生成 AI の新常識:GPT-5 の「ツール使用(関数呼び出し)」が変える開発フロー
OpenAI の GPT-5 がもたらす革新的な機能の一つに「ツール使用(Tool Use)」または「関数呼び出し(Function Calling)」があります。この機能により、従来のテキスト生成だけでなく、外部システムとの連携や複雑なワークフローの自動化が可能になりました。本記事では、GPT-5 のツール使用機能がどのように開発フローを変革するのか、その仕組みと実践的な活用方法を初心者にもわかりやすく解説いたします。
背景
生成 AI の進化は目覚ましく、特にチャット形式での対話から、より実用的なタスク実行へとシフトしています。GPT-4 までは主にテキスト生成や要約、翻訳といった用途が中心でしたが、GPT-5 ではツール使用機能が大幅に強化され、AI が外部のデータベース、API、各種サービスと連携できるようになりました。
これにより、AI は単なる「会話相手」から「実行可能なアシスタント」へと進化し、開発者は AI を活用して複雑な業務フローを自動化できるようになったのです。
以下の図は、従来の AI と GPT-5 のツール使用機能を持つ AI の違いを示しています。
mermaidflowchart TB
subgraph traditional["従来の AI"]
input1["ユーザー入力"] --> ai1["AI モデル"]
ai1 --> output1["テキスト応答"]
end
subgraph modern["GPT-5(ツール使用)"]
input2["ユーザー入力"] --> ai2["GPT-5 モデル"]
ai2 --> decision["ツール呼び出し判定"]
decision -->|必要| tool["外部ツール/API"]
tool --> result["実行結果"]
result --> ai2
decision -->|不要| output2["テキスト応答"]
end
従来の AI はテキスト生成に特化していましたが、GPT-5 は状況に応じて外部ツールを呼び出し、実データを取得・処理できます。これにより、リアルタイムな情報取得や複雑な操作が可能になりました。
ツール使用機能とは
ツール使用機能とは、AI モデルが自らの判断で外部の関数や API を呼び出す仕組みです。ユーザーからの質問や指示に対して、AI が「どのツールを使えば解決できるか」を判断し、適切なパラメータとともに関数を実行します。
この機能により、以下のようなことが実現可能になります。
| # | 機能 | 説明 |
|---|---|---|
| 1 | データベース連携 | リアルタイムで顧客情報や在庫データを取得 |
| 2 | API 実行 | 天気情報、株価、ニュースなどの外部 API を呼び出し |
| 3 | 計算処理 | 複雑な数値計算やデータ分析を外部ライブラリで実行 |
| 4 | ファイル操作 | ドキュメント生成、画像処理、PDF 作成など |
| 5 | ワークフロー自動化 | 複数のツールを組み合わせた業務プロセスの自動化 |
課題
従来の AI チャットボットや自動化ツールには、いくつかの大きな課題がありました。
静的な応答しかできない
GPT-4 以前のモデルでは、学習データに基づいた応答しか生成できませんでした。そのため、リアルタイムの情報(株価、天気、在庫など)を取得することができず、ユーザーは別途 API を呼び出す必要がありました。
複雑なロジックの実装が困難
AI に複雑な業務フローを実行させるには、開発者が詳細な分岐処理や条件判定をコードで記述する必要がありました。これには高度なプログラミングスキルと時間が必要で、小規模なプロジェクトでは導入コストが高すぎる問題がありました。
API 連携の手間
外部サービスとの連携には、認証処理、エラーハンドリング、データ変換など多くの実装が必要です。開発者は AI の応答を解析し、それをもとに API を呼び出すコードを書く必要があり、開発工数が大幅に増加していました。
以下の図は、従来の開発フローにおける課題を示しています。
mermaidflowchart LR
user["ユーザー"] -->|質問| app["アプリ"]
app -->|リクエスト| ai["AI モデル"]
ai -->|テキスト応答| app
app -->|応答解析| dev["開発者が実装した<br/>分岐処理"]
dev -->|API 呼び出し| api1["天気 API"]
dev -->|API 呼び出し| api2["DB クエリ"]
dev -->|API 呼び出し| api3["決済 API"]
api1 --> result["結果統合"]
api2 --> result
api3 --> result
result --> user
開発者は AI の応答を受け取った後、自分でロジックを組み立てて各種 API を呼び出す必要があり、開発負荷が高くなっていました。
解決策
GPT-5 のツール使用機能は、これらの課題を根本的に解決します。AI 自身が状況を判断し、適切なツールを選択して実行できるため、開発者はツールの定義と実装だけを行えばよくなりました。
関数呼び出しの仕組み
GPT-5 では、開発者が利用可能な関数(ツール)のリストを事前に定義します。ユーザーからのリクエストを受け取った GPT-5 は、以下のステップで処理を進めます。
mermaidsequenceDiagram
participant User as ユーザー
participant App as アプリケーション
participant GPT as GPT-5
participant Tool as 外部ツール/API
User->>App: 質問・依頼
App->>GPT: リクエスト送信<br/>(ツール定義含む)
GPT->>GPT: 必要なツールを判定
GPT->>App: 関数呼び出し指示<br/>(関数名 + パラメータ)
App->>Tool: ツール実行
Tool->>App: 実行結果
App->>GPT: 結果を送信
GPT->>GPT: 結果を統合・解析
GPT->>App: 最終応答生成
App->>User: 回答表示
このフローにより、開発者は複雑な条件分岐を書く必要がなくなり、GPT-5 が自律的に判断してツールを実行してくれます。
ツール定義の方法
ツール使用機能を活用するには、まず利用可能な関数を JSON スキーマで定義します。これにより GPT-5 は「どんなツールがあるか」「どんなパラメータが必要か」を理解できます。
以下は、天気情報を取得する関数の定義例です。
typescript// ツール定義の型定義
interface FunctionDefinition {
name: string;
description: string;
parameters: {
type: string;
properties: Record<string, any>;
required: string[];
};
}
型を定義することで、TypeScript の恩恵を受けながら安全にツール定義を管理できます。
次に、具体的なツール定義を作成します。
typescript// 天気情報取得ツールの定義
const getWeatherTool: FunctionDefinition = {
name: 'get_weather',
description: '指定された都市の現在の天気情報を取得します',
parameters: {
type: 'object',
properties: {
city: {
type: 'string',
description: '都市名(例: 東京、大阪)',
},
unit: {
type: 'string',
enum: ['celsius', 'fahrenheit'],
description: '温度の単位',
},
},
required: ['city'],
},
};
この定義により、GPT-5 は「get_weather という関数は都市名を受け取って天気情報を返す」と理解し、適切なタイミングで呼び出せるようになります。
OpenAI API での実装
実際に OpenAI API を使ってツール使用機能を実装する方法を見ていきましょう。
まず必要なパッケージをインストールします。
bashyarn add openai
次に、OpenAI クライアントを初期化します。
typescript// OpenAI クライアントの初期化
import OpenAI from 'openai';
const client = new OpenAI({
apiKey: process.env.OPENAI_API_KEY,
});
環境変数から API キーを読み込むことで、セキュリティを確保します。
続いて、ツールを実行する関数を実装します。
typescript// 天気情報を取得する実装
async function getWeather(
city: string,
unit: string = 'celsius'
): Promise<string> {
// 実際には外部 API を呼び出す
// ここではダミーデータを返す
const weatherData = {
city,
temperature: unit === 'celsius' ? '22°C' : '72°F',
condition: '晴れ',
humidity: '65%',
};
return JSON.stringify(weatherData);
}
この関数は GPT-5 からの呼び出しに応じて、実際の天気情報を取得します。
次に、GPT-5 にリクエストを送信する処理を実装します。
typescript// GPT-5 にリクエストを送信
async function chatWithTools(userMessage: string) {
const messages = [{ role: 'user', content: userMessage }];
// ツール定義を含めてリクエスト
const response = await client.chat.completions.create({
model: 'gpt-5-turbo',
messages: messages,
tools: [
{
type: 'function',
function: getWeatherTool,
},
],
tool_choice: 'auto', // GPT-5 が自動判断
});
return response;
}
tool_choice を auto に設定することで、GPT-5 が必要に応じてツールを呼び出すかどうかを判断します。
GPT-5 がツール呼び出しを指示した場合の処理を実装します。
typescript// ツール呼び出しの処理
async function handleToolCalls(
response: any,
messages: any[]
) {
const assistantMessage = response.choices[0].message;
// ツール呼び出しがある場合
if (assistantMessage.tool_calls) {
// アシスタントのメッセージを履歴に追加
messages.push(assistantMessage);
// 各ツール呼び出しを実行
for (const toolCall of assistantMessage.tool_calls) {
const functionName = toolCall.function.name;
const functionArgs = JSON.parse(
toolCall.function.arguments
);
// 関数を実行
let functionResponse: string;
if (functionName === 'get_weather') {
functionResponse = await getWeather(
functionArgs.city,
functionArgs.unit
);
} else {
functionResponse = JSON.stringify({
error: 'Unknown function',
});
}
// ツール実行結果を履歴に追加
messages.push({
role: 'tool',
tool_call_id: toolCall.id,
content: functionResponse,
});
}
return true; // ツール呼び出しがあったことを示す
}
return false; // ツール呼び出しなし
}
この処理により、GPT-5 からのツール呼び出し指示を受け取り、実際に関数を実行し、結果を GPT-5 に返すことができます。
最後に、全体のフローを統合します。
typescript// メイン処理:ユーザーとの対話
async function main() {
const userMessage = '東京の天気を教えてください';
const messages = [{ role: 'user', content: userMessage }];
// 初回リクエスト
let response = await chatWithTools(userMessage);
// ツール呼び出しがある限り繰り返す
while (await handleToolCalls(response, messages)) {
// ツール実行結果を含めて再度リクエスト
response = await client.chat.completions.create({
model: 'gpt-5-turbo',
messages: messages,
});
}
// 最終的な応答を取得
const finalAnswer = response.choices[0].message.content;
console.log(finalAnswer);
}
このメイン処理により、ユーザーの質問に対して GPT-5 がツールを使いながら適切な回答を生成します。
具体例
ここでは、実際の業務シーンでツール使用機能がどのように活躍するか、具体的な例を見ていきましょう。
例 1:カスタマーサポートの自動化
顧客からの問い合わせに対して、注文状況を確認し、配送予定日を案内するシステムを構築します。
まず、注文情報を取得するツールを定義します。
typescript// 注文情報取得ツールの定義
const getOrderTool: FunctionDefinition = {
name: 'get_order_status',
description:
'注文番号から注文の状態と配送予定日を取得します',
parameters: {
type: 'object',
properties: {
orderId: {
type: 'string',
description: '注文番号(例: ORD-12345)',
},
},
required: ['orderId'],
},
};
次に、実際に注文情報を取得する関数を実装します。
typescript// 注文情報を取得する実装
async function getOrderStatus(
orderId: string
): Promise<string> {
// データベースから注文情報を取得
// ここではダミーデータを返す
const orderData = {
orderId,
status: '配送中',
estimatedDelivery: '2025-10-28',
trackingNumber: 'TRK-9876543210',
};
return JSON.stringify(orderData);
}
この関数は実際のデータベースから注文情報を取得し、JSON 形式で返します。
顧客からの問い合わせを処理する統合システムを作成します。
typescript// カスタマーサポートチャット
async function customerSupportChat(
customerMessage: string
) {
const messages = [
{
role: 'system',
content:
'あなたは親切なカスタマーサポート担当者です。注文状況を確認し、丁寧に案内してください。',
},
{
role: 'user',
content: customerMessage,
},
];
const response = await client.chat.completions.create({
model: 'gpt-5-turbo',
messages: messages,
tools: [{ type: 'function', function: getOrderTool }],
tool_choice: 'auto',
});
// ツール呼び出し処理
await handleToolCalls(response, messages);
return response.choices[0].message.content;
}
システムプロンプトにより、GPT-5 は常に丁寧な対応を心がけるようになります。
実際の使用例を見てみましょう。
typescript// 使用例
const inquiry =
'注文番号 ORD-12345 の配送状況を教えてください';
const answer = await customerSupportChat(inquiry);
// GPT-5 の応答例:
// 「ご注文ありがとうございます。注文番号 ORD-12345 の配送状況を確認いたしました。
// 現在、商品は配送中でございます。お届け予定日は 2025年10月28日 となっております。
// 追跡番号は TRK-9876543210 です。配送状況の詳細は配送会社のウェブサイトでご確認いただけます。」
GPT-5 は自動的に get_order_status 関数を呼び出し、取得した情報をもとに自然な文章で顧客に案内します。
例 2:データ分析アシスタント
売上データを分析し、グラフ化するアシスタントを構築します。
データベースクエリツールを定義します。
typescript// データベースクエリツールの定義
const querySalesTool: FunctionDefinition = {
name: 'query_sales_data',
description: '期間を指定して売上データを取得します',
parameters: {
type: 'object',
properties: {
startDate: {
type: 'string',
description: '開始日(YYYY-MM-DD形式)',
},
endDate: {
type: 'string',
description: '終了日(YYYY-MM-DD形式)',
},
groupBy: {
type: 'string',
enum: ['day', 'week', 'month'],
description: '集計単位',
},
},
required: ['startDate', 'endDate'],
},
};
この定義により、GPT-5 は期間と集計単位を理解して適切にデータを取得できます。
データ取得の実装を行います。
typescript// 売上データを取得する実装
async function querySalesData(
startDate: string,
endDate: string,
groupBy: string = 'day'
): Promise<string> {
// 実際にはデータベースにクエリを投げる
const salesData = [
{ date: '2025-10-01', revenue: 150000 },
{ date: '2025-10-02', revenue: 180000 },
{ date: '2025-10-03', revenue: 165000 },
];
return JSON.stringify(salesData);
}
データベースから実際の売上データを取得し、JSON 配列として返します。
グラフ生成ツールも定義します。
typescript// グラフ生成ツールの定義
const createChartTool: FunctionDefinition = {
name: 'create_chart',
description: 'データからグラフ画像を生成します',
parameters: {
type: 'object',
properties: {
data: {
type: 'string',
description: 'JSON形式のデータ',
},
chartType: {
type: 'string',
enum: ['line', 'bar', 'pie'],
description: 'グラフの種類',
},
},
required: ['data', 'chartType'],
},
};
グラフ生成関数を実装します。
typescript// グラフを生成する実装
async function createChart(
data: string,
chartType: string
): Promise<string> {
// 実際にはグラフライブラリを使用して画像を生成
// ここでは生成されたファイルパスを返す
const chartPath = `/charts/sales_${Date.now()}.png`;
return JSON.stringify({
success: true,
chartPath,
});
}
この関数は、受け取ったデータをもとにグラフ画像を生成し、ファイルパスを返します。
以下の図は、データ分析アシスタントの処理フローを示しています。
mermaidflowchart TD
start["ユーザーからの<br/>分析依頼"] --> gpt["GPT-5"]
gpt --> query_tool["query_sales_data<br/>実行"]
query_tool --> db[("データベース")]
db --> data["売上データ取得"]
data --> gpt
gpt --> chart_tool["create_chart<br/>実行"]
chart_tool --> chart["グラフ画像生成"]
chart --> gpt
gpt --> answer["分析結果 +<br/>グラフ表示"]
GPT-5 は複数のツールを連携させて、データ取得からグラフ生成まで自動的に実行します。
実際の使用例です。
typescript// データ分析の実行例
const analysisRequest =
'2025年10月の売上をグラフで表示してください';
const response = await client.chat.completions.create({
model: 'gpt-5-turbo',
messages: [{ role: 'user', content: analysisRequest }],
tools: [
{ type: 'function', function: querySalesTool },
{ type: 'function', function: createChartTool },
],
tool_choice: 'auto',
});
// GPT-5 は自動的に以下の流れを実行:
// 1. query_sales_data を呼び出して売上データを取得
// 2. create_chart を呼び出してグラフを生成
// 3. 分析結果とグラフを含めた応答を返す
開発者はツールの定義と実装だけを行い、GPT-5 が自律的に適切な順序でツールを実行してくれます。
例 3:複数ツールの連携
ホテル予約システムを例に、複数のツールを連携させた高度なワークフローを見ていきましょう。
まず、空室検索ツールを定義します。
typescript// 空室検索ツールの定義
const searchRoomsTool: FunctionDefinition = {
name: 'search_available_rooms',
description: '指定された日程で空室を検索します',
parameters: {
type: 'object',
properties: {
checkIn: {
type: 'string',
description: 'チェックイン日(YYYY-MM-DD)',
},
checkOut: {
type: 'string',
description: 'チェックアウト日(YYYY-MM-DD)',
},
guests: {
type: 'integer',
description: '宿泊人数',
},
},
required: ['checkIn', 'checkOut', 'guests'],
},
};
次に、予約作成ツールを定義します。
typescript// 予約作成ツールの定義
const createReservationTool: FunctionDefinition = {
name: 'create_reservation',
description: '部屋を予約します',
parameters: {
type: 'object',
properties: {
roomId: {
type: 'string',
description: '部屋ID',
},
checkIn: {
type: 'string',
description: 'チェックイン日',
},
checkOut: {
type: 'string',
description: 'チェックアウト日',
},
guestName: {
type: 'string',
description: '宿泊者名',
},
guestEmail: {
type: 'string',
description: 'メールアドレス',
},
},
required: [
'roomId',
'checkIn',
'checkOut',
'guestName',
'guestEmail',
],
},
};
決済処理ツールも定義します。
typescript// 決済処理ツールの定義
const processPaymentTool: FunctionDefinition = {
name: 'process_payment',
description: '予約の決済を処理します',
parameters: {
type: 'object',
properties: {
reservationId: {
type: 'string',
description: '予約ID',
},
amount: {
type: 'number',
description: '金額(円)',
},
paymentMethod: {
type: 'string',
enum: ['credit_card', 'bank_transfer'],
description: '支払い方法',
},
},
required: ['reservationId', 'amount', 'paymentMethod'],
},
};
これらのツールを実装します。
typescript// ツールの実装
async function searchAvailableRooms(
checkIn: string,
checkOut: string,
guests: number
): Promise<string> {
const rooms = [
{
id: 'R101',
type: 'シングル',
price: 8000,
capacity: 1,
},
{
id: 'R201',
type: 'ダブル',
price: 12000,
capacity: 2,
},
{
id: 'R301',
type: 'スイート',
price: 25000,
capacity: 4,
},
];
const availableRooms = rooms.filter(
(room) => room.capacity >= guests
);
return JSON.stringify(availableRooms);
}
async function createReservation(
roomId: string,
checkIn: string,
checkOut: string,
guestName: string,
guestEmail: string
): Promise<string> {
const reservationId = `RES-${Date.now()}`;
return JSON.stringify({
reservationId,
roomId,
checkIn,
checkOut,
guestName,
status: 'confirmed',
});
}
async function processPayment(
reservationId: string,
amount: number,
paymentMethod: string
): Promise<string> {
return JSON.stringify({
success: true,
transactionId: `TXN-${Date.now()}`,
amount,
});
}
各関数は実際のビジネスロジックを実行し、結果を JSON で返します。
統合された予約フローは以下のようになります。
mermaidsequenceDiagram
participant User as ユーザー
participant GPT as GPT-5
participant Search as 空室検索
participant Reserve as 予約作成
participant Payment as 決済処理
User->>GPT: 予約リクエスト
GPT->>Search: search_available_rooms
Search->>GPT: 空室リスト
GPT->>User: 空室情報を提示
User->>GPT: 部屋選択
GPT->>Reserve: create_reservation
Reserve->>GPT: 予約ID
GPT->>Payment: process_payment
Payment->>GPT: 決済完了
GPT->>User: 予約完了通知
GPT-5 は複数のツールを適切な順序で実行し、ユーザーとの対話を挟みながら予約プロセスを完了させます。
実装例を見てみましょう。
typescript// ホテル予約チャットボット
async function hotelBookingBot(
userMessage: string,
conversationHistory: any[]
) {
conversationHistory.push({
role: 'user',
content: userMessage,
});
const response = await client.chat.completions.create({
model: 'gpt-5-turbo',
messages: conversationHistory,
tools: [
{ type: 'function', function: searchRoomsTool },
{ type: 'function', function: createReservationTool },
{ type: 'function', function: processPaymentTool },
],
tool_choice: 'auto',
});
// ツール呼び出しの処理
if (response.choices[0].message.tool_calls) {
for (const toolCall of response.choices[0].message
.tool_calls) {
const functionName = toolCall.function.name;
const args = JSON.parse(toolCall.function.arguments);
let result: string;
if (functionName === 'search_available_rooms') {
result = await searchAvailableRooms(
args.checkIn,
args.checkOut,
args.guests
);
} else if (functionName === 'create_reservation') {
result = await createReservation(
args.roomId,
args.checkIn,
args.checkOut,
args.guestName,
args.guestEmail
);
} else if (functionName === 'process_payment') {
result = await processPayment(
args.reservationId,
args.amount,
args.paymentMethod
);
} else {
result = JSON.stringify({
error: 'Unknown function',
});
}
conversationHistory.push({
role: 'tool',
tool_call_id: toolCall.id,
content: result,
});
}
}
return response.choices[0].message.content;
}
この実装により、ユーザーとの自然な対話を通じて、複雑な予約プロセスを自動化できます。
エラーハンドリングとベストプラクティス
ツール使用機能を本番環境で運用する際は、適切なエラーハンドリングが必要です。
typescript// エラーハンドリングの実装
async function executeToolWithErrorHandling(
functionName: string,
args: any
): Promise<string> {
try {
// ツールを実行
let result: string;
switch (functionName) {
case 'get_weather':
result = await getWeather(args.city, args.unit);
break;
case 'get_order_status':
result = await getOrderStatus(args.orderId);
break;
default:
throw new Error(
`Unknown function: ${functionName}`
);
}
return result;
} catch (error) {
// エラーログを記録
console.error(
`Error executing ${functionName}:`,
error
);
// エラー情報を GPT-5 に返す
return JSON.stringify({
error: true,
message:
error instanceof Error
? error.message
: 'Unknown error',
functionName,
});
}
}
エラーが発生した場合でも、GPT-5 がエラー内容を理解して適切な応答を返せるようにします。
タイムアウト処理も重要です。
typescript// タイムアウト付きツール実行
async function executeWithTimeout<T>(
promise: Promise<T>,
timeoutMs: number = 5000
): Promise<T> {
const timeoutPromise = new Promise<never>((_, reject) => {
setTimeout(() => {
reject(new Error(`Timeout after ${timeoutMs}ms`));
}, timeoutMs);
});
return Promise.race([promise, timeoutPromise]);
}
外部 API の応答が遅い場合でも、一定時間でタイムアウトさせることでシステム全体の安定性を確保します。
ツール使用のベストプラクティスをまとめます。
| # | ベストプラクティス | 説明 |
|---|---|---|
| 1 | 明確な関数定義 | 関数名と説明は具体的かつわかりやすく |
| 2 | パラメータのバリデーション | 必須パラメータと型を明確に定義 |
| 3 | エラーハンドリング | すべてのツールで例外処理を実装 |
| 4 | タイムアウト設定 | 外部 API 呼び出しには必ずタイムアウトを設定 |
| 5 | ログ記録 | ツール呼び出しと結果をログに記録 |
| 6 | セキュリティ対策 | 機密情報は環境変数で管理 |
| 7 | レート制限 | API 呼び出し回数を制限して過負荷を防ぐ |
まとめ
GPT-5 のツール使用機能は、生成 AI の活用方法を根本的に変革する技術です。従来のテキスト生成に加えて、外部システムとの連携、複雑なワークフローの自動化が可能になりました。
開発者はツールの定義と実装に集中でき、GPT-5 が状況を判断して適切にツールを呼び出してくれるため、開発工数を大幅に削減できます。カスタマーサポート、データ分析、予約システムなど、様々な業務シーンで実用的に活用できるでしょう。
ツール使用機能を活用することで、AI はもはや単なる「会話相手」ではなく、実際の業務を遂行する「実行可能なアシスタント」として機能します。これにより、開発者はより創造的な業務に時間を使えるようになり、ユーザー体験も大きく向上するはずです。
今後、ツール使用機能はさらに進化し、より複雑なタスクの自動化や、複数の AI エージェントの協調動作なども可能になっていくでしょう。今のうちから基礎を学び、実践的なスキルを身につけることが重要ですね。
ぜひこの記事を参考に、GPT-5 のツール使用機能を活用した開発に挑戦してみてください。
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