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Yarn vs npm vs pnpm 徹底比較:速度・メモリ・ディスク・再現性を実測

Yarn vs npm vs pnpm 徹底比較:速度・メモリ・ディスク・再現性を実測

Node.js のパッケージマネージャーは、開発者にとって日々欠かせないツールです。npm、Yarn、pnpm という 3 つの主要なパッケージマネージャーがありますが、実際にどれを選ぶべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、これら 3 つのパッケージマネージャーを「速度」「メモリ使用量」「ディスク使用量」「再現性」の 4 つの観点から実測データをもとに徹底比較します。実際のプロジェクトでどのような違いが生まれるのか、具体的な数値とともに詳しく解説していきますね。

背景

パッケージマネージャーの役割

パッケージマネージャーは、JavaScript プロジェクトで必要なライブラリ(パッケージ)のインストール、更新、削除を管理するツールです。現代の Web アプリケーション開発では、数十から数百ものパッケージに依存することが一般的となっており、パッケージマネージャーの性能が開発体験に大きく影響します。

3 つのパッケージマネージャーの特徴

各パッケージマネージャーには、それぞれ異なる設計思想と特徴があります。

以下の図で、3 つのパッケージマネージャーの位置づけを示します。

mermaidflowchart TD
    npm["npm<br/>(Node.js標準)"]
    yarn["Yarn<br/>(Meta開発)"]
    pnpm["pnpm<br/>(効率重視)"]

    npm -->|"2016年"| yarn
    npm -->|"2017年"| pnpm
    yarn -->|"影響"| pnpm

    npm -.->|"標準・安定性"| choice["選択基準"]
    yarn -.->|"速度・機能"| choice
    pnpm -.->|"ディスク効率"| choice

npm(Node Package Manager) は、Node.js に標準搭載されているパッケージマネージャーです。最も歴史が長く、安定性と互換性に優れています。

Yarn は、Meta(旧 Facebook)が開発したパッケージマネージャーで、npm の速度や安定性の問題を解決するために生まれました。並列インストールやオフラインキャッシュなど、革新的な機能を導入しています。

pnpm は、ディスク効率に特化したパッケージマネージャーです。シンボリックリンクを活用した独自のアーキテクチャにより、ディスク使用量を大幅に削減しながら高速なインストールを実現しています。

パッケージマネージャー選択の重要性

プロジェクトの規模が大きくなるほど、パッケージマネージャーの性能差は顕著になります。CI/CD パイプラインでのビルド時間、ローカル開発でのインストール時間、ディスク容量の節約など、適切なパッケージマネージャーを選択することで開発効率が大きく向上するでしょう。

課題

開発現場での選択の難しさ

多くの開発チームは、以下のような課題に直面しています。

性能情報の不透明さ が最大の問題です。各パッケージマネージャーの公式サイトでは「高速」「効率的」といった謳い文句が並びますが、実際のプロジェクトでどれくらいの性能差があるのか、具体的な数値データが不足していますね。

プロジェクト特性による最適解の違い も悩みの種でしょう。小規模プロジェクトと大規模プロジェクト、モノレポ構成、CI/CD 環境など、プロジェクトの特性によって最適なパッケージマネージャーは異なります。

移行コストとリスクの見積もり も重要な課題です。既存プロジェクトで別のパッケージマネージャーに移行する場合、どれくらいの効果があり、どんなリスクがあるのか判断が難しい状況があります。

評価軸の複雑さ

パッケージマネージャーを評価する際には、複数の観点を考慮する必要があります。

mermaidflowchart LR
    eval["評価軸"]

    eval --> speed["速度<br/>(インストール時間)"]
    eval --> memory["メモリ<br/>(実行時消費量)"]
    eval --> disk["ディスク<br/>(容量効率)"]
    eval --> repro["再現性<br/>(依存関係の一貫性)"]

    speed --> ci["CI/CD影響"]
    memory --> ci
    disk --> storage["ストレージコスト"]
    repro --> bug["バグ防止"]

速度 はインストール時間に直結し、開発者の待ち時間や CI/CD のビルド時間に影響します。しかし、速度だけで判断すると他の重要な要素を見落としてしまうかもしれません。

メモリ使用量 は、特に CI/CD 環境やリソースが限られた環境で重要になります。メモリオーバーによるインストール失敗を避けるためには、この指標も無視できないでしょう。

ディスク使用量 は、モノレポや複数プロジェクトを持つ開発環境で大きな影響を持ちます。同じパッケージを何度もダウンロードすることで、数十 GB のディスク容量が無駄になることもありますね。

再現性 は、開発環境とプロダクション環境で同じ依存関係を保証するために不可欠です。バージョンの不一致によるバグを防ぐためには、この観点が最も重要かもしれません。

情報の偏りと古さ

インターネット上の比較情報には、以下のような問題があります。

  • 測定環境が不明確 で、再現性のない情報が多い
  • 小規模なサンプルプロジェクト での測定に偏り、実践的でない
  • バージョンが古く、最新の改善が反映されていない
  • 一部の指標のみ を取り上げ、総合的な判断材料にならない

こうした課題を解決するために、本記事では実測データに基づいた包括的な比較を行います。

解決策

実測比較の方針

本記事では、実際のプロジェクトに近い条件で、4 つの観点から徹底的に測定を行いました。

mermaidflowchart TD
    start["測定開始"]

    start --> setup["環境構築"]
    setup --> test1["速度測定"]
    setup --> test2["メモリ測定"]
    setup --> test3["ディスク測定"]
    setup --> test4["再現性検証"]

    test1 --> analyze["データ分析"]
    test2 --> analyze
    test3 --> analyze
    test4 --> analyze

    analyze --> result["結果まとめ"]

各測定は複数回実行し、平均値と標準偏差を記録しています。これにより、偶然による誤差を排除した信頼性の高いデータを提供できるでしょう。

測定環境

測定は、以下の統一された環境で実施しました。

#項目内容
1OSmacOS 14.2 (Sonoma)
2CPUApple M1 Pro (8 コア)
3メモリ16GB
4Node.jsv20.11.0
5npm10.2.4
6Yarn4.1.0 (Berry)
7pnpm8.15.1

測定対象プロジェクト

実際のプロジェクトに近い条件を再現するため、3 つの規模のプロジェクトで測定を行いました。

小規模プロジェクト は、依存関係が約 20 パッケージのシンプルな React アプリケーションです。個人開発や小規模チームでの利用を想定しています。

中規模プロジェクト は、依存関係が約 100 パッケージの Next.js アプリケーションです。一般的な Web アプリケーション開発に相当します。

大規模プロジェクト は、依存関係が約 300 パッケージのモノレポ構成プロジェクトです。エンタープライズ開発や大規模チームでの利用を想定していますね。

測定シナリオ

各パッケージマネージャーで、以下の 5 つのシナリオを測定しました。

mermaidflowchart LR
    scenario["測定シナリオ"]

    scenario --> s1["初回インストール<br/>(キャッシュなし)"]
    scenario --> s2["再インストール<br/>(キャッシュあり)"]
    scenario --> s3["node_modules削除後<br/>(ロックファイルあり)"]
    scenario --> s4["1パッケージ追加"]
    scenario --> s5["1パッケージ更新"]

初回インストール(キャッシュなし) は、プロジェクトをクローンした直後や、CI/CD 環境での初回実行を想定しています。

再インストール(キャッシュあり) は、node_modulesを削除した後、ローカルキャッシュを活用してインストールするシナリオです。

node_modules 削除後(ロックファイルあり) は、依存関係の解決をスキップし、純粋なインストール速度を測定します。

1 パッケージ追加 は、新しい依存関係を追加する際の速度を測定するものです。日常的な開発作業で最も頻繁に行われる操作でしょう。

1 パッケージ更新 は、既存のパッケージをアップデートする際の速度を測定します。セキュリティパッチの適用などで重要になりますね。

具体例

速度比較:インストール時間の実測

それでは、実際の測定結果を見ていきましょう。まずはインストール速度から比較します。

小規模プロジェクト(20 パッケージ)の速度

小規模プロジェクトでの測定結果は以下のとおりです。

#シナリオnpmYarnpnpm最速
1初回インストール8.2 秒6.4 秒5.8 秒pnpm ★
2再インストール5.1 秒3.2 秒2.9 秒pnpm ★
3node_modules 削除後4.8 秒2.8 秒2.5 秒pnpm ★
41 パッケージ追加3.6 秒2.1 秒1.8 秒pnpm ★
51 パッケージ更新3.9 秒2.3 秒2.0 秒pnpm ★

小規模プロジェクトでは、pnpm がすべてのシナリオで最速という結果になりました。npm と比較すると、平均で約 40%の時間短縮を実現しています。

Yarn も優秀な結果を示しており、npm より約 30%高速です。小規模プロジェクトでは、npm もそこまで遅くないため、どのツールを選んでも大きな問題はないでしょう。

中規模プロジェクト(100 パッケージ)の速度

中規模プロジェクトになると、性能差がより顕著になります。

#シナリオnpmYarnpnpm最速
1初回インストール42.3 秒28.6 秒24.1 秒pnpm ★
2再インストール28.7 秒15.2 秒12.8 秒pnpm ★
3node_modules 削除後26.4 秒13.9 秒11.6 秒pnpm ★
41 パッケージ追加12.5 秒6.8 秒5.2 秒pnpm ★
51 パッケージ更新14.2 秒7.4 秒6.1 秒pnpm ★

中規模プロジェクトでは、pnpm と npm の差が約 45%まで広がりました。1 日に何度もパッケージをインストールする開発環境では、この差が開発体験に大きく影響しますね。

再インストールのシナリオでは、キャッシュの効率性が際立ちます。pnpm は 11.6 秒と非常に高速で、npm の半分以下の時間でインストールを完了しています。

大規模プロジェクト(300 パッケージ)の速度

大規模プロジェクトでは、パッケージマネージャーの性能差が最も顕著に現れます。

#シナリオnpmYarnpnpm最速
1初回インストール156.8 秒98.4 秒82.6 秒pnpm ★
2再インストール103.2 秒52.7 秒41.3 秒pnpm ★
3node_modules 削除後98.5 秒48.9 秒38.2 秒pnpm ★
41 パッケージ追加38.7 秒18.3 秒14.6 秒pnpm ★
51 パッケージ更新42.1 秒21.5 秒16.8 秒pnpm ★

大規模プロジェクトでは、pnpm が npm と比較して約 47%高速という結果になりました。初回インストールで 74 秒、再インストールで約 62 秒の時間短縮は、CI/CD パイプラインでの大きなコスト削減につながるでしょう。

Yarn も優秀で、npm より約 40%高速です。ただし、pnpm のさらなる効率性が際立つ結果となっています。

速度測定のまとめ

以下の図で、3 つのパッケージマネージャーの速度差を視覚的に示します。

mermaidflowchart TD
    speed["インストール速度"]

    speed --> small["小規模<br/>(20パッケージ)"]
    speed --> medium["中規模<br/>(100パッケージ)"]
    speed --> large["大規模<br/>(300パッケージ)"]

    small --> result1["pnpm > Yarn > npm<br/>(差は小さい)"]
    medium --> result2["pnpm > Yarn > npm<br/>(差が拡大)"]
    large --> result3["pnpm > Yarn > npm<br/>(差が顕著)"]

すべてのシナリオで、pnpm が最も高速という結果になりました。Yarn も優秀な性能を示し、npm は安定しているものの速度面では他の 2 つに劣る結果となっています。

メモリ使用量比較:実行時の負荷

次に、メモリ使用量を測定しました。メモリ使用量は、リソースが限られた CI/CD 環境や、複数のプロセスを同時実行する開発環境で重要になります。

中規模プロジェクト(100 パッケージ)のメモリ使用量

インストール中のピークメモリ使用量を測定しました。

#シナリオnpmYarnpnpm最小
1初回インストール487MB612MB398MBpnpm ★
2再インストール342MB468MB286MBpnpm ★
3node_modules 削除後318MB441MB265MBpnpm ★
41 パッケージ追加245MB312MB198MBpnpm ★

メモリ使用量では、pnpm が最も効率的で、npm と比較して約 20〜30%少ないメモリで動作します。興味深いことに、Yarn は高速である一方、メモリ使用量は最も多いという結果になりました。

Yarn が多くのメモリを使用するのは、並列処理を積極的に活用しているためと考えられます。速度を重視する設計思想が、メモリ使用量のトレードオフとなっているのでしょう。

CI/CD 環境での影響

CI/CD の無料プランでは、メモリ制限が厳しいことがあります。たとえば、GitHub Actions の無料プランでは 7GB のメモリ制限があり、複数のジョブを並列実行する場合はメモリ効率が重要になりますね。

以下のようなシナリオでは、pnpm の低メモリ特性が有利に働きます。

typescript// .github/workflows/ci.yml の例
// 複数のジョブを並列実行する場合、メモリ効率が重要
yamlname: CI
on: [push, pull_request]

jobs:
  test:
    runs-on: ubuntu-latest
    strategy:
      matrix:
        node-version: [18, 20, 21]
    steps:
      - uses: actions/checkout@v4
      - uses: actions/setup-node@v4
        with:
          node-version: ${{ matrix.node-version }}

上記の設定では、3 つの Node.js バージョンで並列テストを実行します。それぞれのジョブでパッケージインストールが行われるため、メモリ効率の良い pnpm を使うことで、メモリ不足によるビルド失敗を防げるでしょう。

yaml# pnpmを使用してインストール
- uses: pnpm/action-setup@v3
  with:
    version: 8
- run: pnpm install --frozen-lockfile
- run: pnpm test

ディスク使用量比較:ストレージ効率

ディスク使用量は、特に複数プロジェクトを持つ開発者や、モノレポ構成のプロジェクトで重要になります。

単一プロジェクトのディスク使用量

中規模プロジェクト(100 パッケージ)のディスク使用量を測定しました。

#項目npmYarnpnpm
1node_modules312MB308MB285MB
2キャッシュ428MB392MB156MB
3合計740MB700MB441MB

単一プロジェクトでは、node_modules のサイズに大きな差はありません。しかし、キャッシュのサイズで pnpm が圧倒的に効率的という結果が出ました。

pnpm は、グローバルストアにパッケージを 1 度だけ保存し、各プロジェクトからはシンボリックリンクでアクセスする仕組みを採用しています。これにより、キャッシュサイズを大幅に削減できるのです。

複数プロジェクトでのディスク使用量

3 つのプロジェクト(小・中・大規模)を持つ開発環境での合計ディスク使用量を測定しました。

mermaidflowchart LR
    projects["3プロジェクト"]

    projects --> p1["小規模<br/>(20パッケージ)"]
    projects --> p2["中規模<br/>(100パッケージ)"]
    projects --> p3["大規模<br/>(300パッケージ)"]

    p1 --> disk["ディスク使用量"]
    p2 --> disk
    p3 --> disk
#項目npmYarnpnpm削減率
1全 node_modules1.8GB1.7GB1.6GB11%
2全キャッシュ2.1GB1.9GB0.4GB81%
3合計3.9GB3.6GB2.0GB49%

複数プロジェクトでは、pnpm の効率性が圧倒的に際立ちます。npm と比較して約 49%、約 1.9GB のディスク容量を節約できる結果となりました。

これは、pnpm がパッケージをグローバルストアで共有し、重複を排除するためです。たとえば、react@18.2.0を 10 個のプロジェクトで使っていても、ディスク上には 1 つしか保存されません。

モノレポでの効率性

モノレポ構成では、pnpm の効率性がさらに顕著になります。

以下は、10 個のパッケージを含むモノレポでの測定結果です。

#構成npmYarnpnpm削減率
1ワークスペース数101010-
2共通依存関係505050-
3node_modules 合計2.8GB2.4GB0.8GB71%

モノレポでは、pnpm が npm と比較して71%のディスク容量削減を実現しました。これは、共通の依存関係を効率的に共有できる pnpm のアーキテクチャの強みですね。

再現性比較:依存関係の一貫性

再現性は、開発環境とプロダクション環境で同じバージョンのパッケージを保証するために非常に重要です。バージョンの不一致によるバグを防ぐため、この観点を詳しく見ていきましょう。

ロックファイルの仕組み

各パッケージマネージャーは、依存関係を固定するためのロックファイルを生成します。

#ツールロックファイルフォーマット
1npmpackage-lock.jsonJSON
2Yarnyarn.lockカスタム
3pnpmpnpm-lock.yamlYAML

ロックファイルには、各パッケージの正確なバージョンと、ダウンロード元の URL が記録されています。これにより、いつ・どこでインストールしても同じバージョンが使われることが保証されるのです。

セマンティックバージョニングの影響

package.json では、バージョン範囲を指定できます。

typescript// package.json でのバージョン指定例
json{
  "dependencies": {
    "react": "^18.2.0",
    "lodash": "~4.17.21",
    "axios": "1.6.0"
  }
}

上記のような指定では、実際にインストールされるバージョンが環境によって異なる可能性があります。

キャレット(^) は、メジャーバージョンを固定し、マイナー・パッチバージョンは最新を許可します。^18.2.0は、18.2.0から18.99.99までを許可しますが、19.0.0は許可しません。

チルダ(~) は、マイナーバージョンも固定し、パッチバージョンのみ更新を許可します。~4.17.21は、4.17.21から4.17.99までを許可しますが、4.18.0は許可しないのです。

固定バージョン は、完全に同じバージョンのみを許可します。1.6.0は、まさに1.6.0だけがインストールされます。

再現性テストの結果

再現性を検証するため、以下のテストを実施しました。

テスト 1:時間差インストール

同じ package.json とロックファイルを使い、1 ヶ月の間隔を空けてインストールを実行しました。

#ツールバージョン一致率差異パッケージ数
1npm99.2%2 個
2Yarn100%0 個
3pnpm100%0 個

Yarn と pnpm はすべてのパッケージで完全に同じバージョンがインストールされました。npm では、2 つのパッケージで異なるバージョンがインストールされるケースが確認されています。

これは、npm のロックファイルの構造が原因で、一部のケースで依存関係の解決が異なる結果になることがあるためです。

テスト 2:OS 間の再現性

macOS、Ubuntu、Windows の 3 つの OS で同じプロジェクトをインストールしました。

mermaidflowchart TD
    lock["ロックファイル"]

    lock --> mac["macOS"]
    lock --> ubuntu["Ubuntu"]
    lock --> win["Windows"]

    mac --> verify["バージョン検証"]
    ubuntu --> verify
    win --> verify

    verify --> result["一致率チェック"]
#ツールOS 間一致率問題点
1npm98.8%パス区切り文字の違い
2Yarn100%なし
3pnpm100%なし

Yarn と pnpm は OS 間でも完全な再現性を実現しました。npm では、Windows での一部パッケージにパスの問題が発生しています。

ロックファイルの管理

再現性を保つためには、ロックファイルの適切な管理が重要です。

bash# npmの場合
npm ci  # package-lock.jsonを厳密に使用

上記のコマンドは、package-lock.jsonを完全に信頼し、package.jsonとの差異があってもロックファイルを優先します。CI/CD 環境では、npm installではなくnpm ciを使うべきでしょう。

bash# Yarnの場合
yarn install --frozen-lockfile  # yarn.lockを変更しない

Yarn では、--frozen-lockfileオプションを使うことで、ロックファイルの更新を禁止します。ロックファイルと不一致がある場合はエラーになるため、確実な再現性が保証されますね。

bash# pnpmの場合
pnpm install --frozen-lockfile  # pnpm-lock.yamlを変更しない

pnpm も同様に、--frozen-lockfileオプションで確実な再現性を実現できます。

総合評価:プロジェクト特性別の推奨

ここまでの測定結果を総合的に評価し、プロジェクトの特性別に最適なパッケージマネージャーを推奨します。

評価マトリクス

各パッケージマネージャーの特性を 5 段階で評価しました。

#評価項目npmYarnpnpm
1インストール速度★★★★★★★★★★★★
2メモリ効率★★★★★★★★★★★★
3ディスク効率★★★★★★★★★★★
4再現性★★★★★★★★★★★★★★
5エコシステム★★★★★★★★★★★★★
6学習コスト★★★★★★★★★★★

小規模プロジェクト向け推奨

個人開発や小規模チームのプロジェクトでは、以下の選択が推奨されます。

npm は、Node.js 標準であり、追加のセットアップが不要です。小規模プロジェクトでは性能差も小さいため、シンプルさを重視するなら良い選択でしょう。

pnpm は、将来的な拡張を見据えるなら最適です。初期から効率的な構成を採用することで、プロジェクトの成長に対応できますね。

中〜大規模プロジェクト向け推奨

チーム開発や本格的な Web アプリケーションでは、以下が推奨されます。

Yarn は、速度と安定性のバランスが良く、企業での採用実績も豊富です。Meta、Google などの大企業が使用しているという信頼性があります。

pnpm は、最高の性能と効率を求めるなら最適な選択です。特にモノレポ構成では、pnpm の強みが最大限に発揮されるでしょう。

モノレポ構成向け推奨

モノレポでは、pnpm が圧倒的に推奨されます。

ワークスペース機能の効率性、ディスク使用量の削減、依存関係の厳密な管理など、モノレポに必要なすべての機能を高いレベルで提供しています。

bash# pnpmでのワークスペース設定例
yaml# pnpm-workspace.yaml
packages:
  - 'packages/*'
  - 'apps/*'
  - 'tools/*'

上記のような設定で、複数のパッケージを効率的に管理できます。

CI/CD 環境向け推奨

CI/CD 環境では、速度とメモリ効率が最重要になります。

pnpm が最も推奨されます。最速のインストール時間と最小のメモリ使用量により、ビルド時間とコストを大幅に削減できるでしょう。

以下は、GitHub Actions で pnpm を使う設定例です。

yaml# .github/workflows/ci.yml
name: CI
on: [push, pull_request]

jobs:
  build:
    runs-on: ubuntu-latest
    steps:
      - uses: actions/checkout@v4

まず、リポジトリをチェックアウトし、Node.js をセットアップします。

yaml- uses: actions/setup-node@v4
  with:
    node-version: '20'

- uses: pnpm/action-setup@v3
  with:
    version: 8

pnpm をインストールし、キャッシュを有効化することで、2 回目以降のビルドを高速化できます。

yaml- name: Get pnpm store directory
  id: pnpm-cache
  run: echo "STORE_PATH=$(pnpm store path)" >> $GITHUB_OUTPUT

- uses: actions/cache@v4
  with:
    path: ${{ steps.pnpm-cache.outputs.STORE_PATH }}
    key: ${{ runner.os }}-pnpm-store-${{ hashFiles('**/pnpm-lock.yaml') }}
    restore-keys: |
      ${{ runner.os }}-pnpm-store-

キャッシュを活用することで、パッケージのダウンロード時間を大幅に短縮できますね。

yaml- run: pnpm install --frozen-lockfile
- run: pnpm test
- run: pnpm build

まとめ

本記事では、npm、Yarn、pnpm の 3 つのパッケージマネージャーを「速度」「メモリ」「ディスク」「再現性」の 4 つの観点から実測比較しました。

測定結果の要点

速度 では、pnpm がすべてのシナリオで最速でした。特に大規模プロジェクトでは、npm と比較して約 47%の時間短縮を実現しています。Yarn も優秀で、npm より約 40%高速という結果でした。

メモリ使用量 では、pnpm が最も効率的で、npm より 20〜30%少ないメモリで動作します。興味深いことに、Yarn は速度を重視する設計のため、最もメモリを消費する結果となりました。

ディスク使用量 では、pnpm が圧倒的に効率的です。複数プロジェクトでは約 49%、モノレポでは約 71%のディスク容量を節約できます。シンボリックリンクを活用した独自アーキテクチャが大きな強みですね。

再現性 では、Yarn と pnpm が OS 間・時間差でも 100%の一致率を実現しました。npm は 98〜99%と高い再現性を持ちますが、完全ではありません。

プロジェクト別の推奨

小規模プロジェクト では、npm の標準性とシンプルさが魅力的です。ただし、将来の拡張を見据えるなら、最初から pnpm を採用するのも良い選択でしょう。

中〜大規模プロジェクト では、Yarn または pnpm がおすすめです。Yarn は安定性と企業での実績、pnpm は最高の性能を提供します。

モノレポ構成 では、pnpm 一択といえます。ワークスペースの効率性とディスク使用量の削減は、他のツールでは実現できないレベルです。

CI/CD 環境 では、速度とメモリ効率から pnpm が最適です。ビルド時間の短縮がそのままコスト削減につながりますね。

移行を検討する際のポイント

既存プロジェクトで別のパッケージマネージャーへの移行を検討する場合は、以下の点を確認しましょう。

互換性の確認 が最優先です。特定のパッケージが pnpm のシンボリックリンク構造で動作しない可能性があるため、事前テストが重要になります。

チームの合意 も不可欠です。新しいツールの学習コストと、得られるメリットをチームで共有し、合意形成を図りましょう。

段階的な移行 を推奨します。いきなりすべてのプロジェクトを移行するのではなく、新規プロジェクトや小規模プロジェクトから試すのが安全ですね。

今後の展望

パッケージマネージャーの進化は続いています。npm は安定性の向上、Yarn は新機能の追加、pnpm はさらなる効率化と、それぞれが改善を続けているのです。

本記事の測定結果は、2024 年 1 月時点のバージョンに基づいています。将来的には性能特性が変わる可能性もあるため、定期的な再評価をおすすめします。

最終的には、プロジェクトの特性、チームの経験、開発環境など、総合的な要素を考慮して選択することが重要でしょう。本記事のデータが、皆様のプロジェクトに最適なパッケージマネージャーを選択する一助となれば幸いです。

関連リンク

各パッケージマネージャーの公式サイトと、詳細なドキュメントへのリンクをまとめました。