SolidJS フォーム設計の最適解:コントロール vs アンコントロールドの棲み分け
SolidJS でフォームを実装する際、コントロールドコンポーネントとアンコントロールドコンポーネントのどちらを選ぶべきか、迷われた経験はありませんか。React の世界では長年議論されてきたこのテーマですが、SolidJS においても同様に重要な設計判断となります。
本記事では、SolidJS におけるフォーム設計の最適解を探るべく、コントロールドとアンコントロールドの特性を深掘りし、それぞれの適切な使い分けについて詳しく解説していきます。実務で直面する具体的なシナリオを交えながら、あなたのプロジェクトに最適なフォーム設計を見つけていきましょう。
背景
SolidJS のリアクティビティとフォーム
SolidJS は、きめ細かなリアクティビティを持つ JavaScript フレームワークです。仮想 DOM を使わず、シグナルベースのリアクティブシステムによって、効率的な更新を実現しています。このリアクティビティの仕組みは、フォーム設計においても重要な役割を果たすのです。
フォームは、ユーザーとアプリケーションの最も重要な接点の一つですよね。入力された値をどのように管理し、バリデーションをどのタイミングで行い、送信時にどうデータを収集するか。これらの判断が、アプリケーション全体のパフォーマンスとユーザー体験を左右します。
コントロールドとアンコントロールドの概念
フォームコンポーネントには、大きく分けて 2 つのアプローチが存在します。
コントロールドコンポーネントは、入力値を JavaScript の状態として管理します。SolidJS では、シグナルやストアを使って入力値を保持し、常に最新の状態を把握できるようにするのです。ユーザーが文字を入力するたびに、状態が更新され、その変更が即座に UI に反映されます。
一方、アンコントロールドコンポーネントは、DOM 自体に入力値を委ねます。必要なときだけ DOM 参照を使って値を取得するアプローチです。React のuseRefに相当する、SolidJS のrefを活用します。
以下の図で、2 つのアプローチの基本的な違いを確認しましょう。
mermaidflowchart TB
user["ユーザー入力"]
subgraph controlled["コントロールド"]
input1["input要素"]
signal["シグナル(状態)"]
input1 -->|onChange| signal
signal -->|value| input1
end
subgraph uncontrolled["アンコントロールド"]
input2["input要素(DOM)"]
ref["ref参照"]
input2 -.->|必要時のみ| ref
end
user --> controlled
user --> uncontrolled
この図から分かるように、コントロールドでは双方向のデータフローが発生し、アンコントロールドでは必要時のみの参照という違いがあります。
SolidJS の特性がもたらす影響
SolidJS のリアクティビティは、非常に効率的です。シグナルの変更時、依存する部分だけが再計算されるため、無駄な再レンダリングが発生しません。
これは、コントロールドフォームを実装する際の大きな利点となるでしょう。React では、状態更新のたびにコンポーネント全体が再レンダリングされる可能性がありますが、SolidJS ではシグナルに依存する箇所だけが更新されます。つまり、パフォーマンスの懸念が軽減されるのです。
課題
フォーム設計における判断の難しさ
フォーム実装において、開発者は以下のような課題に直面します。
パフォーマンスとのトレードオフが最初の課題です。入力のたびに状態を更新すると、処理コストが発生しますよね。特に大規模なフォームや、複雑なバリデーションロジックを持つ場合、このコストは無視できません。しかし、リアルタイムなフィードバックを提供するには、状態管理が必要になります。
開発体験と保守性も重要な観点でしょう。コントロールドコンポーネントは、状態を一元管理できるため、デバッグやテストが容易です。一方、アンコントロールドは記述がシンプルですが、値の取得タイミングが限定されるため、複雑なロジックには向きません。
ユーザー体験の要件も考慮すべきポイントです。リアルタイムバリデーション、入力値の即時変換(例:全角 → 半角)、条件付きフィールドの表示など、インタラクティブな機能を実装するには、状態管理が不可欠となります。
以下の図で、フォーム設計における主な課題を整理します。
mermaidflowchart LR
form["フォーム設計"]
form --> perf["パフォーマンス<br/>コスト"]
form --> dx["開発体験<br/>保守性"]
form --> ux["ユーザー体験<br/>要件"]
perf --> decision["設計判断"]
dx --> decision
ux --> decision
decision --> controlled_choice["コントロールド<br/>選択"]
decision --> uncontrolled_choice["アンコントロールド<br/>選択"]
コントロールドの課題
コントロールドコンポーネントでは、すべての入力フィールドに対してシグナルを用意する必要があります。フォームが大規模になると、状態管理のコードが増え、初期化処理も複雑化するでしょう。
また、バリデーションロジックをどこに配置するかも悩ましい問題です。入力時、フォーカス喪失時、送信時など、複数のタイミングでバリデーションを行う場合、処理の重複や整合性の問題が発生しやすくなります。
アンコントロールドの課題
アンコントロールドコンポーネントは、シンプルな実装が魅力ですが、リアルタイム性が求められる機能との相性が良くありません。
例えば、入力値に応じて他のフィールドを動的に変更したい場合、DOM 参照だけでは実現が困難です。また、入力値のフォーマット変換やマスク処理など、ユーザーの入力を即座に加工する必要がある場合も、コントロールドアプローチが必要となるでしょう。
選択基準の不明確さ
最大の課題は、どちらを選ぶべきかの明確な基準がないことかもしれません。プロジェクトの要件、チームの方針、パフォーマンス要求など、様々な要因を総合的に判断する必要があります。
間違った選択をすると、後からの変更コストが大きくなってしまいますよね。そのため、事前に適切な設計判断を下すことが重要なのです。
解決策
コントロールドコンポーネントの実装パターン
コントロールドコンポーネントは、SolidJS のシグナルを活用して入力値を管理します。基本的なパターンを見ていきましょう。
シグナルによる状態管理
最もシンプルなコントロールドフォームの実装です。各入力フィールドにシグナルを割り当てます。
typescriptimport { createSignal } from 'solid-js';
function ControlledForm() {
// 各フィールドのシグナルを定義
const [name, setName] = createSignal('');
const [email, setEmail] = createSignal('');
return (
<form>
<input
type='text'
value={name()}
onInput={(e) => setName(e.currentTarget.value)}
/>
</form>
);
}
上記のコードでは、value属性にシグナルの値を設定し、onInputイベントで状態を更新しています。この双方向バインディングにより、常に最新の入力値を把握できるのです。
ストアによる複雑な状態管理
フォームが大規模になると、複数のシグナルを個別に管理するのは煩雑になりますよね。そこで、SolidJS のストアを活用すると効果的です。
typescriptimport { createStore } from 'solid-js/store';
function ControlledFormWithStore() {
// フォーム全体をストアで管理
const [formData, setFormData] = createStore({
name: '',
email: '',
age: 0,
agreement: false,
});
return <form>{/* フィールド定義 */}</form>;
}
ストアを使うことで、関連するデータをオブジェクトとしてまとめて管理できます。後述する実装例で詳しく見ていきましょう。
リアルタイムバリデーション
コントロールドの最大の利点は、入力値の変化を即座に検知できることです。これを活用してリアルタイムバリデーションを実装します。
typescriptimport { createSignal, createMemo } from 'solid-js';
function EmailField() {
const [email, setEmail] = createSignal('');
// メールアドレスの妥当性を自動計算
const emailError = createMemo(() => {
const value = email();
if (!value) return '';
return /^[^\s@]+@[^\s@]+\.[^\s@]+$/.test(value)
? ''
: 'メールアドレスの形式が正しくありません';
});
return (
<div>
<input
type='email'
value={email()}
onInput={(e) => setEmail(e.currentTarget.value)}
/>
{emailError() && (
<span class='error'>{emailError()}</span>
)}
</div>
);
}
createMemoを使うことで、入力値が変化したときだけバリデーションが実行されます。効率的かつリアクティブな実装ですね。
アンコントロールドコンポーネントの実装パターン
アンコントロールドコンポーネントは、DOM に値の管理を委ねるシンプルなアプローチです。
ref による DOM 参照
SolidJS では、refを使って DOM 要素への参照を取得できます。
typescriptfunction UncontrolledForm() {
let nameRef: HTMLInputElement | undefined;
let emailRef: HTMLInputElement | undefined;
const handleSubmit = (e: Event) => {
e.preventDefault();
// 送信時にDOMから値を取得
const formData = {
name: nameRef?.value || '',
email: emailRef?.value || '',
};
console.log(formData);
};
return (
<form onSubmit={handleSubmit}>
<input type='text' ref={nameRef} />
<input type='email' ref={emailRef} />
<button type='submit'>送信</button>
</form>
);
}
このコードでは、フォーム送信時のみ値を取得しています。シグナルを使わないため、記述がシンプルですよね。
FormData API の活用
より簡潔な実装として、FormData API を活用する方法もあります。
typescriptfunction UncontrolledFormWithFormData() {
const handleSubmit = (e: Event) => {
e.preventDefault();
const form = e.currentTarget as HTMLFormElement;
// FormData APIで一括取得
const formData = new FormData(form);
const data = Object.fromEntries(formData);
console.log(data);
};
return (
<form onSubmit={handleSubmit}>
<input type='text' name='name' />
<input type='email' name='email' />
<button type='submit'>送信</button>
</form>
);
}
name属性を設定しておくだけで、FormData API が自動的に値を収集してくれます。非常に便利ですね。
ハイブリッドアプローチ
実際のプロジェクトでは、両方のアプローチを組み合わせることが最適解となる場合が多いでしょう。
重要なフィールドや、リアルタイムなフィードバックが必要なフィールドはコントロールドに、シンプルな入力フィールドはアンコントロールドに。このように使い分けることで、パフォーマンスと開発効率のバランスを取れます。
以下の図で、ハイブリッドアプローチの概念を示します。
mermaidflowchart TD
form_fields["フォームフィールド"]
form_fields --> critical["重要度・要件の判定"]
critical -->|リアルタイム要| controlled_group["コントロールド<br/>グループ"]
critical -->|シンプル| uncontrolled_group["アンコントロールド<br/>グループ"]
controlled_group --> validation["リアルタイム<br/>バリデーション"]
controlled_group --> conditional["条件付き<br/>表示制御"]
controlled_group --> format["入力値<br/>フォーマット"]
uncontrolled_group --> simple_input["シンプルな<br/>テキスト入力"]
uncontrolled_group --> optional_field["任意項目"]
validation --> submit["フォーム送信"]
conditional --> submit
format --> submit
simple_input --> submit
optional_field --> submit
この図から分かるように、フィールドの特性に応じて適切なアプローチを選択し、最終的に統合して送信処理を行います。
使い分けの判断基準
どちらのアプローチを選ぶべきか、具体的な判断基準を表にまとめました。
| # | 要件 | コントロールド | アンコントロールド |
|---|---|---|---|
| 1 | リアルタイムバリデーション | ★★★ | ☆☆☆ |
| 2 | 入力値の即時変換 | ★★★ | ☆☆☆ |
| 3 | 条件付きフィールド表示 | ★★★ | ☆☆☆ |
| 4 | 複数フィールド間の連携 | ★★★ | ★☆☆ |
| 5 | シンプルな送信のみ | ★☆☆ | ★★★ |
| 6 | パフォーマンス重視(大量入力) | ★☆☆ | ★★★ |
| 7 | 実装のシンプルさ | ★☆☆ | ★★★ |
| 8 | テスト容易性 | ★★★ | ★★☆ |
| 9 | デバッグ容易性 | ★★★ | ★☆☆ |
この表を参考に、プロジェクトの要件に合わせて選択していきましょう。
具体例
ここからは、実際のユースケースを通して、具体的な実装方法を見ていきます。
ケース 1:会員登録フォーム(コントロールド)
会員登録フォームでは、リアルタイムバリデーションとパスワード確認が必要です。コントロールドアプローチが最適でしょう。
ストアの定義とバリデーション
まず、フォームデータとエラー状態をストアで管理します。
typescriptimport { createStore } from 'solid-js/store';
import { createMemo } from 'solid-js';
type RegisterFormData = {
username: string;
email: string;
password: string;
passwordConfirm: string;
};
type FormErrors = {
username: string;
email: string;
password: string;
passwordConfirm: string;
};
function RegisterForm() {
// フォームデータのストア
const [formData, setFormData] =
createStore<RegisterFormData>({
username: '',
email: '',
password: '',
passwordConfirm: '',
});
// エラー状態のストア
const [errors, setErrors] = createStore<FormErrors>({
username: '',
email: '',
password: '',
passwordConfirm: '',
});
// 続く...
}
ストアを使うことで、フォームデータとエラーを構造的に管理できますね。
バリデーション関数の実装
各フィールドのバリデーションロジックを関数として定義します。
typescript// ユーザー名のバリデーション
const validateUsername = (value: string): string => {
if (!value) return 'ユーザー名を入力してください';
if (value.length < 3)
return 'ユーザー名は3文字以上で入力してください';
if (!/^[a-zA-Z0-9_]+$/.test(value)) {
return 'ユーザー名は半角英数字とアンダースコアのみ使用できます';
}
return '';
};
// メールアドレスのバリデーション
const validateEmail = (value: string): string => {
if (!value) return 'メールアドレスを入力してください';
const emailRegex = /^[^\s@]+@[^\s@]+\.[^\s@]+$/;
if (!emailRegex.test(value)) {
return 'メールアドレスの形式が正しくありません';
}
return '';
};
// パスワードのバリデーション
const validatePassword = (value: string): string => {
if (!value) return 'パスワードを入力してください';
if (value.length < 8)
return 'パスワードは8文字以上で入力してください';
if (!/(?=.*[a-z])(?=.*[A-Z])(?=.*\d)/.test(value)) {
return 'パスワードは大文字、小文字、数字を含む必要があります';
}
return '';
};
関数として分離することで、テストやメンテナンスが容易になります。
入力ハンドラとリアルタイムバリデーション
入力時にバリデーションを実行するハンドラを実装しましょう。
typescript// 汎用的な入力ハンドラ
const handleInput = (
field: keyof RegisterFormData,
value: string,
validator: (value: string) => string
) => {
// フォームデータを更新
setFormData(field, value);
// バリデーションを実行してエラーを更新
const error = validator(value);
setErrors(field, error);
};
// パスワード確認の特別な処理
const handlePasswordConfirmInput = (value: string) => {
setFormData('passwordConfirm', value);
// パスワードと一致するか確認
const error =
value !== formData.password
? 'パスワードが一致しません'
: '';
setErrors('passwordConfirm', error);
};
このハンドラにより、入力と同時にバリデーションが実行され、即座にフィードバックが提供されます。
フォーム全体の妥当性チェック
送信前に、フォーム全体が妥当かどうかをチェックする機能も追加しましょう。
typescript// フォームが妥当かどうかを判定
const isFormValid = createMemo(() => {
return (
!errors.username &&
!errors.email &&
!errors.password &&
!errors.passwordConfirm &&
formData.username !== '' &&
formData.email !== '' &&
formData.password !== '' &&
formData.passwordConfirm !== ''
);
});
// 送信処理
const handleSubmit = async (e: Event) => {
e.preventDefault();
if (!isFormValid()) {
alert('入力内容を確認してください');
return;
}
try {
// API呼び出しなどの処理
console.log('登録データ:', formData);
// await registerUser(formData);
} catch (error) {
console.error('登録エラー:', error);
}
};
createMemoを使うことで、フォームの状態が変わったときだけ妥当性が再計算されます。効率的ですね。
JSX の実装
最後に、UI を構築します。
typescriptreturn (
<form onSubmit={handleSubmit}>
<div>
<label>ユーザー名</label>
<input
type='text'
value={formData.username}
onInput={(e) =>
handleInput(
'username',
e.currentTarget.value,
validateUsername
)
}
/>
{errors.username && (
<span class='error'>{errors.username}</span>
)}
</div>
<div>
<label>メールアドレス</label>
<input
type='email'
value={formData.email}
onInput={(e) =>
handleInput(
'email',
e.currentTarget.value,
validateEmail
)
}
/>
{errors.email && (
<span class='error'>{errors.email}</span>
)}
</div>
{/* パスワードフィールドとパスワード確認フィールドも同様 */}
<button type='submit' disabled={!isFormValid()}>
登録する
</button>
</form>
);
このように、コントロールドアプローチでは、リアルタイムなフィードバックと厳密な制御が可能になります。
ケース 2:お問い合わせフォーム(アンコントロールド)
シンプルなお問い合わせフォームでは、アンコントロールドアプローチが適しているでしょう。送信時のみバリデーションを行う実装です。
FormData を活用したシンプルな実装
まず、基本的な構造を見ていきます。
typescriptimport { createSignal } from 'solid-js';
function ContactForm() {
const [isSubmitting, setIsSubmitting] =
createSignal(false);
const [submitError, setSubmitError] = createSignal('');
const [submitSuccess, setSubmitSuccess] =
createSignal(false);
return <form>{/* フィールド定義 */}</form>;
}
状態として持つのは、送信中フラグとエラーメッセージ、成功フラグのみです。シンプルですね。
送信時のバリデーション
送信ボタンがクリックされたときに、初めてバリデーションを実行します。
typescriptconst handleSubmit = async (e: Event) => {
e.preventDefault();
setSubmitError('');
setSubmitSuccess(false);
const form = e.currentTarget as HTMLFormElement;
const formData = new FormData(form);
// フォームデータから値を取得
const name = formData.get('name') as string;
const email = formData.get('email') as string;
const message = formData.get('message') as string;
// バリデーション
if (!name || !email || !message) {
setSubmitError('すべての項目を入力してください');
return;
}
if (!/^[^\s@]+@[^\s@]+\.[^\s@]+$/.test(email)) {
setSubmitError(
'メールアドレスの形式が正しくありません'
);
return;
}
// 続く...
};
送信時にまとめてチェックすることで、実装がシンプルになっています。
API 送信処理
バリデーションが通過したら、API に送信します。
typescript// バリデーション通過後の処理
try {
setIsSubmitting(true);
// APIへ送信
const response = await fetch('/api/contact', {
method: 'POST',
headers: { 'Content-Type': 'application/json' },
body: JSON.stringify({ name, email, message }),
});
if (!response.ok) {
throw new Error('送信に失敗しました');
}
setSubmitSuccess(true);
form.reset(); // フォームをリセット
} catch (error) {
setSubmitError(
'エラーが発生しました。もう一度お試しください'
);
} finally {
setIsSubmitting(false);
}
エラーハンドリングも含めて、送信処理を実装しています。
JSX の実装
フォームの UI を構築しましょう。
typescriptreturn (
<form onSubmit={handleSubmit}>
<div>
<label for='name'>お名前</label>
<input type='text' id='name' name='name' required />
</div>
<div>
<label for='email'>メールアドレス</label>
<input
type='email'
id='email'
name='email'
required
/>
</div>
<div>
<label for='message'>お問い合わせ内容</label>
<textarea
id='message'
name='message'
rows={5}
required
/>
</div>
{submitError() && (
<div class='error'>{submitError()}</div>
)}
{submitSuccess() && (
<div class='success'>送信が完了しました</div>
)}
<button type='submit' disabled={isSubmitting()}>
{isSubmitting() ? '送信中...' : '送信する'}
</button>
</form>
);
name属性を設定しておくだけで、FormData API が自動的に値を収集してくれます。非常に簡潔な実装になりましたね。
ケース 3:動的フォーム(ハイブリッド)
最後に、ハイブリッドアプローチの例を見ていきましょう。ユーザーの入力に応じて、動的にフィールドが変化するフォームです。
シナリオ設定
アンケートフォームで、「その他」を選択したときだけ、自由記述欄が表示される実装を考えます。選択肢はアンコントロールド、自由記述欄はコントロールドで管理するのが効率的でしょう。
mermaidsequenceDiagram
participant User as ユーザー
participant Select as 選択肢(アンコントロールド)
participant Signal as シグナル
participant TextArea as 自由記述欄(コントロールド)
User->>Select: "その他"を選択
Select->>Signal: onChange イベント
Signal->>TextArea: 表示状態を更新
TextArea-->>User: 入力欄を表示
User->>TextArea: テキスト入力
TextArea->>Signal: リアルタイム更新
上記のシーケンス図で、ユーザーの操作から UI の変化までの流れを示しました。
実装コード
選択肢の変更を検知して、条件付きで自由記述欄を表示します。
typescriptimport { createSignal, Show } from 'solid-js';
function SurveyForm() {
// "その他"が選択されているかを管理
const [isOtherSelected, setIsOtherSelected] =
createSignal(false);
// 自由記述の内容を管理(コントロールド)
const [otherText, setOtherText] = createSignal('');
const handleCategoryChange = (e: Event) => {
const value = (e.currentTarget as HTMLSelectElement)
.value;
setIsOtherSelected(value === 'other');
// "その他"以外が選択されたら自由記述をクリア
if (value !== 'other') {
setOtherText('');
}
};
return <form>{/* フィールド定義 */}</form>;
}
選択肢の変更イベントだけをシグナルで管理し、他のフィールドはアンコントロールドのままにしています。
条件付き表示の実装
Showコンポーネントを使って、条件付きでフィールドを表示しましょう。
typescriptreturn (
<form onSubmit={handleSubmit}>
<div>
<label>カテゴリを選択してください</label>
<select
name='category'
onChange={handleCategoryChange}
>
<option value=''>選択してください</option>
<option value='product'>製品について</option>
<option value='service'>サービスについて</option>
<option value='support'>サポートについて</option>
<option value='other'>その他</option>
</select>
</div>
<Show when={isOtherSelected()}>
<div>
<label>詳細をご記入ください</label>
<textarea
value={otherText()}
onInput={(e) =>
setOtherText(e.currentTarget.value)
}
placeholder='その他の内容を入力してください'
rows={3}
/>
</div>
</Show>
<div>
<label>お名前</label>
<input type='text' name='name' required />
</div>
<button type='submit'>送信</button>
</form>
);
必要な部分だけをコントロールドにすることで、パフォーマンスと機能性のバランスを取っています。
送信処理の統合
アンコントロールドとコントロールドの値を統合して送信する処理です。
typescriptconst handleSubmit = (e: Event) => {
e.preventDefault();
const form = e.currentTarget as HTMLFormElement;
const formData = new FormData(form);
// アンコントロールドの値を取得
const category = formData.get('category') as string;
const name = formData.get('name') as string;
// コントロールドの値を追加
const submitData = {
category,
name,
otherText: isOtherSelected() ? otherText() : '',
};
console.log('送信データ:', submitData);
// API送信処理など
};
このように、両方のアプローチの値を統合して、一つのデータオブジェクトとして扱えます。
パフォーマンス比較
実際のパフォーマンスについても触れておきましょう。SolidJS のリアクティビティは非常に効率的なため、コントロールドフォームでもパフォーマンスの懸念は少ないです。
ただし、以下のような状況では、アンコントロールドの方が有利になる場合があります。
| # | シナリオ | コントロールド | アンコントロールド | 推奨 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | フィールド数が 50 以上 | シグナル管理コスト大 | DOM 管理のみ | アンコントロールド |
| 2 | 入力頻度が非常に高い | 更新処理の積み重ね | イベント処理のみ | アンコントロールド |
| 3 | バリデーションが重い | 入力ごとに実行 | 送信時のみ | アンコントロールド |
| 4 | リアルタイム連携必須 | 即座に反映可能 | 実装困難 | コントロールド |
実際のプロジェクトでは、これらの要因を総合的に判断して、最適なアプローチを選択していきましょう。
まとめ
SolidJS におけるフォーム設計では、コントロールドとアンコントロールドの特性を理解し、適切に使い分けることが重要です。
コントロールドアプローチは、シグナルやストアを使って入力値を状態として管理します。リアルタイムバリデーション、入力値の即時変換、条件付きフィールド表示など、インタラクティブな機能を実装する際に最適でしょう。デバッグやテストもしやすく、複雑なロジックにも対応できます。
一方、アンコントロールドアプローチは、DOM に値の管理を委ねるシンプルな実装です。送信時のみ値を取得する単純なフォームや、パフォーマンスを最優先したい場合に適しています。FormData API と組み合わせることで、非常に簡潔なコードになりますね。
実務では、ハイブリッドアプローチを採用することで、両方の利点を活かせます。重要なフィールドや動的な振る舞いが必要な部分はコントロールドに、シンプルな入力フィールドはアンコントロールドに。このように使い分けることで、パフォーマンスと機能性、開発効率のバランスを最適化できるでしょう。
SolidJS のきめ細かなリアクティビティは、コントロールドフォームのパフォーマンス懸念を大幅に軽減してくれます。そのため、他のフレームワークよりも積極的にコントロールドアプローチを採用できるのが、SolidJS の大きな魅力と言えますね。
あなたのプロジェクトに最適なフォーム設計を見つけて、ユーザーにとって使いやすく、開発者にとってメンテナンスしやすいアプリケーションを構築していきましょう。
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