1on1 が劇的に変わる!フロントエンドエンジニアの成長を加速させる「問いかけ」の技術

フロントエンドエンジニアとの 1on1、皆さんはどのように進めていますか?技術の進化が目まぐるしいこの領域で、メンバーの成長を効果的にサポートするためには、単なる進捗確認以上のコミュニケーションが求められます。特に「問いかけ」の質は、メンバーの潜在能力を引き出し、主体的な成長を促す上で非常に重要です。
しかし、「具体的にどんな言葉をかければいいのだろう…」と悩むマネージャーやメンターの方も少なくないのではないでしょうか。私自身も、かつてはその一人でした。この記事では、私が試行錯誤の末に見出した、フロントエンドエンジニアの成長を加速させるための効果的な「問いかけ」の技術と、それによってチームやメンバーにどのような変化が生まれたのかを、具体的なエピソードを交えてご紹介します。皆さんの 1on1 が、より実りあるものになるための一助となれば幸いです。
背景と課題:なぜ「問いかけ」が重要なのか
フロントエンドの世界は、新しいフレームワーク、ライブラリ、ツールが次々と登場し、変化のスピードが非常に速いのが特徴です。このため、エンジニアは常に新しい情報をキャッチアップし、スキルを磨き続ける必要があります。
このような状況下で、1on1 が進捗報告やタスク管理だけで終わってしまうと、メンバーが抱える本質的な課題や、キャリアに対する深い悩みに気づくことが難しくなります。結果として、メンバーの成長機会を最大限に活かせず、ポテンシャルを引き出せないままになってしまうことも少なくありません。
私が以前直面していたのは、まさにメンバーの主体的な成長をどう促すか、という課題でした。
- 技術的な壁への直面: 新しい技術や複雑なバグに直面した際、どのように解決の糸口を見つければ良いか分からず、思考停止してしまうメンバーがいました。彼らは、答えを直接求める傾向があり、自ら深く掘り下げて考える機会を失っていました。
- キャリアパスへの漠然とした不安: 将来どのようなフロントエンドエンジニアになりたいのか、そのために何をすべきかについて、具体的なイメージを持てずに漠然とした不安を抱えるメンバーもいました。1on1 で話を聞いても、なかなか核心に触れることができませんでした。
これらの課題を解決するためには、指示やアドバイス中心のコミュニケーションから脱却し、メンバー自身の気づきと内省を促す「問いかけ」が不可欠だと考えるようになりました。
試したこと・実践内容:成長を加速させる「問いかけ」の具体例
課題意識から、私は 1on1 での「問いかけ」を意識的に変えていきました。ここでは、特に効果があったと感じている問いかけの具体例を、いくつかのカテゴリに分けてご紹介します。
技術的な課題解決を促す問いかけ
フロントエンド開発では、日々新たな技術的課題に直面します。そんな時、解決策を直接提示するのではなく、メンバー自身が思考を深め、解決の糸口を見つけ出せるような問いかけを心がけています。
-
「今、一番困っている技術的な課題は何ですか? その根本的な原因は何だと思いますか?」
- 単に問題を聞くだけでなく、原因の仮説を立ててもらうことで、問題解決能力の向上を促します。
-
「その課題に対して、他に試せそうなアプローチはありますか? それぞれのメリット・デメリットは何でしょう?」
- 一つの解決策に固執せず、多角的な視点を持つことを奨励します。
-
「もし、その機能のパフォーマンスを改善するとしたら、どこから調査を始めますか? 具体的にどんな指標を見ますか?」
- 例えば、React アプリケーションで特定のコンポーネントのレンダリングが遅い、という相談があったとします。
jsx
// 問題のあるコンポーネント(イメージ) const SlowComponent = ({ data }) => { // 複雑な計算や多くの要素をレンダリングしている // ... return <div>{/* ... */}</div>; };
こんな時、私は次のように問いかけます。 「この
SlowComponent
の再レンダリング頻度や、レンダリングにかかる時間をReact Profiler
を使って計測したことはありますか? もしReact DevTools
のProfiler
を使ったら、何が見えそうですか?」 「memo
化やuseCallback
、useMemo
といった最適化手法は検討しましたか? それらを適用する場合、どんな点に注意すべきでしょうか?」 このような問いかけを通じて、メンバー自身が計測の重要性を理解し、具体的なデバッグツールを使って原因を特定するスキルを身につけることを目指します。
キャリアや目標設定に関する問いかけ
技術的な成長だけでなく、中長期的なキャリア形成の支援も 1on1 の重要な役割です。メンバーが自身のキャリアについて主体的に考えられるような問いかけを意識しています。
- 「半年後、1 年後、どんな技術を習得していたいですか? そのために、今月、今週できる具体的なアクションは何でしょう?」
- 長期的な目標と短期的な行動を結びつけることで、実現可能性を高めます。
- 「今のプロジェクトで、もっと挑戦してみたい役割やタスクはありますか? それを実現するために、私やチームができるサポートはありますか?」
- メンバーの意欲を引き出し、成長機会を提供するための問いかけです。
- 「あなたの強み(例えば、特定の技術知識、コミュニケーション能力、問題解決能力など)を活かせる技術領域やプロジェクトは、チームや会社の中でどんなものがあると思いますか?」
- 自己分析を促し、キャリアの方向性を見出す手助けをします。
学習意欲を引き出す問いかけ
技術への好奇心や学習意欲は、フロントエンドエンジニアの成長に不可欠です。
- 「最近気になっている新しい技術やライブラリはありますか? それを学ぶことで、今の私たちのプロジェクトやチームにどんな貢献ができそうですか?」
- 単なる興味だけでなく、実務への応用まで考えてもらうことで、学習の目的意識を高めます。
- 「〇〇(特定の技術、例えば
TypeScript
やNext.js
など)について、他の人に分かりやすく説明するとしたら、どんなポイントを強調しますか?どんな具体例を挙げますか?」- 人に説明することを想定することで、理解度を深める効果があります(ラバーダッキング)。
1on1 の質を高めるための準備と問いかけ
1on1 自体をより有意義なものにするための問いかけも重要です。
- 事前にアジェンダを共有する際に、「今日の 1on1 で、特に話したいこと、解決したい課題、相談したいことはありますか? もしあれば、事前に教えてもらえると嬉しいです」と問いかけ、メンバー自身に 1on1 のテーマを考えてもらうようにしています。
- これにより、メンバーは受け身ではなく、主体的に 1on1 に参加するようになります。
気づきと変化:問いかけが生んだポジティブな変化
これらの問いかけを実践していく中で、チームやメンバーには明らかにポジティブな変化が見られました。
Before:
- メンバーは指示されたタスクをこなすことが中心で、指示待ちの姿勢が見られることもありました。
- 技術的な課題に直面すると、すぐに答えを求める傾向があり、表面的な解決策に留まることが多かったです。
- 1on1 は、私からの一方的なアドバイスやフィードバックの時間が長くなりがちで、メンバーの本音や深い考えを引き出せていないと感じていました。
After:
- メンバーが自ら課題を発見し、複数の解決策を比較検討して提案するようになりました。例えば、ある UI 改修タスクで、当初想定していなかったアクセシビリティの観点からの改善提案がメンバーから出てきた時は、大きな成長を感じました。
- 技術選定やアーキテクチャ設計に関する議論の場で、以前よりも深いレベルでの意見交換ができるようになりました。「なぜこの技術を選ぶのか」「他の選択肢と比較して何が優れているのか」といった議論が活発に行われるようになったのです。
- メンバーのモチベーションが向上し、主体的な行動が増えました。例えば、あるメンバーは、1on1 での「最近気になっている技術は?」という問いかけをきっかけに、
WebAssembly
の調査を自主的に開始。数週間後にはチーム内で共有会を開き、具体的な活用案まで提示してくれました。その結果、一部の処理でパフォーマンスが約 30%向上するという成果にも繋がりました。 - 1on1 が、私からメンバーへの一方的な時間ではなく、双方向の対話の場へと変化しました。メンバーが安心して自分の考えや悩みを話せるようになり、結果として信頼関係も深まったと感じています。
他のチームで試すなら:再現性のあるアドバイス
もし皆さんのチームでも「問いかけ」の技術を試してみたいと思われたなら、以下のステップから始めてみることをお勧めします。
- まずはオープンな問いかけから: 1on1 の冒頭で、「今日はどんな話をしたいですか?」「最近、仕事で何か気になることはありましたか?」といったオープンな質問で、相手が話しやすい雰囲気を作りましょう。
- すぐにアドバイスせず、深掘りする: メンバーの回答に対して、すぐに自分の意見やアドバイスを言うのではなく、「なぜそう思うのですか?」「もう少し詳しく教えてもらえますか?」「それについて、具体的にどんな経験がありましたか?」といった質問で、さらに深く掘り下げてみましょう。
- 仮定の問いかけも有効活用: 「もし、〇〇(例えば、時間や予算などの技術的な制約)がなかったとしたら、どんな解決策が理想的だと思いますか?」といった仮定の質問は、自由な発想を促し、本質的なニーズを引き出すのに役立ちます。
- 問いかけリストの準備と使い分け: 事前にいくつかの「問いかけの型」や具体的な質問リストを準備しておき、メンバーの状況や話の流れに応じて使い分けると効果的です。ただし、リストに縛られすぎず、自然な会話の流れを大切にしましょう。
- 具体的なアクションに繋げる: 1on1 の最後には、「今日の話で、明日から何か一つ行動に移せそうなことはありますか?」と問いかけ、具体的なアクションプランに繋げることを意識しましょう。小さな一歩でも、行動を促すことが成長には不可欠です。
重要: これらの問いかけは、相手を詰問するためのものではありません。あくまで、相手の内省を促し、自発的な気づきや行動を引き出すためのものです。安心感のある、信頼に基づいた雰囲気作りを常に心がけてください。
振り返りと、これからの自分へ:問いかけの技術を磨き続けるために
「問いかけ」の技術を意識し始めてから、メンバーの成長はもちろん、私自身のマネジメントに対する考え方にも大きな変化がありました。
「問いかけ」は決して万能な魔法の杖ではありません。相手の性格や経験、その時の状況に合わせて、最適な言葉を選び、使い分けることの重要性を日々痛感しています。時には、問いかけるだけでなく、積極的に情報を提供したり、具体的なフィードバックを伝えたりすることも、もちろん大切です。
これからも、メンバー一人ひとりの個性や状況に真摯に向き合い、彼らが持つ可能性を最大限に引き出せるような、より効果的な「問いかけ」ができるよう、日々実践と改善を重ねていきたいと考えています。そして、私自身もメンバーからの問いかけを通じて、共に成長していきたいです。
最後に、この記事を読んでくださっている皆さんに問いかけです。 皆さんのチームでは、メンバーの成長を促すために、どんな「問いかけ」を実践していますか?もし効果的なものがあれば、ぜひ教えてください!
まとめ
フロントエンドエンジニアの成長を加速させるためには、テクニカルスキルだけでなく、彼らの内省を促し、主体的な行動を引き出すためのコミュニケーションが不可欠です。その鍵となるのが、良質な「問いかけ」です。
この記事で紹介した「問いかけ」の技術や具体例が、皆さんの 1on1 をより実りあるものにし、メンバーの皆さんがそれぞれの場で輝くための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。ぜひ、今日からでも小さな問いかけを一つ、試してみてはいかがでしょうか。
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