T-CREATOR

Remix プロジェクトの初期化&セットアップ完全ガイド

Remix プロジェクトの初期化&セットアップ完全ガイド

Web 開発の世界で、新しいプロジェクトを始める瞬間ほどワクワクするものはありません。特に Remix フレームワークを選択したあなたは、きっと素晴らしい判断をされたのではないでしょうか。

Remix は、モダンな Web 開発における多くの課題を解決してくれる画期的なフレームワークです。しかし、どんなに優秀なツールでも、最初のセットアップでつまずいてしまうと、その後の開発体験に大きく影響してしまいますね。

本記事では、Remix プロジェクトの初期化から本格的な開発開始まで、一つひとつのステップを丁寧に解説いたします。初心者の方でも迷うことなく、確実にセットアップを完了できるよう、実際のエラー例や対処法も含めて詳しくご紹介します。

背景

Remix とは何か

Remix は、フルスタック Web アプリケーションを構築するための React ベースのフレームワークです。2021 年にオープンソース化されて以来、Web 開発コミュニティで急速に注目を集めています。

最も特徴的なのは「Web 標準に忠実」という設計思想でしょう。HTTP の基本的な仕組みを活用し、サーバーサイドレンダリング(SSR)とクライアントサイドの機能を seamlessly に統合しています。

なぜ Remix が注目されているのか

現代の Web 開発では、ユーザー体験の向上が最重要課題となっています。Remix が注目される理由は以下の通りです。

パフォーマンスの向上 従来の SPA(Single Page Application)では、初回読み込み時に大きな JavaScript バンドルをダウンロードする必要がありました。Remix は必要な部分だけを読み込む progressive enhancement により、ページの表示速度を大幅に改善します。

開発者体験の向上 Remix では、サーバーサイドとクライアントサイドのコードを同じファイルに書けます。これにより、データの流れが把握しやすく、開発効率が飛躍的に向上するのです。

SEO 対応の容易さ サーバーサイドレンダリングが標準で組み込まれているため、検索エンジン最適化が自然に実現されます。

従来のフレームワークとの違い

Next.js や Nuxt.js といった既存のフレームワークと比較して、Remix には独特な特徴があります。

特徴RemixNext.jsNuxt.js
ルーティングファイルベース(ネストルート)ファイルベースファイルベース
データ取得loader 関数getServerSideProps 等asyncData 等
フォーム処理action 関数API Routesサーバーミドルウェア
エラーハンドリング境界ごとのエラー処理エラーページエラーページ

この表を見ていただくと分かるように、Remix は特にデータ取得とフォーム処理において、より直感的なアプローチを採用しています。

課題

初期化時によくある問題点

Remix プロジェクトの初期化では、以下のような問題が頻繁に発生します。

Node.js バージョンの不整合 Remix は比較的新しいフレームワークのため、古い Node.js バージョンでは正常に動作しません。特に Node.js 14 以下では、以下のようなエラーが発生します。

arduinoError: You are running Node 14.17.0.
Remix requires Node 16 or later.

パッケージマネージャーの競合 npm と yarn が混在している環境では、依存関係の解決でトラブルが発生することがあります。

kotlinnpm ERR! peer dep missing: react@>=16.8.0, required by @remix-run/react@1.19.3

セットアップで躓きやすいポイント

初心者の方が特に苦労されるのが、以下のポイントです。

TypeScript の設定 Remix は標準で TypeScript をサポートしていますが、設定が不適切だと以下のエラーが出現します。

luaTypeScript error in app/root.tsx(1,1):
Cannot find module '@remix-run/node' or its corresponding type declarations.
  TS2749

環境変数の管理 開発環境と本番環境での環境変数の使い分けは、多くの開発者が迷うポイントでもあります。

環境構築の複雑さ

モダンな Web 開発では、多くのツールを組み合わせる必要があります。Remix プロジェクトでも例外ではなく、以下のような要素を適切に設定する必要があります。

  • ESLint と Prettier の設定
  • Tailwind CSS などのスタイリングツール
  • データベース接続の設定
  • デプロイメント環境の準備

これらすべてを一度に設定しようとすると、どこでエラーが発生しているのか分からなくなってしまいます。

解決策

推奨する初期化手順

成功率を高めるために、以下の順序でセットアップを進めることをお勧めします。

ステップ 1: 環境確認 まずは、開発環境が Remix の要件を満たしているか確認しましょう。

Node.js のバージョン確認を行います。この確認は、後続の作業で予期しないエラーを避けるために非常に重要です。

bashnode --version
# v18.17.0 以上であることを確認

Yarn のインストール状況も確認します。

bashyarn --version
# 1.22.0 以上が推奨

ステップ 2: プロジェクト作成 環境確認が完了したら、いよいよプロジェクトを作成します。

bashyarn create remix@latest my-remix-app

このコマンドを実行すると、対話式でプロジェクトの設定を行えます。初心者の方には「Just the basics」テンプレートをお勧めします。

必要なツールとその選び方

Remix プロジェクトで使用するツールの選択は、プロジェクトの成功に大きく影響します。

パッケージマネージャー 本記事では Yarn を推奨しています。理由は以下の通りです。

  • 依存関係の解決が高速
  • lockfile の管理が優秀
  • workspace 機能でモノレポ対応

コードエディタ Visual Studio Code を強く推奨いたします。Remix 専用の拡張機能が充実しており、開発効率が大幅に向上します。

必須拡張機能

  • ES7+ React/Redux/React-Native snippets
  • Prettier - Code formatter
  • ESLint
  • TypeScript Importer

効率的なセットアップ方法

時間を節約し、エラーを最小限に抑えるためのセットアップ戦略をご紹介します。

段階的アプローチ すべてを一度に設定するのではなく、以下の順序で進めましょう。

  1. 基本プロジェクトの作成
  2. 動作確認
  3. 追加パッケージの導入
  4. カスタマイズ

このアプローチにより、問題が発生した際の原因特定が容易になります。

具体例

新規プロジェクトの作成手順

実際の作業を通して、Remix プロジェクトの作成過程を詳しく見ていきましょう。

作業用ディレクトリに移動し、プロジェクト作成コマンドを実行します。

bash# 作業ディレクトリの作成と移動
mkdir ~/remix-projects
cd ~/remix-projects

# Remix プロジェクトの作成
yarn create remix@latest my-first-remix-app

コマンドを実行すると、対話式の質問が表示されます。初回の方は以下の選択をお勧めします。

python? What type of app do you want to create? Just the basics
? Where do you want to deploy? Choose Remix App Server if you're unsure; it's easy to change deployment targets.
 Remix App Server
? TypeScript or JavaScript? TypeScript
? Do you want me to run `yarn install`? Yes

プロジェクト作成が完了すると、以下のような成功メッセージが表示されます。

rust💿 That's it! `cd` into "my-first-remix-app" and check the README for development and deployment instructions!

基本的な設定ファイルの解説

生成されたプロジェクトには、多くの設定ファイルが含まれています。主要なファイルを確認してみましょう。

package.json の確認 プロジェクトの依存関係とスクリプトが定義されています。

json{
  "name": "my-first-remix-app",
  "private": true,
  "sideEffects": false,
  "type": "module",
  "scripts": {
    "build": "remix build",
    "dev": "remix dev --manual",
    "start": "remix-serve ./build/index.js",
    "typecheck": "tsc"
  }
}

注目すべきは "type": "module" の設定です。これにより、ES Modules が標準で使用されます。

remix.config.js の確認 Remix 固有の設定が記述されています。

javascript/** @type {import('@remix-run/dev').AppConfig} */
export default {
  ignoredRouteFiles: ['**/.*'],
  // appDirectory: "app",
  // assetsBuildDirectory: "public/build",
  // publicPath: "/build/",
  // serverBuildPath: "build/index.js",
};

初期状態では最小限の設定のみが有効になっています。必要に応じてコメントアウトされた設定を有効化できます。

tsconfig.json の確認 TypeScript の設定が含まれています。

json{
  "include": ["remix.env.d.ts", "**/*.ts", "**/*.tsx"],
  "compilerOptions": {
    "lib": ["DOM", "DOM.Iterable", "ES6"],
    "isolatedModules": true,
    "esModuleInterop": true,
    "jsx": "react-jsx",
    "resolveJsonModule": true,
    "target": "ES2022",
    "strict": true,
    "allowJs": true,
    "skipLibCheck": true,
    "forceConsistentCasingInFileNames": true,
    "baseUrl": ".",
    "noEmit": true,
    "paths": {
      "~/*": ["./app/*"]
    }
  }
}

"paths" の設定により、~​/​ で app ディレクトリを参照できます。これは import 文を簡潔に記述するのに非常に便利です。

開発環境の構築

プロジェクトが作成できたら、開発環境を起動してみましょう。

プロジェクトディレクトリに移動します。

bashcd my-first-remix-app

開発サーバーを起動します。このコマンドでホットリロード機能付きの開発環境が起動します。

bashyarn dev

正常に起動すると、以下のような表示が現れます。

arduino💿 Building...
💿 Built in 1.2s
Remix App Server started at http://localhost:3000 (http://192.168.1.100:3000)

ブラウザで http:​/​​/​localhost:3000 にアクセスして、Welcome ページが表示されることを確認しましょう。

よくあるエラーと対処法

開発サーバー起動時に以下のエラーが発生することがあります。

javascriptError: EADDRINUSE: address already in use :::3000
    at Server.setupListenHandle [as _listen2] (net.js:1318:16)

このエラーは、ポート 3000 が既に使用されている場合に発生します。以下のコマンドで別のポートを指定できます。

bashyarn dev --port 3001

初回起動とテスト

開発環境が正常に起動したら、基本的な動作確認を行いましょう。

ルーティングの確認 Remix では、app​/​routes ディレクトリ内のファイルが自動的にルートになります。

新しいページを作成して、ルーティング機能を確認してみましょう。

typescript// app/routes/about.tsx
import type { MetaFunction } from '@remix-run/node';

export const meta: MetaFunction = () => {
  return [
    { title: 'About - My Remix App' },
    {
      name: 'description',
      content: 'About page for my Remix application',
    },
  ];
};

export default function About() {
  return (
    <div
      style={{
        fontFamily: 'system-ui, sans-serif',
        lineHeight: '1.8',
      }}
    >
      <h1>About Page</h1>
      <p>This is a simple about page created with Remix!</p>
    </div>
  );
}

ファイルを保存後、http:​/​​/​localhost:3000​/​about にアクセスして、新しいページが表示されることを確認します。

データローダーの動作確認 Remix の特徴的な機能である loader 関数の動作も確認してみましょう。

typescript// app/routes/users.tsx
import type { LoaderFunctionArgs } from '@remix-run/node';
import { json } from '@remix-run/node';
import { useLoaderData } from '@remix-run/react';

export const loader = async ({
  request,
}: LoaderFunctionArgs) => {
  // 実際のプロジェクトではAPIやデータベースからデータを取得
  const users = [
    {
      id: 1,
      name: '田中太郎',
      email: 'tanaka@example.com',
    },
    { id: 2, name: '佐藤花子', email: 'sato@example.com' },
    {
      id: 3,
      name: '鈴木次郎',
      email: 'suzuki@example.com',
    },
  ];

  return json({ users });
};

コンポーネント部分では、loader から取得したデータを表示します。

typescriptexport default function Users() {
  const { users } = useLoaderData<typeof loader>();

  return (
    <div
      style={{
        fontFamily: 'system-ui, sans-serif',
        lineHeight: '1.8',
      }}
    >
      <h1>ユーザー一覧</h1>
      <ul>
        {users.map((user) => (
          <li key={user.id}>
            <strong>{user.name}</strong> - {user.email}
          </li>
        ))}
      </ul>
    </div>
  );
}

http:​/​​/​localhost:3000​/​users にアクセスして、ユーザー一覧が表示されることを確認しましょう。

フォーム処理の確認 action 関数を使用したフォーム処理も確認してみます。

typescript// app/routes/contact.tsx
import type { ActionFunctionArgs } from '@remix-run/node';
import { json, redirect } from '@remix-run/node';
import { Form, useActionData } from '@remix-run/react';

export const action = async ({
  request,
}: ActionFunctionArgs) => {
  const formData = await request.formData();
  const name = formData.get('name');
  const email = formData.get('email');
  const message = formData.get('message');

  // バリデーション
  const errors: { [key: string]: string } = {};

  if (!name || typeof name !== 'string') {
    errors.name = 'お名前は必須です';
  }

  if (!email || typeof email !== 'string') {
    errors.email = 'メールアドレスは必須です';
  }

  if (Object.keys(errors).length > 0) {
    return json({ errors }, { status: 400 });
  }

  // 実際のプロジェクトではデータベースに保存
  console.log('フォーム送信:', { name, email, message });

  return redirect('/contact?success=true');
};

フォームコンポーネントを作成します。

typescriptexport default function Contact() {
  const actionData = useActionData<typeof action>();

  return (
    <div
      style={{
        fontFamily: 'system-ui, sans-serif',
        lineHeight: '1.8',
      }}
    >
      <h1>お問い合わせ</h1>
      <Form method='post' style={{ maxWidth: '400px' }}>
        <div style={{ marginBottom: '1rem' }}>
          <label htmlFor='name'>お名前:</label>
          <input
            type='text'
            id='name'
            name='name'
            style={{ width: '100%', padding: '0.5rem' }}
          />
          {actionData?.errors?.name && (
            <p style={{ color: 'red', fontSize: '0.9rem' }}>
              {actionData.errors.name}
            </p>
          )}
        </div>

        <div style={{ marginBottom: '1rem' }}>
          <label htmlFor='email'>メールアドレス:</label>
          <input
            type='email'
            id='email'
            name='email'
            style={{ width: '100%', padding: '0.5rem' }}
          />
          {actionData?.errors?.email && (
            <p style={{ color: 'red', fontSize: '0.9rem' }}>
              {actionData.errors.email}
            </p>
          )}
        </div>

        <div style={{ marginBottom: '1rem' }}>
          <label htmlFor='message'>メッセージ:</label>
          <textarea
            id='message'
            name='message'
            rows={4}
            style={{ width: '100%', padding: '0.5rem' }}
          />
        </div>

        <button
          type='submit'
          style={{ padding: '0.75rem 1.5rem' }}
        >
          送信
        </button>
      </Form>
    </div>
  );
}

フォームの動作確認を行い、バリデーションエラーや成功時のリダイレクトが正常に機能することを確認しましょう。

まとめ

Remix プロジェクトのセットアップは、適切な手順を踏めば決して難しいものではありません。重要なのは、焦らず一歩ずつ進めることです。

セットアップ完了後の次のステップ

基本的なセットアップが完了したら、以下のような拡張を検討してみてください。

スタイリングの追加 Tailwind CSS や Styled Components など、お好みのスタイリングソリューションを導入しましょう。

bash# Tailwind CSS の場合
yarn add -D tailwindcss postcss autoprefixer
yarn tailwindcss init -p

データベース接続 実際のアプリケーションでは、データベースとの連携が必要になります。Prisma や Drizzle といった ORM の導入を検討してみてください。

認証機能 Remix Auth を使用することで、様々な認証プロバイダーとの連携が可能になります。

よくある質問への回答

Q: Next.js から Remix に移行する際の注意点は? A: 最も大きな違いは、データフェッチングの方法です。getServerSideProps の代わりに loader 関数を使用し、API Routes の代わりに action 関数を使用します。段階的に移行することをお勧めします。

Q: デプロイはどのように行えばよいですか? A: Remix は様々なプラットフォームにデプロイできます。初心者の方には Netlify や Vercel がお勧めです。設定ファイル一つで簡単にデプロイできます。

Q: パフォーマンスの最適化で最初に取り組むべきことは? A: 画像の最適化とコード分割に注目してください。Remix の built-in な機能を活用することで、多くのパフォーマンス問題を解決できます。

この記事を通して、あなたの Remix 開発の旅が素晴らしいものになることを心より願っています。セットアップでつまずいても、それは学習の一部です。エラーメッセージを恐れず、一つひとつ解決していけば、必ず理解が深まります。

Remix の世界へようこそ。あなたのアイデアを形にする、素晴らしい開発体験が待っています!

関連リンク