NotebookLM の強みと弱み:従来ノートアプリとの本質的な違い
情報管理ツールの選択肢が増え続ける中、Google が提供する NotebookLM が注目を集めています。一見すると Notion や Evernote のような従来のノートアプリと同じように思えるかもしれません。
しかし、実際に使ってみると、NotebookLM は根本的に異なるアプローチで情報を扱うツールであることがわかります。この違いを理解することで、あなたのワークフローに最適なツールを選べるようになるでしょう。
本記事では、NotebookLM の本質的な特徴を掘り下げ、従来のノートアプリとの違いを明確にしていきます。
背景
ノートアプリの進化
ノートアプリは長年、デジタル情報管理の中心的なツールとして進化してきました。初期のテキストエディタから始まり、Evernote のようなクラウド同期機能を持つアプリ、そして Notion のようなデータベース機能を備えた多機能ツールへと発展してきたのです。
これらのツールに共通するのは、ユーザーが能動的に情報を入力・整理するという点でしょう。フォルダやタグで分類し、リンクで関連付け、テンプレートで構造化する。このプロセスには時間と労力がかかります。
AI 時代の新しいアプローチ
2023 年、Google は NotebookLM(当初は Project Tailwind)を発表しました。これは Gemini(旧 PaLM 2)をベースにした AI 搭載ノートアプリです。
従来のノートアプリとの最大の違いは、ソース(情報源)を中心とした設計思想にあります。ユーザーは PDF、Google ドキュメント、Web ページなどをアップロードし、AI がそれらを理解して質問に答えたり、要約を生成したりするのです。
以下の図は、NotebookLM の基本的な動作フローを示しています。
mermaidflowchart TB
user["ユーザー"] -->|資料アップロード| nlm["NotebookLM"]
nlm -->|解析| ai["Gemini AI"]
ai -->|理解・インデックス化| knowledge[("ナレッジベース")]
user -->|質問| nlm
knowledge -->|参照| ai
ai -->|回答生成| nlm
nlm -->|回答・要約| user
図で理解できる要点:
- ユーザーがアップロードした資料が AI によって解析される
- AI は資料を理解してナレッジベースを構築する
- ユーザーの質問に対して、ナレッジベースを参照して回答を生成する
従来ノートアプリとの位置づけ
NotebookLM は従来のノートアプリを置き換えるものではなく、別のカテゴリのツールとして捉えるべきでしょう。
以下の表は、主要なノートアプリと NotebookLM の基本的な特徴を比較したものです。
| # | ツール名 | 主な用途 | AI 機能 | データベース機能 | 料金 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | Notion | 情報整理・プロジェクト管理 | 一部あり | ★★★ | 無料〜有料 |
| 2 | Evernote | メモ・ウェブクリップ | 限定的 | ★☆☆ | 無料〜有料 |
| 3 | OneNote | フリーフォームノート | なし | ★☆☆ | 無料 |
| 4 | Obsidian | ナレッジグラフ・執筆 | プラグインで拡張 | ★★☆ | 無料〜有料 |
| 5 | NotebookLM | AI 分析・質疑応答 | ★★★ | ★☆☆ | 無料 |
この表からわかるように、NotebookLM は AI 機能に特化している一方で、データベース機能は最小限です。
課題
従来ノートアプリの限界
従来のノートアプリには、いくつかの本質的な課題があります。
情報の蓄積と活用のギャップ
多くの人が経験する問題として、「情報は保存したが、後で見返さない」というものがあります。Evernote に数百のメモを保存しても、必要な時に見つけられなければ意味がありません。
検索機能はありますが、適切なキーワードを思い出せなければ使えないのです。さらに、保存した PDF や長文記事の内容を思い出すには、全文を読み直す必要があるでしょう。
整理の労力
Notion のようなツールは強力ですが、その分整理に時間がかかります。データベースを設計し、プロパティを定義し、リレーションを設定する。この作業自体が目的になってしまうこともあるのではないでしょうか。
複数資料の横断的理解
論文やレポートを書く際、複数の資料を参照する必要があります。しかし、従来のノートアプリでは、それぞれの資料を個別に開いて読むしかありません。
資料 A の第 3 章と資料 B の第 5 章の関連性を見つけるには、人間が両方を読んで頭の中で統合する必要があるのです。
以下の図は、従来のノートアプリにおける情報管理の課題を示しています。
mermaidflowchart LR
input["大量の情報"] -->|保存| storage[("ノートアプリ")]
storage -->|探す| search["検索"]
search -->|キーワード必要| find["?見つからない"]
storage -->|読み直す| read["全文確認"]
read -->|時間がかかる| burden["負担"]
storage -->|整理| organize["フォルダ・タグ付け"]
organize -->|手作業| burden
図で理解できる要点:
- 情報は保存されるが、見つけにくい
- 検索には適切なキーワードが必要
- 整理や確認に多くの時間がかかる
NotebookLM が解決を試みる課題
NotebookLM は、これらの課題に対して異なるアプローチを提案します。それは、AI が資料を理解し、ユーザーの質問に答えるというものです。
キーワード検索ではなく自然言語での質問、個別の資料ではなく複数ソースを横断した回答、手作業の整理ではなく自動的な要約。これらが NotebookLM の目指す方向性でしょう。
解決策
NotebookLM のコアコンセプト
NotebookLM は、従来のノートアプリとは異なる 3 つのコアコンセプトで設計されています。
ソースファースト設計
NotebookLM では、すべてが**ソース(情報源)**から始まります。ノートブック(プロジェクト単位の入れ物)を作成したら、まず資料をアップロードするのです。
対応しているソース形式は以下の通りです。
| # | ソース形式 | 説明 | 最大サイズ |
|---|---|---|---|
| 1 | Google ドキュメント | Google Docs ファイル | 制限なし(Docs の制限に準拠) |
| 2 | PDF ファイル | 500,000 ワード相当 | |
| 3 | テキストファイル | .txt ファイル | 500,000 ワード相当 |
| 4 | Markdown | .md ファイル | 500,000 ワード相当 |
| 5 | Web URL | ウェブページ | コンテンツによる |
| 6 | YouTube 動画 | 動画の文字起こし | 動画の長さによる |
| 7 | 音声ファイル | .mp3、.wav など | 音声の長さによる |
これらのソースをアップロードすると、Gemini AI が内容を解析して理解します。
質疑応答中心のインタラクション
従来のノートアプリでは、ユーザーが自分でノートを書きます。NotebookLM では、AI に質問して答えを得るという形が中心です。
たとえば、5 本の論文をアップロードして「これらの論文に共通する結論は何ですか?」と質問できます。AI は 5 本すべてを参照して、統合的な回答を生成してくれるのです。
引用と信頼性
NotebookLM の重要な特徴は、回答に必ず引用元を示すことです。AI が生成した回答の各部分について、どのソースのどの部分を参照したかが明示されます。
これにより、ハルシネーション(AI の誤った生成)のリスクを軽減し、回答の信頼性を確認できるようになっているのです。
以下の図は、NotebookLM における質疑応答のプロセスを示しています。
mermaidsequenceDiagram
participant U as ユーザー
participant N as NotebookLM
participant A as Gemini AI
participant S as ソース群
U->>N: 質問を入力
N->>A: 質問を送信
A->>S: 関連情報を検索
S-->>A: 該当箇所を返す
A->>A: 回答を生成
A-->>N: 回答+引用情報
N-->>U: 回答を表示(引用付き)
U->>N: 引用元をクリック
N-->>U: ソースの該当箇所を表示
図で理解できる要点:
- ユーザーの質問はすべてのソースを横断して検索される
- AI は関連する箇所を見つけて統合的な回答を生成する
- 回答には必ず引用元が付き、確認できる
主要機能
NotebookLM の主要機能を具体的に見ていきましょう。
ソース要約
各ソースをアップロードすると、AI が自動的に要約を生成します。長大な PDF でも、数秒で主要なポイントを把握できるのです。
要約の種類は以下の通りです。
| # | 要約タイプ | 内容 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 1 | 全体要約 | ソース全体の概要 | 資料の全体像把握 |
| 2 | キートピック | 主要なトピックの抽出 | 重要ポイントの確認 |
| 3 | セクション要約 | 章ごとの要約 | 部分的な理解 |
ノート生成
質疑応答で得た回答は、ノートとして保存できます。従来のノートアプリと違うのは、ノートが AI との対話から生成される点でしょう。
自分で一から書くのではなく、AI に質問して得た答えをベースに、必要に応じて編集していくのです。
Audio Overview
NotebookLM の最も革新的な機能の一つが、Audio Overview(音声概要)です。これは、アップロードしたソース群を基に、2 人のホストによるポッドキャスト風の音声コンテンツを自動生成する機能になります。
以下の特徴があります。
- 約 5〜10 分の音声コンテンツ
- 2 人の AI ホストが対話形式で内容を解説
- 自然な会話調で、専門用語も平易に説明
- MP3 形式でダウンロード可能
移動中や作業中に「聴く」ことで、資料の内容を効率的に理解できるのです。
具体例
使用シナリオ 1:学術研究
大学院生の田中さんは、修士論文を執筆中です。関連する論文が 20 本あり、それぞれを読んで理解するだけで数週間かかります。
従来のアプローチ
従来の方法では、以下のような作業が必要でした。
- 各論文を個別に読む
- 重要な箇所をハイライトまたはメモ
- Notion や Evernote にメモを転記
- 論文間の関連性を自分で見つける
- 文献レビューを執筆
このプロセスには多大な時間がかかります。
NotebookLM を使った場合
NotebookLM を使うと、以下のようなワークフローになるでしょう。
ステップ 1:ソースのアップロード
まず、20 本の論文 PDF をアップロードします。
typescript// NotebookLM のインターフェースは Web ベースですが、
// 概念的には以下のような処理が行われています
interface Source {
id: string;
type: 'pdf' | 'gdoc' | 'url';
title: string;
content: string;
uploadedAt: Date;
}
interface Notebook {
id: string;
name: string;
sources: Source[];
}
上記のコードは、NotebookLM の内部データ構造を TypeScript で表現したものです。実際にはユーザーが直接コードを書くわけではありません。
ステップ 2:横断的な質問
アップロード後、以下のような質問を AI に投げかけます。
markdownQ1: これらの論文に共通する研究手法は何ですか?
Q2: 各論文の主要な発見を比較してください
Q3: この分野における今後の研究課題として、
論文で言及されているものをリストアップしてください
AI は 20 本すべてを参照して、統合的な回答を生成してくれます。これにより、数週間かかっていた作業が数時間に短縮されるのです。
ステップ 3:文献レビューの下書き生成
さらに、以下のような質問も可能です。
markdownQ: これらの論文を基に、文献レビューの構成案を提案してください。
主要なテーマごとにグループ化し、
それぞれのテーマで何が議論されているかを整理してください
AI が提案した構成案を基に、自分で肉付けしていけば、文献レビューの執筆がスムーズに進みます。
以下の図は、NotebookLM を使った学術研究のワークフローを示しています。
mermaidflowchart TD
papers["20本の論文PDF"] -->|アップロード| notebook["NotebookLM<br/>ノートブック"]
notebook -->|AI解析| analyzed["解析済み<br/>ナレッジベース"]
analyzed -->|質問1| q1["共通する研究手法は?"]
analyzed -->|質問2| q2["主要な発見の比較は?"]
analyzed -->|質問3| q3["今後の研究課題は?"]
q1 --> answer1["回答1<br/>(引用付き)"]
q2 --> answer2["回答2<br/>(引用付き)"]
q3 --> answer3["回答3<br/>(引用付き)"]
answer1 --> review["文献レビュー<br/>下書き"]
answer2 --> review
answer3 --> review
review --> final["最終的な<br/>文献レビュー"]
図で理解できる要点:
- 複数の論文を一度にアップロードして解析
- 横断的な質問で統合的な回答を得る
- 回答を基に文献レビューを効率的に作成
使用シナリオ 2:ビジネスリサーチ
マーケティング担当の佐藤さんは、新規事業の市場調査を担当しています。競合分析レポート、業界レポート、顧客インタビューの文字起こしなど、多様な資料があるのです。
情報の統合
従来なら、これらの資料を個別に読んで Excel にまとめる必要がありました。NotebookLM を使えば、以下のような質問で情報を統合できます。
markdownQ1: 競合他社の強みと弱みを表形式でまとめてください
Q2: 顧客インタビューから抽出される主要なペインポイントは何ですか?
Q3: 業界レポートで言及されている市場トレンドと、
顧客インタビューで語られたニーズの間に、
どのような関連性がありますか?
最後の質問は特に重要です。異なる種類のソース(業界レポートと顧客インタビュー)を横断して、関連性を見つけることができるのです。
Audio Overview で共有
調査結果をチームで共有する際、Audio Overview が便利でしょう。すべての資料を基にした 8 分間のポッドキャスト風音声を生成し、チームメンバーに共有すれば、誰でも移動中に概要を把握できます。
以下のようなワークフローが考えられます。
markdown1. 調査資料をすべて NotebookLM にアップロード
2. Audio Overview を生成
3. 生成された音声を Slack やメールで共有
4. チームメンバーは通勤中に聴く
5. ミーティングで詳細を議論
これにより、事前の情報共有が効率化され、ミーティングの質が向上するでしょう。
使用シナリオ 3:学習と知識習得
プログラミングを学習中の鈴木さんは、TypeScript に関する複数のチュートリアル記事や公式ドキュメントを集めました。
学習の効率化
以下のような質問で、学習を効率化できます。
markdownQ1: これらの資料で共通して推奨されているベストプラクティスは?
Q2: 型システムについて、初心者が理解すべき順序を提案してください
Q3: 実際のコード例を挙げて、
ジェネリクスの使い方を説明してください
AI は複数の資料から情報を統合し、体系的な説明を提供してくれます。
カスタマイズされた学習パス
さらに、以下のような質問も可能です。
markdownQ: React の経験はあるが TypeScript は初めてという前提で、
これらの資料を基に 1 週間の学習計画を立ててください
AI は資料の内容を考慮しつつ、ユーザーの状況に合わせた学習計画を提案してくれるのです。
NotebookLM の強み
ここまでの内容を踏まえて、NotebookLM の強みを整理しましょう。
強み 1:複数ソースの横断的理解
従来のノートアプリでは難しかった、複数資料を横断した統合的な理解が可能です。AI が全ソースを把握しているため、関連性や共通点を見つけ出せます。
強み 2:質問ベースの知識抽出
キーワード検索ではなく、自然言語での質問で情報を引き出せるのです。「適切なキーワードを思い出せない」という問題がなくなります。
強み 3:引用による信頼性
すべての回答に引用元が示されるため、情報の信頼性を確認できます。ハルシネーションのリスクも軽減されるでしょう。
強み 4:Audio Overview による新しい学習体験
視覚的な読解だけでなく、聴覚的な学習も可能になります。移動中や作業中に効率的に情報を吸収できるのです。
強み 5:整理の労力削減
フォルダやタグを手動で設定する必要がありません。AI が内容を理解しているため、質問すれば必要な情報が得られます。
強み 6:無料で利用可能
現時点で NotebookLM は完全に無料です。強力な AI 機能を追加費用なしで使えるのは大きな魅力でしょう。
以下の表は、NotebookLM の強みを整理したものです。
| # | 強み | 説明 | 活用シーン |
|---|---|---|---|
| 1 | 横断的理解 | 複数資料を統合して理解 | 学術研究、市場調査 |
| 2 | 質問ベース | 自然言語で情報抽出 | 資料の探索、学習 |
| 3 | 引用機能 | 回答の信頼性確認 | 論文執筆、レポート作成 |
| 4 | Audio Overview | 音声での学習 | 移動中の学習、チーム共有 |
| 5 | 整理不要 | AI が内容を理解 | 時間の節約 |
| 6 | 無料 | コストゼロ | すべてのユーザー |
NotebookLM の弱み
一方で、NotebookLM にはいくつかの弱みもあります。これらを理解することで、適切な使い分けができるでしょう。
弱み 1:自由なノート作成には不向き
NotebookLM はソースありきの設計です。ソースなしで自由にノートを書く用途には向いていません。
たとえば、会議のメモを取る、アイデアをブレインストーミングする、日記を書くといった用途には、Notion や Obsidian の方が適しているでしょう。
弱み 2:データベース機能の欠如
Notion のようなリレーショナルデータベース機能はありません。プロジェクト管理やタスク管理には向いていないのです。
以下の表は、Notion と NotebookLM のデータベース機能を比較したものです。
| # | 機能 | Notion | NotebookLM |
|---|---|---|---|
| 1 | テーブル作成 | ○ | × |
| 2 | リレーション | ○ | × |
| 3 | フィルタリング | ○ | △(質問で代替) |
| 4 | ソート | ○ | △(質問で代替) |
| 5 | ビュー切替 | ○ | × |
| 6 | カレンダー表示 | ○ | × |
弱み 3:オフライン利用不可
NotebookLM は完全にクラウドベースです。インターネット接続がない環境では使えません。
Obsidian のようなローカルファイルベースのツールと比べると、この点は不利でしょう。
弱み 4:カスタマイズ性の低さ
Notion のようなテンプレート機能や、Obsidian のようなプラグインシステムはありません。UI や機能のカスタマイズができないのです。
弱み 5:日本語対応の不完全さ
Gemini AI は日本語も扱えますが、英語と比べると精度が落ちることがあります。特に、専門用語や固有名詞の扱いに課題があるでしょう。
また、Audio Overview は現時点で日本語に対応していません。英語のソースでのみ利用可能です。
弱み 6:データのエクスポート制限
NotebookLM からデータをエクスポートする機能は限定的です。他のツールへの移行を考える場合、この点は障壁になります。
以下の図は、NotebookLM の弱みを視覚化したものです。
mermaidflowchart LR
nlm["NotebookLM"] -->|苦手| freeform["自由なノート作成"]
nlm -->|欠如| database["データベース機能"]
nlm -->|必須| internet["インターネット接続"]
nlm -->|限定的| customize["カスタマイズ"]
nlm -->|不完全| japanese["日本語対応"]
nlm -->|制限| export["データエクスポート"]
図で理解できる要点:
- NotebookLM は特定の用途に特化している
- 従来のノートアプリが得意とする機能は弱い
- ツールの選択には用途の見極めが重要
以下の表は、NotebookLM の弱みを整理したものです。
| # | 弱み | 説明 | 代替ツール |
|---|---|---|---|
| 1 | 自由なノート作成 | ソースなしでは使いにくい | Notion、Obsidian |
| 2 | データベース機能 | プロジェクト管理に不向き | Notion、Airtable |
| 3 | オフライン利用 | ネット接続必須 | Obsidian、OneNote |
| 4 | カスタマイズ | UI や機能の調整不可 | Notion、Obsidian |
| 5 | 日本語対応 | 英語より精度が低い | 国産ツール検討 |
| 6 | エクスポート | データ移行が困難 | オープン形式のツール |
従来ノートアプリとの本質的な違い
ここまでの分析を基に、NotebookLM と従来のノートアプリの本質的な違いを整理しましょう。
パラダイムの違い
最も大きな違いは、情報との向き合い方のパラダイムです。
従来のノートアプリ:「書く」パラダイム
従来のノートアプリは、ユーザーが能動的に情報を入力・整理することを前提としています。
markdown従来のワークフロー:
1. 情報を見つける
2. 読む
3. 理解する
4. ノートに書く
5. 整理する(フォルダ、タグ、リンク)
6. 後で見返す
このアプローチでは、ユーザーの思考と整理のスキルが重要になります。
NotebookLM:「問う」パラダイム
NotebookLM は、AI に質問して理解を深めることを前提としています。
markdownNotebookLM のワークフロー:
1. 情報源(ソース)を用意する
2. アップロードする
3. AI に質問する
4. 回答を得る
5. さらに深掘りの質問をする
6. 必要に応じてノートとして保存
このアプローチでは、適切な質問を投げかける力が重要になるのです。
情報の流れの違い
以下の図は、両者の情報の流れの違いを示しています。
mermaidflowchart TD
subgraph traditional ["従来のノートアプリ"]
info1["情報"] -->|読む| user1["ユーザー"]
user1 -->|書く| note1["ノート"]
note1 -->|整理| organized1["整理済みノート"]
organized1 -->|検索| user1
end
subgraph notebooklm ["NotebookLM"]
info2["情報(ソース)"] -->|解析| ai["AI"]
ai -->|理解| kb[("ナレッジベース")]
user2["ユーザー"] -->|質問| ai
kb -->|参照| ai
ai -->|回答| user2
user2 -->|深掘り質問| ai
end
図で理解できる要点:
- 従来は「人間が理解して書く」プロセス
- NotebookLM は「AI が理解してユーザーが問う」プロセス
- 情報の流れが根本的に異なる
使い分けの指針
両者は競合ではなく、補完的な関係にあります。以下の表は、用途別の使い分けの指針です。
| # | 用途 | おすすめツール | 理由 |
|---|---|---|---|
| 1 | 会議メモ | Notion、OneNote | 自由な記述が必要 |
| 2 | タスク管理 | Notion、Todoist | データベース機能が必要 |
| 3 | 論文の文献レビュー | NotebookLM | 複数資料の横断理解 |
| 4 | アイデアのブレスト | Obsidian、Notion | 自由な発想・リンク |
| 5 | 学習ノート(資料あり) | NotebookLM | 質問ベースの理解 |
| 6 | プロジェクト文書管理 | Notion | 構造化と共同編集 |
| 7 | 市場調査の統合 | NotebookLM | 多様なソースの分析 |
| 8 | 日記・ジャーナル | Obsidian、Day One | プライベートな記述 |
ハイブリッドな活用
最も効果的なのは、両方を組み合わせることでしょう。
たとえば、以下のようなワークフローが考えられます。
markdownハイブリッドワークフローの例:
1. NotebookLM で複数の論文を分析
2. AI との対話で重要なポイントを抽出
3. 抽出したポイントを Notion に転記
4. Notion でプロジェクト全体を管理
5. 執筆段階で NotebookLM を再度参照
それぞれのツールの強みを活かすことで、より効率的な情報管理が実現するのです。
まとめ
NotebookLM は、従来のノートアプリとは根本的に異なるアプローチで情報を扱うツールです。
NotebookLM の本質は、以下の 3 点に集約されるでしょう。
- ソースベースの設計:情報源をアップロードし、AI が理解する
- 質問駆動のインタラクション:キーワード検索ではなく、自然言語での対話
- 引用による信頼性:すべての回答に根拠が示される
強みとしては、複数資料の横断的理解、質問ベースの知識抽出、Audio Overview による新しい学習体験が挙げられます。特に、学術研究や市場調査など、大量の資料を扱う場面で威力を発揮するのです。
一方で弱みもあります。自由なノート作成やデータベース機能、オフライン利用、カスタマイズ性などは、従来のノートアプリに劣っているでしょう。
重要なのは、NotebookLM が従来のノートアプリを置き換えるものではないという認識です。むしろ、両者は補完的な関係にあります。
自由なノート作成やプロジェクト管理には Notion や Obsidian を使い、大量の資料を横断的に理解する必要がある場面では NotebookLM を使う。このような使い分けが、最も効果的なアプローチとなるのではないでしょうか。
AI 時代の情報管理は、「人間が書く」から「AI に問う」へとシフトしつつあります。NotebookLM は、その新しいパラダイムを体現するツールと言えるでしょう。
あなたのワークフローに NotebookLM を組み込むことで、情報との向き合い方が変わるかもしれません。まずは無料で試してみて、その可能性を体験してみてはいかがでしょうか。
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