使用状況 ===
使用中: 145.23 MB
空き: 108.34 MB
無駄: 2.43 MB
使用率: 0.95%

まとめ

PHP アプリケーションの本番運用では、OPcache、PHP-FPM、ヘルスチェックの 3 つの要素が重要です。

OPcache の設定では:

  • メモリサイズはアプリケーション規模に応じて調整しましょう
  • 本番環境では validate_timestamps=0 で最高のパフォーマンスを実現できます
  • PHP 8.0 以降では JIT を有効化することでさらなる高速化が可能です

PHP-FPM のプロセス管理では:

  • 高トラフィック環境では static 方式が安定します
  • トラフィック変動が大きい環境では dynamic 方式がメモリ効率に優れていますね
  • pm.max_children はメモリ容量を考慮して設定する必要があります

ヘルスチェックの実装では:

  • TCP チェック、FPM Ping、アプリケーションチェックの多層構成が効果的です
  • データベースやキャッシュサーバーなど、依存サービスの状態も監視しましょう
  • レイテンシやディスク容量などのメトリクスも含めることで、障害の予兆を検知できます

これらの設定を適切に行うことで、レスポンス速度の大幅な改善、エラー率の低減、障害検知時間の短縮が実現できるでしょう。本番環境の特性に応じて、設定値を調整しながら最適化を進めてください。

関連リンク