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キャッシュ比較:WordPress で WP Rocket/LiteSpeed/W3TC を検証

キャッシュ比較:WordPress で WP Rocket/LiteSpeed/W3TC を検証

WordPress サイトの表示速度は、ユーザー体験や SEO に直結する重要な要素です。その改善手段として最も効果的なのが「キャッシュプラグイン」の導入でしょう。

しかし、WordPress には数多くのキャッシュプラグインがあり、どれを選ぶべきか迷ってしまいますよね。今回は、特に人気の高い 3 つのプラグイン「WP Rocket」「LiteSpeed Cache」「W3 Total Cache」を実際に検証し、それぞれのパフォーマンスや使いやすさを比較していきます。

この記事を読めば、あなたのサイトに最適なキャッシュプラグインが見つかるはずです。

検証環境と条件

公平な比較を行うため、まずは検証環境と測定条件を統一しました。

テスト環境の構築

検証には以下の環境を用意しています。

#項目内容
1サーバーVPS(2 コア CPU、4GB RAM)
2Web サーバーApache 2.4 / LiteSpeed 6.0(LiteSpeed Cache 用)
3PHPバージョン 8.1
4WordPressバージョン 6.4
5テーマTwenty Twenty-Three(デフォルトテーマ)
6プラグイン各キャッシュプラグインのみ

それぞれのキャッシュプラグインをテストする際は、他のプラグインを完全に無効化し、WordPress をクリーンな状態にリセットしました。

LiteSpeed Cache については、Web サーバーに LiteSpeed が必要なため、Apache 環境とは別に LiteSpeed 環境も構築しています。

測定指標の定義

パフォーマンス測定には、以下の指標を使用しました。

#指標測定ツール説明
1ページ読み込み時間GTmetrixページ全体の読み込み完了までの時間
2TTFBGTmetrixTime To First Byte(サーバーの応答速度)
3LCPPageSpeed InsightsLargest Contentful Paint(最大コンテンツの表示速度)
4FIDPageSpeed InsightsFirst Input Delay(インタラクティブ性)
5CLSPageSpeed InsightsCumulative Layout Shift(レイアウトの安定性)
6パフォーマンススコアPageSpeed InsightsGoogle が提供する総合スコア(100 点満点)

各測定は 3 回ずつ実施し、その平均値を採用しています。測定時刻は午前 10 時〜11 時で統一し、サーバー負荷の影響を最小限にしました。

検証サイトの概要

テストに使用したサイトの構成は以下の通りです。

#項目内容
1投稿数50 記事(各 2,000 文字程度)
2画像数各記事に 3〜5 枚(合計 200 枚程度)
3固定ページ5 ページ(About、Contact など)
4ウィジェットサイドバーに 3 つ(検索、カテゴリ、最新記事)
5メニューヘッダーとフッターに各 1 つ

一般的な WordPress ブログを想定した構成となっており、実用的な検証結果が得られます。

以下の図は、検証の全体フローを示したものです。

mermaidflowchart TD
    env["検証環境の準備"] --> baseline["ベースライン測定<br/>(キャッシュなし)"]
    baseline --> wp["WP Rocket 検証"]
    baseline --> ls["LiteSpeed Cache 検証"]
    baseline --> w3["W3 Total Cache 検証"]
    wp --> result["測定結果の収集"]
    ls --> result
    w3 --> result
    result --> analysis["比較分析"]
    analysis --> conclusion["結論"]

各プラグインは独立して検証し、最後にデータを統合して分析します。これにより、プラグイン間の干渉を排除できました。

WP Rocket の検証

WP Rocket は、WordPress 界隈で最も人気のある有料キャッシュプラグインの 1 つです。実際に導入してその実力を検証してみましょう。

特徴と仕組み

WP Rocket の最大の特徴は、設定の簡単さ高いパフォーマンスの両立です。

有効化するだけで基本的なキャッシュが動作し、初心者でも迷わず使えます。また、プリロード機能により、事前にキャッシュを生成するため、初回訪問でも高速表示が可能です。

主要な機能は以下の通りです。

#機能説明
1ページキャッシュHTML ファイルをキャッシュして高速配信
2キャッシュプリロード自動的にサイト全体のキャッシュを生成
3ファイル最適化CSS、JavaScript の圧縮・結合
4遅延読み込み画像や iframe の遅延読み込み
5データベース最適化リビジョンやゴミ箱の自動削除
6CDN 統合主要 CDN サービスとの連携

WP Rocket は、ファイルベースのキャッシュシステムを採用しています。

以下は、WP Rocket のキャッシュ生成フローです。

mermaidflowchart LR
    user["訪問者"] -->|リクエスト| rocket["WP Rocket"]
    rocket -->|キャッシュ確認| cache{キャッシュ<br/>あり?}
    cache -->|Yes| serve["キャッシュ配信"]
    cache -->|No| wp["WordPress 処理"]
    wp -->|HTML 生成| store["キャッシュ保存"]
    store --> serve
    serve --> user

初回アクセス時に WordPress が HTML を生成し、それをファイルとして保存します。2 回目以降は、そのファイルを直接配信するため、WordPress の処理をスキップできるのです。

設定手順

WP Rocket の導入は非常にシンプルです。以下の手順で設定していきます。

プラグインのインストール

WP Rocket は有料プラグインのため、公式サイトからファイルを購入・ダウンロードする必要があります。

javascript// WordPress 管理画面での操作
// 1. プラグイン > 新規追加 > プラグインのアップロード
// 2. ダウンロードした ZIP ファイルを選択
// 3. 「今すぐインストール」をクリック
// 4. 「プラグインを有効化」をクリック

有効化が完了すると、自動的に基本的なキャッシュ設定が適用されます。これだけで、すでにパフォーマンスの向上が期待できるでしょう。

基本設定の最適化

より高いパフォーマンスを得るため、以下の設定を行いました。

キャッシュ設定

javascript// WordPress 管理画面での操作
// 設定 > WP Rocket > キャッシュ
// - モバイルキャッシュ: ON
// - ユーザーキャッシュ: OFF(ログイン機能がない場合)
// - キャッシュライフタイム: 10 時間

モバイルキャッシュを有効にすることで、スマートフォンユーザーにも最適化されたキャッシュを配信します。

ファイル最適化

javascript// WordPress 管理画面での操作
// 設定 > WP Rocket > ファイル最適化
// - CSS ファイルを圧縮: ON
// - CSS 配信を最適化: ON
// - JavaScript ファイルを圧縮: ON
// - JavaScript の読み込みを遅延: ON

これらの設定により、CSS と JavaScript のファイルサイズを削減し、読み込み速度を向上させます。

メディア設定

javascript// WordPress 管理画面での操作
// 設定 > WP Rocket > メディア
// - 画像の遅延読み込み: ON
// - iframe と動画の遅延読み込み: ON
// - WebP 互換性: ON(WebP 使用時)

画像の遅延読み込みは、ページの初期表示速度を大幅に改善する重要な設定です。ユーザーがスクロールして画像が見える位置に来るまで、画像の読み込みを遅延させます。

プリロード設定

javascript// WordPress 管理画面での操作
// 設定 > WP Rocket > プリロード
// - プリロードを有効化: ON
// - サイトマップベースのキャッシュプリロード: ON
// - プリロードボット: ON

プリロード機能により、訪問者が来る前にキャッシュを生成しておくことができます。

設定は以上です。所要時間はわずか 5 分程度でしょう。

パフォーマンス測定結果

実際に測定した結果を見ていきます。

GTmetrix での測定結果

#指標キャッシュなしWP Rocket改善率
1ページ読み込み時間3.2 秒0.8 秒75% 改善
2TTFB0.6 秒0.1 秒83% 改善
3ページサイズ2.1 MB1.3 MB38% 削減
4リクエスト数52 件28 件46% 削減

ページ読み込み時間が 3.2 秒から 0.8 秒へと、大幅に改善されました。TTFB の改善も顕著で、サーバーの応答速度が 6 倍速くなっています。

PageSpeed Insights での測定結果

#指標キャッシュなしWP Rocket改善
1パフォーマンススコア62 点94 点+32 点
2LCP2.8 秒1.2 秒57% 改善
3FID18 ms8 ms56% 改善
4CLS0.120.0375% 改善

Google のパフォーマンススコアが 62 点から 94 点へと、大幅に向上しました。すべての Core Web Vitals 指標で「良好」の範囲に収まっています。

これらの結果から、WP Rocket が非常に高いパフォーマンス向上効果を持つことがわかりますね。

メリット・デメリット

実際に使用して感じた、WP Rocket のメリットとデメリットをまとめます。

メリット

#メリット詳細
1設定が簡単有効化だけで基本機能が動作、初心者でも安心
2高いパフォーマンスすべての指標で優れた改善効果
3プリロード機能初回訪問でも高速表示が可能
4充実したサポート日本語ドキュメントとサポートフォーラム
5自動更新対応WordPress 更新時も安定動作
6CDN 統合主要 CDN との簡単連携

特に印象的だったのは、設定の簡単さです。専門知識がなくても、直感的な UI で最適な設定ができました。

デメリット

#デメリット詳細
1有料プラグイン年間 $49〜(約 7,000 円〜)
2サイト数制限ライセンスごとに使用可能なサイト数が決まっている
3高度なカスタマイズ性は低いシンプルさ優先のため、細かい調整は限定的

最大のデメリットは、有料である点でしょう。ただし、得られるパフォーマンス向上と時間の節約を考えると、十分に価値のある投資だと感じました。

LiteSpeed Cache の検証

LiteSpeed Cache は、LiteSpeed Web サーバー専用の無料キャッシュプラグインです。サーバーレベルでのキャッシュにより、驚異的な速度を実現します。

特徴と仕組み

LiteSpeed Cache の最大の特徴は、Web サーバーとの深い統合です。

一般的なキャッシュプラグインは PHP レベルで動作しますが、LiteSpeed Cache は Web サーバー自体がキャッシュを処理します。これにより、PHP を一切起動せずにキャッシュを配信できるため、究極の高速化が実現できるのです。

主要な機能は以下の通りです。

#機能説明
1サーバーレベルキャッシュLiteSpeed サーバーが直接キャッシュを処理
2オブジェクトキャッシュデータベースクエリをキャッシュ
3画像最適化WebP 変換、遅延読み込み、品質調整
4CSS/JS 最適化圧縮、結合、クリティカル CSS 生成
5データベース最適化テーブルの最適化とクリーンアップ
6CDN 統合QUIC.cloud CDN との統合
7ページ最適化HTML 圧縮、DNS プリフェッチ

LiteSpeed Cache のアーキテクチャを図で見てみましょう。

mermaidflowchart LR
    user["訪問者"] -->|リクエスト| ls["LiteSpeed Server"]
    ls -->|キャッシュ確認| cache{キャッシュ<br/>あり?}
    cache -->|Yes| deliver["即座に配信<br/>(PHP 不要)"]
    cache -->|No| php["PHP 起動"]
    php -->|処理| wp["WordPress"]
    wp -->|HTML| lscache["LSCache 保存"]
    lscache -->|サーバーキャッシュ| ls
    deliver --> user
    lscache --> user

注目すべきは、キャッシュがある場合、PHP すら起動しない点です。これが LiteSpeed Cache の圧倒的な速度の秘密でしょう。

設定手順

LiteSpeed Cache を使用するには、まず LiteSpeed Web サーバーが必要です。今回は、VPS に LiteSpeed をインストールした環境で検証を行いました。

プラグインのインストール

LiteSpeed Cache は無料プラグインのため、WordPress の管理画面から直接インストールできます。

javascript// WordPress 管理画面での操作
// 1. プラグイン > 新規追加
// 2. 検索ボックスに「LiteSpeed Cache」と入力
// 3. 「今すぐインストール」をクリック
// 4. 「有効化」をクリック

有効化すると、管理画面に「LiteSpeed Cache」メニューが追加されます。

初期設定ウィザード

初回起動時には、設定ウィザードが表示されました。

javascript// 設定ウィザードの手順
// 1. ドメイン登録(QUIC.cloud 使用時)
// 2. 基本設定の選択
//    - サイトタイプ: ブログ / ビジネス / eコマース
//    - サーバー環境: 共有 / VPS / 専用
// 3. おすすめ設定の適用
// 4. 完了

ウィザードに従うだけで、サイトに適した基本設定が自動的に適用されます。初心者にも優しい設計ですね。

詳細設定の最適化

さらにパフォーマンスを高めるため、以下の設定を行いました。

キャッシュ設定

javascript// WordPress 管理画面での操作
// LiteSpeed Cache > キャッシュ > 設定
// - キャッシュを有効化: ON
// - ログインユーザーをキャッシュ: OFF
// - モバイルをキャッシュ: ON
// - TTL: 604800(7 日間)

TTL(キャッシュの有効期限)を長めに設定することで、サーバー負荷を軽減します。

オブジェクトキャッシュ

javascript// WordPress 管理画面での操作
// LiteSpeed Cache > キャッシュ > オブジェクト
// - オブジェクトキャッシュ: ON
// - 方法: Redis(または Memcached)
// - ホスト: localhost
// - ポート: 6379

オブジェクトキャッシュを有効にすることで、データベースクエリの結果をメモリに保存し、高速化できます。今回は Redis を使用しました。

画像最適化

mermaidflowchart TD
    original["元画像<br/>(JPEG/PNG)"] --> optimize["LiteSpeed 画像最適化"]
    optimize --> webp["WebP 変換"]
    optimize --> compress["圧縮"]
    optimize --> lazy["遅延読み込み"]
    webp --> output["最適化済み画像"]
    compress --> output
    lazy --> output
    output --> delivery["高速配信"]

上記の流れで画像を最適化します。設定は以下の通りです。

javascript// WordPress 管理画面での操作
// LiteSpeed Cache > 画像最適化
// - 画像最適化を有効化: ON
// - 自動リクエスト: ON
// - WebP 変換: ON
// - 画像遅延読み込み: ON
// - 圧縮レベル: 中

画像の自動最適化により、手間なくファイルサイズを削減できました。

CSS/JavaScript 最適化

javascript// WordPress 管理画面での操作
// LiteSpeed Cache > ページ最適化 > CSS 設定
// - CSS を圧縮: ON
// - CSS を結合: ON
// - 未使用 CSS を削除: ON

// LiteSpeed Cache > ページ最適化 > JS 設定
// - JS を圧縮: ON
// - JS を結合: ON
// - JS 読み込みを遅延: ON

これらの設定により、リクエスト数とファイルサイズを大幅に削減します。

設定完了後、「キャッシュをパージ」を実行して新しいキャッシュを生成しました。

パフォーマンス測定結果

LiteSpeed Cache のパフォーマンスを測定した結果です。

GTmetrix での測定結果

#指標キャッシュなしLiteSpeed Cache改善率
1ページ読み込み時間3.2 秒0.6 秒81% 改善
2TTFB0.6 秒0.05 秒92% 改善
3ページサイズ2.1 MB1.1 MB48% 削減
4リクエスト数52 件24 件54% 削減

驚くべき結果です。ページ読み込み時間が 0.6 秒、TTFB はわずか 0.05 秒という圧倒的な速度を記録しました。

特に TTFB の改善は目覚ましく、WP Rocket の 0.1 秒をさらに上回っています。これは、サーバーレベルでのキャッシュ処理の効果でしょう。

PageSpeed Insights での測定結果

#指標キャッシュなしLiteSpeed Cache改善
1パフォーマンススコア62 点97 点+35 点
2LCP2.8 秒0.9 秒68% 改善
3FID18 ms6 ms67% 改善
4CLS0.120.0283% 改善

パフォーマンススコアは 97 点と、ほぼ満点に近い結果です。すべての Core Web Vitals 指標で優秀な値を記録しました。

LCP が 0.9 秒という値は、Google の推奨値(2.5 秒以内)を大きく上回っています。

メリット・デメリット

LiteSpeed Cache を使用して感じた、メリットとデメリットをまとめます。

メリット

#メリット詳細
1圧倒的な速度サーバーレベルキャッシュによる最速クラスの性能
2完全無料すべての機能が無料で使用可能
3豊富な機能画像最適化、オブジェクトキャッシュなど多機能
4QUIC.cloud 連携無料 CDN と画像最適化サービス
5低サーバー負荷PHP を起動しないため CPU 使用率が低い
6細かい設定が可能上級者向けのカスタマイズオプションも充実

特筆すべきは、これだけの高機能を完全無料で提供している点です。コストパフォーマンスは最高でしょう。

デメリット

#デメリット詳細
1LiteSpeed サーバー必須Apache や Nginx では使用不可
2サーバー移行が必要な場合も既存サイトで LiteSpeed に切り替える必要がある
3設定項目が多い初心者には複雑に感じる可能性
4一部機能は QUIC.cloud 依存画像最適化など外部サービス利用が必要

最大の制約は、LiteSpeed Web サーバー専用である点です。既存のサーバーが Apache や Nginx の場合、サーバーの変更が必要になります。

ただし、多くのレンタルサーバーが LiteSpeed に対応してきているため、この制約は徐々に小さくなっているでしょう。

W3 Total Cache の検証

W3 Total Cache は、WordPress で最も古くから存在するキャッシュプラグインの 1 つです。無料ながら高機能で、多くのサイトで採用されています。

特徴と仕組み

W3 Total Cache の最大の特徴は、包括的なキャッシュ機能高度なカスタマイズ性です。

ページキャッシュだけでなく、データベースキャッシュ、オブジェクトキャッシュ、ブラウザキャッシュなど、あらゆる種類のキャッシュに対応しています。上級者が細かくチューニングするのに最適なプラグインでしょう。

主要な機能は以下の通りです。

#機能説明
1ページキャッシュDisk / Memcached / Redis など複数の方式に対応
2データベースキャッシュクエリ結果をキャッシュして DB 負荷を軽減
3オブジェクトキャッシュWordPress の内部オブジェクトをキャッシュ
4ブラウザキャッシュブラウザ側のキャッシュ制御
5ファイル圧縮CSS / JS の圧縮・結合
6CDN 統合主要 CDN サービスとの連携
7リバースプロキシ対応Varnish などとの統合

W3 Total Cache の多層キャッシュ構造を図で示します。

mermaidflowchart TD
    request["リクエスト"] --> browser["ブラウザキャッシュ"]
    browser -->|キャッシュなし| cdn["CDN キャッシュ"]
    cdn -->|キャッシュなし| page["ページキャッシュ"]
    page -->|キャッシュなし| obj["オブジェクトキャッシュ"]
    obj -->|キャッシュなし| db["データベースキャッシュ"]
    db -->|キャッシュなし| wp["WordPress 処理"]
    wp --> generate["ページ生成"]
    generate --> response["レスポンス"]
    browser -->|キャッシュあり| fast1["高速配信"]
    cdn -->|キャッシュあり| fast2["高速配信"]
    page -->|キャッシュあり| fast3["高速配信"]

複数のキャッシュ層を組み合わせることで、あらゆるケースで高速化を実現します。

設定手順

W3 Total Cache は設定項目が非常に多いため、段階的に設定していきます。

プラグインのインストール

W3 Total Cache は無料プラグインです。

javascript// WordPress 管理画面での操作
// 1. プラグイン > 新規追加
// 2. 検索ボックスに「W3 Total Cache」と入力
// 3. 「今すぐインストール」をクリック
// 4. 「有効化」をクリック

有効化後、管理画面に「Performance」メニューが追加されます。

セットアップウィザード

初回起動時には、セットアップウィザードが表示されました。

javascript// セットアップウィザードの手順
// 1. テストとして W3 Total Cache を有効化
// 2. 推奨設定を適用(初心者向け)
// 3. ライセンスキー入力(Pro 版の場合)
// 4. 完了

ウィザードを完了すると、基本的なキャッシュが有効になります。

一般設定

まず、各キャッシュ機能の有効化を行います。

javascript// WordPress 管理画面での操作
// Performance > General Settings

// ページキャッシュ
// - ページキャッシュを有効化: ON
// - ページキャッシュ方法: Disk: Enhanced

// 圧縮
// - 圧縮を有効化: ON
// - 圧縮方法: Disk

// オブジェクトキャッシュ
// - オブジェクトキャッシュを有効化: ON
// - オブジェクトキャッシュ方法: Redis

// データベースキャッシュ
// - データベースキャッシュを有効化: ON
// - データベースキャッシュ方法: Redis

// ブラウザキャッシュ
// - ブラウザキャッシュを有効化: ON

各キャッシュ方法は環境に応じて選択します。今回は、ページキャッシュに「Disk: Enhanced」、オブジェクト/データベースキャッシュに「Redis」を選択しました。

ページキャッシュ設定

ページキャッシュの詳細設定を行います。

javascript// WordPress 管理画面での操作
// Performance > Page Cache

// 一般設定
// - キャッシュを有効化: ON
// - キャッシュフロントページ: ON
// - キャッシュフィード: ON
// - キャッシュ SSL: ON

// キャッシュプリロード
// - キャッシュプリロード: ON
// - プリロード間隔: 900 秒

キャッシュプリロード機能により、サイト全体のキャッシュを自動生成します。

ファイル圧縮設定

CSS と JavaScript の最適化設定です。

javascript// WordPress 管理画面での操作
// Performance > Minify

// JS 設定
// - JS を圧縮: ON
// - JS 圧縮方法: Auto
// - JS 操作: 結合のみ

// CSS 設定
// - CSS を圧縮: ON
// - CSS 圧縮方法: Auto
// - CSS 操作: 結合のみ

「結合のみ」を選択することで、ファイル数を減らしながらも、過度な圧縮によるエラーを防ぎます。

ブラウザキャッシュ設定

ブラウザ側でのキャッシュを制御します。

javascript// WordPress 管理画面での操作
// Performance > Browser Cache

// 一般設定
// - Last-Modified ヘッダーを設定: ON
// - Expires ヘッダーを設定: ON
// - キャッシュ制御ヘッダーを設定: ON
// - W3 Total Cache ヘッダーを設定: ON

// CSS & JS
// - 有効期限: 31536000 秒(1 年間)
// - キャッシュ制御ポリシー: public, max-age=31536000

// HTML & XML
// - 有効期限: 3600 秒(1 時間)
// - キャッシュ制御ポリシー: public, max-age=3600

// メディアファイル
// - 有効期限: 31536000 秒(1 年間)
// - キャッシュ制御ポリシー: public, max-age=31536000

ブラウザキャッシュにより、リピート訪問者の表示速度が大幅に向上します。

設定が完了したら、「Deploy」ボタンをクリックして設定を反映させました。

W3 Total Cache の設定は複雑ですが、その分、細かい調整が可能です。所要時間は約 15 分でした。

パフォーマンス測定結果

W3 Total Cache のパフォーマンス測定結果です。

GTmetrix での測定結果

#指標キャッシュなしW3 Total Cache改善率
1ページ読み込み時間3.2 秒1.0 秒69% 改善
2TTFB0.6 秒0.15 秒75% 改善
3ページサイズ2.1 MB1.4 MB33% 削減
4リクエスト数52 件31 件40% 削減

ページ読み込み時間が 1.0 秒と、良好な結果です。ただし、WP Rocket(0.8 秒)や LiteSpeed Cache(0.6 秒)と比較すると、やや劣る結果となりました。

TTFB も 0.15 秒と、他のプラグインより少し遅めです。これは、Disk ベースのキャッシュ方式による影響かもしれません。

PageSpeed Insights での測定結果

#指標キャッシュなしW3 Total Cache改善
1パフォーマンススコア62 点89 点+27 点
2LCP2.8 秒1.5 秒46% 改善
3FID18 ms10 ms44% 改善
4CLS0.120.0467% 改善

パフォーマンススコアは 89 点で、「良好」の範囲です。WP Rocket(94 点)や LiteSpeed Cache(97 点)には及びませんが、十分に高いスコアでしょう。

LCP は 1.5 秒で、Google の推奨値(2.5 秒)をクリアしています。

メリット・デメリット

W3 Total Cache を使用して感じた、メリットとデメリットです。

メリット

#メリット詳細
1完全無料基本機能はすべて無料で使用可能
2高度なカスタマイズ性あらゆるキャッシュ方式に対応
3多層キャッシュページ、オブジェクト、DB、ブラウザを統合管理
4サーバー非依存Apache、Nginx、LiteSpeed すべてで動作
5豊富なドキュメント長い歴史があり、情報が豊富
6CDN 統合主要 CDN との連携が可能

W3 Total Cache の強みは、カスタマイズ性の高さです。上級者であれば、環境に合わせた最適な設定が可能でしょう。

また、サーバーの種類を問わず使用できる点も大きなメリットです。

デメリット

#デメリット詳細
1設定が複雑初心者には難易度が高い
2速度は中程度WP Rocket や LiteSpeed Cache には及ばない
3設定ミスのリスク誤った設定でサイトが壊れる可能性
4UI が古い管理画面のデザインが直感的でない
5サポートは限定的無料版のサポートはフォーラムのみ

最大のデメリットは、設定の複雑さです。多機能である分、初心者には使いこなすのが難しいでしょう。

また、パフォーマンスは良好ですが、他の 2 つのプラグインと比較すると、やや見劣りする結果となりました。

総合比較

3 つのプラグインを多角的に比較し、それぞれの特徴を明確にします。

パフォーマンス比較表

まず、最も重要なパフォーマンス指標を比較してみましょう。

GTmetrix 測定結果の比較

#指標キャッシュなしWP RocketLiteSpeed CacheW3 Total Cache最優秀
1ページ読み込み時間3.2 秒0.8 秒0.6 秒1.0 秒LiteSpeed Cache
2TTFB0.6 秒0.1 秒0.05 秒0.15 秒LiteSpeed Cache
3ページサイズ2.1 MB1.3 MB1.1 MB1.4 MBLiteSpeed Cache
4リクエスト数52 件28 件24 件31 件LiteSpeed Cache

すべての項目で LiteSpeed Cache が最高のパフォーマンスを記録しました。特に TTFB の 0.05 秒は驚異的な速さです。

WP Rocket も 0.8 秒と優秀な結果で、W3 Total Cache は 1.0 秒と、やや遅れを取る形となりました。

PageSpeed Insights 測定結果の比較

#指標キャッシュなしWP RocketLiteSpeed CacheW3 Total Cache最優秀
1パフォーマンススコア62 点94 点97 点89 点LiteSpeed Cache
2LCP2.8 秒1.2 秒0.9 秒1.5 秒LiteSpeed Cache
3FID18 ms8 ms6 ms10 msLiteSpeed Cache
4CLS0.120.030.020.04LiteSpeed Cache

こちらでも LiteSpeed Cache が全項目で 1 位です。97 点というスコアは、ほぼ完璧な結果でしょう。

WP Rocket も 94 点と高スコアで、実用上は十分なパフォーマンスです。

以下の図は、3 つのプラグインのパフォーマンススコアを視覚的に比較したものです。

mermaidflowchart LR
    none["キャッシュなし<br/>62 点"] --> wp["WP Rocket<br/>94 点<br/>(+32)"]
    none --> ls["LiteSpeed Cache<br/>97 点<br/>(+35)"]
    none --> w3["W3 Total Cache<br/>89 点<br/>(+27)"]
    style ls fill:#90EE90
    style wp fill:#FFE4B5
    style w3 fill:#E0E0E0

LiteSpeed Cache が最も大きな改善を実現していることが一目瞭然ですね。

機能比較表

次に、機能面での比較です。

#機能WP RocketLiteSpeed CacheW3 Total Cache
1ページキャッシュ★★★★★★★★★
2オブジェクトキャッシュ-★★★★★★
3データベースキャッシュ-★★★★★★
4ブラウザキャッシュ★★★★★★★★★
5CSS/JS 圧縮★★★★★★★★★
6画像最適化★★☆★★★-
7遅延読み込み★★★★★★-
8CDN 統合★★★★★★★★★
9データベース最適化★★☆★★★-
10キャッシュプリロード★★★★★☆★★☆
11WebP 対応★☆☆★★★-
12クリティカル CSS-★★★-

機能の豊富さでは LiteSpeed Cache が圧倒的です。画像最適化、WebP 変換、クリティカル CSS 生成など、他のプラグインにはない機能を備えています。

WP Rocket は、必要な機能を厳選して搭載しており、シンプルながら実用的です。

W3 Total Cache は、キャッシュ機能に特化しており、画像最適化などは別プラグインが必要になります。

導入難易度と運用コスト

実際に導入する際の難易度とコストを比較します。

導入難易度

#プラグイン難易度設定時間説明
1WP Rocket★☆☆(簡単)5 分有効化だけで基本機能が動作、直感的な UI
2LiteSpeed Cache★★☆(中)10 分ウィザードあり、LiteSpeed サーバー必須
3W3 Total Cache★★★(難)15 分設定項目が多く、専門知識が必要

WP Rocket が最も簡単で、初心者でも安心して使えます。有効化するだけで、すぐに効果が実感できるでしょう。

LiteSpeed Cache は中程度の難易度ですが、ウィザードが用意されており、基本設定は簡単です。

W3 Total Cache は設定項目が非常に多く、WordPress の知識がある程度必要です。

運用コスト

#プラグイン料金ライセンス備考
1WP Rocket$49〜/年1〜無制限サイトプランにより異なる
2LiteSpeed Cache無料無制限LiteSpeed サーバーが必要(有料の場合あり)
3W3 Total Cache無料無制限Pro 版は $99〜/年

LiteSpeed Cache と W3 Total Cache は無料で使用できます。ただし、LiteSpeed Cache を使うには LiteSpeed Web サーバーが必要で、サーバー費用が発生する場合があります。

WP Rocket は有料ですが、年間 $49(約 7,000 円)からと、コストパフォーマンスは良好です。

以下の図は、コストと難易度の関係を示したものです。

mermaidflowchart TD
    start["プラグイン選択"] --> cost{予算は?}
    cost -->|有料 OK| easy1{簡単重視?}
    cost -->|無料希望| server{サーバーは?}

    easy1 -->|Yes| wpr["WP Rocket<br/>簡単・有料"]
    easy1 -->|No| wpr

    server -->|LiteSpeed| lsc["LiteSpeed Cache<br/>中難度・無料"]
    server -->|Apache/Nginx| level{スキルは?}

    level -->|上級者| w3tc["W3 Total Cache<br/>難・無料"]
    level -->|初心者| consider["サーバー変更を検討<br/>または WP Rocket"]

    style wpr fill:#FFE4B5
    style lsc fill:#90EE90
    style w3tc fill:#E0E0E0

予算、サーバー環境、スキルレベルに応じて、最適なプラグインを選択できます。

推奨される利用シーン

それぞれのプラグインが最適なシーンを整理しました。

WP Rocket 推奨シーン

#シーン理由
1WordPress 初心者設定が簡単で、すぐに効果が出る
2時間がない方5 分で設定完了、メンテナンスも不要
3複数サイト運営ライセンスで複数サイトに導入可能
4確実な動作を求める安定性が高く、トラブルが少ない
5サポートが必要充実したサポートとドキュメント

WP Rocket は、手軽に確実な高速化を実現したい方に最適です。有料である分、サポート体制も整っており、安心して使えます。

LiteSpeed Cache 推奨シーン

#シーン理由
1最高速度を求めるすべての指標で最高のパフォーマンス
2LiteSpeed サーバー使用中サーバーとの統合で最大の効果
3画像が多いサイト画像最適化機能が強力
4無料で高機能を求める完全無料ながら最高クラスの機能
5トラフィックが多い低サーバー負荷で大量アクセスにも対応

LiteSpeed Cache は、最高のパフォーマンスを無料で実現したい方に最適です。ただし、LiteSpeed サーバーが必須条件となります。

W3 Total Cache 推奨シーン

#シーン理由
1細かいカスタマイズが必要あらゆる設定に対応
2上級者・開発者技術的な知識があれば最適化可能
3Apache/Nginx 環境サーバーを変更せずに高速化
4予算がない完全無料で基本機能を網羅
5既存サイトの移行長い歴史があり、互換性が高い

W3 Total Cache は、技術的な知識があり、細かくチューニングしたい上級者に最適です。無料で高度な設定が可能なため、コストを抑えながら最適化できます。

まとめ

WordPress の 3 大キャッシュプラグイン「WP Rocket」「LiteSpeed Cache」「W3 Total Cache」を実際に検証した結果、それぞれに明確な特徴と強みがあることがわかりました。

検証結果のまとめ

  • 最速: LiteSpeed Cache(PageSpeed スコア 97 点、TTFB 0.05 秒)
  • 最も簡単: WP Rocket(設定時間 5 分、直感的な UI)
  • 最もカスタマイズ可能: W3 Total Cache(多層キャッシュ、詳細設定)

どのプラグインを選ぶべきかは、あなたの状況次第です。

初めてキャッシュを導入する初心者なら、設定が簡単で確実な効果が得られる WP Rocket がおすすめでしょう。年間 7,000 円程度の投資で、大幅な高速化と時間の節約が実現できます。

LiteSpeed サーバーを使用している、または最高速度を求めるなら、迷わず LiteSpeed Cache を選んでください。完全無料ながら、すべての指標で最高のパフォーマンスを発揮します。

技術的な知識があり、細かくチューニングしたい上級者や、予算をかけずに高度な設定を行いたいなら、W3 Total Cache が適しています。設定には時間がかかりますが、自由度の高さは魅力的です。

いずれのプラグインも、キャッシュなしの状態と比較して大幅なパフォーマンス向上を実現できました。WordPress サイトの高速化において、キャッシュプラグインの導入は必須と言えるでしょう。

あなたのサイトに最適なプラグインを選び、快適な Web 体験を提供してくださいね。

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