Storybook で始めるデザインシステム構築の第一歩

「デザインシステムを作りたいけど、どこから手をつけていいかわからない...」そんな風に感じたことはありませんか。
美しく統一された UI を持つ Web サービスを見るたびに、「うちのプロジェクトもこんな風に整理されたデザインシステムがあったらいいのに」と憧れを抱く方も多いのではないでしょうか。しかし、いざデザインシステム構築を始めようとすると、「何から始めれば良いの?」「どんなツールを使えば良いの?」と迷ってしまいますよね。
そんなあなたに朗報です。Storybook を使えば、デザインシステム構築の第一歩を驚くほど簡単に踏み出すことができるのです。
今回は、デザインシステム構築の初心者でも安心して始められるよう、Storybook を活用した具体的なアプローチをお伝えします。この記事を読み終わる頃には、きっと「今すぐにでも始めたい!」という気持ちになっているはずですよ。
デザインシステムが求められる背景
現代の Web アプリケーション開発において、デザインシステムはもはや必須と言えるほど重要な存在になっています。なぜこれほどまでに注目されているのでしょうか。
複雑化する Web アプリケーション
現在の Web アプリケーションは、従来の「ページ」単位の考え方から「コンポーネント」単位の開発へと大きく変化しました。一つのアプリケーションの中に数百、数千のコンポーネントが存在することも珍しくありません。
従来の Web 開発 | 現代の Web 開発 |
---|---|
ページ単位の設計 | コンポーネント単位の設計 |
静的なコンテンツ中心 | 動的なインタラクション中心 |
デザイナーとエンジニアの分業 | デザイナーとエンジニアの協業 |
単一デバイス対応 | マルチデバイス対応 |
この変化により、一貫性のある UIを保つことが格段に難しくなりました。
チーム開発の課題
特にチーム開発では、以下のような課題が顕在化しています。
1. デザインの一貫性不足 複数のデザイナーやエンジニアが関わることで、気づけば似たようなボタンが 5 種類も存在する...なんてことが起こりがちです。
2. コミュニケーションコストの増大 「このボタンのスタイルはどうすればいいの?」「この色の 16 進数コードは何?」といった質問が日常的に発生し、開発効率を下げています。
3. 保守性の低下 統一されたルールがないため、デザインの変更が必要になった際に、影響範囲を把握するのが困難になっています。
ユーザー体験への影響
デザインシステムの不在は、最終的にユーザー体験にも大きな影響を与えます。
typescript// 一貫性のないボタンの例
const InconsistentButtons = () => {
return (
<div>
{/* ページAのボタン */}
<button
style={{
background: '#007bff',
color: 'white',
padding: '8px 16px',
}}
>
送信
</button>
{/* ページBのボタン */}
<button
style={{
background: '#0056b3',
color: 'white',
padding: '10px 20px',
}}
>
保存
</button>
{/* ページCのボタン */}
<button
style={{
background: '#004085',
color: 'white',
padding: '12px 24px',
}}
>
完了
</button>
</div>
);
};
このような一貫性のない UI は、ユーザーに混乱を与え、ブランドの信頼性を損なう可能性があります。
ビジネス価値の観点
デザインシステムは、単なる技術的な課題解決ツールではありません。ビジネス価値の観点からも重要な役割を果たします。
効果 | 具体的なメリット |
---|---|
開発効率の向上 | 新機能開発時間の短縮 |
品質の向上 | バグの減少、ユーザビリティの改善 |
ブランド価値の向上 | 一貫性のある UI による信頼性向上 |
スケーラビリティ | 新しいプロダクトの迅速な立ち上げ |
これらの理由から、多くの企業がデザインシステム構築に注力しているのです。
デザインシステム構築でよくある課題
デザインシステムの重要性は理解できても、実際に構築を始めると様々な課題に直面します。多くのチームが挫折してしまう代表的な課題を見てみましょう。
課題 1:何から始めるべきかわからない
よくある悩み
- 「ボタンから?カラーから?どこから手をつけるべき?」
- 「既存のコンポーネントを整理すべき?それとも新しく作り直すべき?」
問題の根本原因 デザインシステム構築の全体像が見えていないため、どの順序で進めれば効率的なのかがわからない状態です。
課題 2:ツール選定の迷い
現在、デザインシステム構築に使えるツールは数多く存在します。
ツール名 | 特徴 | 学習コスト |
---|---|---|
Storybook | コンポーネント開発・文書化 | 中 |
Figma | デザインツール | 低 |
Zeroheight | ドキュメント特化 | 中 |
Bit | コンポーネント共有 | 高 |
Chromatic | ビジュアルテスト | 中 |
選択肢が多すぎて、「どれを選べば良いかわからない」という状況に陥りがちです。
課題 3:チーム内の合意形成
デザイナーの視点
- 「デザインの自由度が制限されるのでは?」
- 「創造性を失うのでは?」
エンジニアの視点
- 「導入コストが高いのでは?」
- 「開発速度が落ちるのでは?」
プロジェクトマネージャーの視点
- 「投資対効果が見えにくい」
- 「リソース配分の優先順位は?」
このように、立場によって懸念点が異なるため、チーム内での合意形成が困難になります。
課題 4:継続的な運用の難しさ
typescript// よくある失敗例:作っただけで終わってしまうパターン
const AbandonedDesignSystem = {
// 最初は意気込んで作ったコンポーネント
button: {
variants: ['primary', 'secondary', 'danger'],
sizes: ['small', 'medium', 'large'],
// ...詳細な仕様
},
// しかし、実際のプロジェクトでは...
// 「急いでいるから独自実装で」
// 「ちょっとした変更だから別で作っちゃおう」
//
// 結果:デザインシステムが形骸化
};
運用で直面する課題
- コンポーネントの更新が面倒
- 新しい要件に対応するルールが不明確
- 使い方の周知が行き届かない
課題 5:技術的な複雑さ
バージョン管理の問題
- 「デザインシステムを更新したら、既存のプロジェクトが壊れた」
- 「複数のプロジェクトで異なるバージョンを使っている」
配布・共有の問題
- 「npm パッケージとして配布すべき?」
- 「各プロジェクトにコピーするべき?」
これらの課題は、デザインシステム構築を始める多くのチームが経験する壁です。しかし、適切なアプローチとツールを選択することで、これらの課題を効果的に解決できるのです。
Storybook をデザインシステムの基盤にする理由
数あるツールの中で、なぜ Storybook がデザインシステム構築の基盤として最適なのでしょうか。その理由を具体的に見ていきましょう。
理由 1:コンポーネント中心のアプローチ
Storybook は、コンポーネント単位での開発・管理を前提として設計されています。これは、現代のフロントエンド開発のアプローチと完全に一致しています。
typescript// Storybookでのコンポーネント管理例
// 一つのコンポーネントに対して、様々な状態を定義
export const ButtonStories = {
// 基本状態
Default: {
args: { label: 'Button', variant: 'primary' },
},
// 無効状態
Disabled: {
args: {
label: 'Button',
variant: 'primary',
disabled: true,
},
},
// ローディング状態
Loading: {
args: {
label: 'Button',
variant: 'primary',
loading: true,
},
},
// 全サイズ一覧
AllSizes: {
render: () => (
<div style={{ display: 'flex', gap: '8px' }}>
<Button size='small' label='Small' />
<Button size='medium' label='Medium' />
<Button size='large' label='Large' />
</div>
),
},
};
この例のように、一つのコンポーネントの様々な状態を体系的に管理できるのが Storybook の大きな特徴です。
理由 2:デザイナーとエンジニアの架け橋
Storybook は、技術的な知識がなくても直感的に操作できるインターフェースを提供します。
デザイナーができること
- ブラウザで実際の動作を確認
- リアルタイムでプロパティを変更
- 様々な状態を簡単に切り替え
- デザインの意図を具体的に伝達
エンジニアができること
- 独立した環境でのコンポーネント開発
- 自動ドキュメント生成
- テストの自動化
- 継続的インテグレーション
理由 3:段階的な導入が可能
Storybook は、既存のプロジェクトに段階的に導入できます。
段階 | 内容 | 所要時間 |
---|---|---|
フェーズ 1 | 基本的なセットアップ | 30 分 |
フェーズ 2 | 既存コンポーネントのストーリー作成 | 1-2 日 |
フェーズ 3 | ドキュメント整備 | 1 週間 |
フェーズ 4 | アドオン活用・高度な機能 | 継続的 |
この段階的なアプローチにより、リスクを最小限に抑えながら導入できます。
理由 4:豊富なエコシステム
Storybook は、デザインシステム構築に必要な機能を網羅する豊富なアドオンを提供しています。
typescript// .storybook/main.ts での設定例
export default {
addons: [
'@storybook/addon-essentials', // 基本機能
'@storybook/addon-a11y', // アクセシビリティチェック
'@storybook/addon-design-tokens', // デザイントークン管理
'@storybook/addon-docs', // ドキュメント生成
'storybook-addon-designs', // Figmaデザイン連携
],
};
主要なアドオンの効果
アドオン | 効果 | デザインシステムでの価値 |
---|---|---|
Controls | リアルタイムでのプロパティ変更 | デザイナーの自律的な確認 |
Docs | 自動ドキュメント生成 | 使い方の周知徹底 |
A11y | アクセシビリティチェック | インクルーシブなデザイン |
Design Tokens | デザイントークン管理 | 一貫性のある色・スペース |
理由 5:継続的な改善サイクル
Storybook は、継続的な改善を支援する仕組みが充実しています。
typescript// 自動テスト連携の例
// コンポーネントの変更を自動検知
export const VisualRegressionTest = {
play: async ({ canvasElement }) => {
// 自動操作によるテスト
const canvas = within(canvasElement);
const button = canvas.getByRole('button');
// 各状態での見た目をキャプチャ
await userEvent.hover(button);
await userEvent.click(button);
},
};
継続的改善を支援する機能
- ビジュアルリグレッションテスト
- コンポーネント使用状況の追跡
- パフォーマンス測定
- アクセシビリティスコアの監視
これらの理由により、Storybook はデザインシステム構築の基盤として理想的な選択肢なのです。特に、技術的な複雑さを隠蔽しながら、強力な機能を提供する点が、初心者にも優しい理由と言えるでしょう。
最初に作るべき基本コンポーネント 5 選
デザインシステム構築を始める際、「どのコンポーネントから作り始めるべきか」は非常に重要な判断です。経験上、以下の 5 つのコンポーネントから始めることで、効率的にデザインシステムの基盤を構築できます。
1. Button(ボタン)コンポーネント
なぜ最初に作るべきか ボタンは最も使用頻度が高く、デザインシステムの基本思想が最も表れるコンポーネントです。また、比較的シンプルな構造のため、チームメンバーがデザインシステムの概念を理解するのに最適です。
typescript// Button コンポーネントの基本設計
export interface ButtonProps {
/** ボタンの表示テキスト */
children: React.ReactNode;
/** ボタンの種類 */
variant?: 'primary' | 'secondary' | 'outline' | 'ghost';
/** サイズ */
size?: 'sm' | 'md' | 'lg';
/** 無効状態 */
disabled?: boolean;
/** 全幅表示 */
fullWidth?: boolean;
/** アイコン */
icon?: React.ReactNode;
/** クリックハンドラ */
onClick?: () => void;
}
export const Button: React.FC<ButtonProps> = ({
children,
variant = 'primary',
size = 'md',
disabled = false,
fullWidth = false,
icon,
onClick,
}) => {
return (
<button
className={cn(
'btn',
`btn--${variant}`,
`btn--${size}`,
{
'btn--full': fullWidth,
'btn--disabled': disabled,
}
)}
disabled={disabled}
onClick={onClick}
>
{icon && <span className='btn__icon'>{icon}</span>}
{children}
</button>
);
};
Storybook での活用例
typescript// Button.stories.ts
export const ButtonVariants: Story = {
render: () => (
<div
style={{
display: 'flex',
gap: '12px',
flexWrap: 'wrap',
}}
>
<Button variant='primary'>Primary</Button>
<Button variant='secondary'>Secondary</Button>
<Button variant='outline'>Outline</Button>
<Button variant='ghost'>Ghost</Button>
</div>
),
};
export const ButtonSizes: Story = {
render: () => (
<div
style={{
display: 'flex',
gap: '12px',
alignItems: 'center',
}}
>
<Button size='sm'>Small</Button>
<Button size='md'>Medium</Button>
<Button size='lg'>Large</Button>
</div>
),
};
2. Typography(文字)コンポーネント
重要性 文字は情報伝達の基本であり、読みやすさとブランドらしさを両立させる重要な要素です。
typescript// Typography システムの設計
export interface TextProps {
/** 文字の種類 */
variant?:
| 'h1'
| 'h2'
| 'h3'
| 'h4'
| 'h5'
| 'h6'
| 'body1'
| 'body2'
| 'caption';
/** 文字の太さ */
weight?: 'light' | 'normal' | 'medium' | 'bold';
/** 文字色 */
color?:
| 'primary'
| 'secondary'
| 'muted'
| 'error'
| 'success';
/** 中央寄せ */
align?: 'left' | 'center' | 'right';
/** 内容 */
children: React.ReactNode;
}
export const Text: React.FC<TextProps> = ({
variant = 'body1',
weight = 'normal',
color = 'primary',
align = 'left',
children,
}) => {
const Component = variant.startsWith('h') ? variant : 'p';
return (
<Component
className={cn(
'text',
`text--${variant}`,
`text--${weight}`,
`text--${color}`,
`text--${align}`
)}
>
{children}
</Component>
);
};
3. Input(入力)コンポーネント
なぜ重要か フォームは多くの Web アプリケーションの核心機能です。使いやすい入力コンポーネントは、ユーザー体験に直結します。
typescript// Input コンポーネントの設計
export interface InputProps {
/** ラベル */
label?: string;
/** プレースホルダー */
placeholder?: string;
/** 入力タイプ */
type?: 'text' | 'email' | 'password' | 'number' | 'tel';
/** 必須項目かどうか */
required?: boolean;
/** エラーメッセージ */
error?: string;
/** ヘルプテキスト */
helperText?: string;
/** 無効状態 */
disabled?: boolean;
/** 値 */
value?: string;
/** 変更ハンドラ */
onChange?: (value: string) => void;
}
4. Card(カード)コンポーネント
活用範囲の広さ カードコンポーネントは、情報をグループ化して表示する際の基本単位として、様々な場面で活用されます。
5. Layout(レイアウト)コンポーネント
システム全体の基盤 Container、Grid、Stack などのレイアウトコンポーネントは、一貫性のあるレイアウトを実現するために不可欠です。
コンポーネント | 優先度 | 学習効果 | 活用頻度 |
---|---|---|---|
Button | 最高 | 高 | 高 |
Typography | 高 | 中 | 高 |
Input | 高 | 中 | 中 |
Card | 中 | 中 | 中 |
Layout | 中 | 高 | 高 |
Storybook でコンポーネントライブラリを構築する手順
実際に Storybook を使ってコンポーネントライブラリを構築する具体的な手順をご紹介します。段階的に進めることで、無理なく本格的なデザインシステムを構築できます。
ステップ 1:プロジェクトのセットアップ
まず、Storybook をプロジェクトに導入しましょう。
bash# 新規プロジェクトの作成(既存プロジェクトがある場合はスキップ)
yarn create next-app@latest design-system-project --typescript --tailwind --eslint
# プロジェクトディレクトリに移動
cd design-system-project
# Storybook の初期化
yarn dlx storybook@latest init
ステップ 2:基本的なフォルダ構成の作成
デザインシステムを効率的に管理するため、適切なフォルダ構成を作成します。
csssrc/
├── components/ # コンポーネント本体
│ ├── Button/
│ │ ├── Button.tsx
│ │ ├── Button.stories.ts
│ │ ├── Button.test.tsx
│ │ └── index.ts
│ └── Typography/
│ ├── Typography.tsx
│ ├── Typography.stories.ts
│ └── index.ts
├── tokens/ # デザイントークン
│ ├── colors.ts
│ ├── spacing.ts
│ └── typography.ts
└── utils/ # ユーティリティ
└── cn.ts # クラス名結合用
ステップ 3:デザイントークンの定義
デザインシステムの一貫性を保つため、まずデザイントークンを定義します。
typescript// src/tokens/colors.ts
export const colors = {
// プライマリカラー
primary: {
50: '#eff6ff',
100: '#dbeafe',
500: '#3b82f6',
600: '#2563eb',
900: '#1e3a8a',
},
// セマンティックカラー
semantic: {
success: '#10b981',
warning: '#f59e0b',
error: '#ef4444',
info: '#3b82f6',
},
// ニュートラルカラー
neutral: {
50: '#f9fafb',
100: '#f3f4f6',
200: '#e5e7eb',
500: '#6b7280',
900: '#111827',
},
} as const;
// src/tokens/spacing.ts
export const spacing = {
xs: '4px',
sm: '8px',
md: '16px',
lg: '24px',
xl: '32px',
'2xl': '48px',
} as const;
ステップ 4:基本コンポーネントの実装
デザイントークンを活用して、基本コンポーネントを実装します。
typescript// src/components/Button/Button.tsx
import { colors, spacing } from '../../tokens';
export const Button: React.FC<ButtonProps> = ({
variant = 'primary',
size = 'md',
children,
...props
}) => {
const baseStyles = {
display: 'inline-flex',
alignItems: 'center',
justifyContent: 'center',
borderRadius: '6px',
fontWeight: '500',
cursor: 'pointer',
border: 'none',
transition: 'all 0.2s',
};
const variantStyles = {
primary: {
backgroundColor: colors.primary[500],
color: 'white',
'&:hover': {
backgroundColor: colors.primary[600],
},
},
secondary: {
backgroundColor: colors.neutral[100],
color: colors.neutral[900],
},
};
const sizeStyles = {
sm: {
padding: `${spacing.xs} ${spacing.sm}`,
fontSize: '14px',
},
md: {
padding: `${spacing.sm} ${spacing.md}`,
fontSize: '16px',
},
};
return (
<button
style={{
...baseStyles,
...variantStyles[variant],
...sizeStyles[size],
}}
{...props}
>
{children}
</button>
);
};
ステップ 5:Storybook ストーリーの作成
各コンポーネントに対して、包括的なストーリーを作成します。
typescript// src/components/Button/Button.stories.ts
import type { Meta, StoryObj } from '@storybook/react';
import { Button } from './Button';
const meta: Meta<typeof Button> = {
title: 'Design System/Button',
component: Button,
parameters: {
layout: 'centered',
docs: {
description: {
component: `
プロジェクト共通で使用するボタンコンポーネントです。
様々なバリエーションとサイズを提供し、一貫したユーザー体験を実現します。
`,
},
},
},
tags: ['autodocs'],
argTypes: {
variant: {
control: 'select',
options: ['primary', 'secondary', 'outline', 'ghost'],
description: 'ボタンの見た目のバリエーション',
},
size: {
control: 'select',
options: ['sm', 'md', 'lg'],
},
},
};
export default meta;
type Story = StoryObj<typeof meta>;
// 基本的な使用例
export const Primary: Story = {
args: {
children: 'Primary Button',
variant: 'primary',
},
};
// 全バリエーション表示
export const AllVariants: Story = {
render: () => (
<div style={{ display: 'flex', gap: '12px' }}>
<Button variant='primary'>Primary</Button>
<Button variant='secondary'>Secondary</Button>
<Button variant='outline'>Outline</Button>
<Button variant='ghost'>Ghost</Button>
</div>
),
parameters: {
docs: {
description: {
story:
'ボタンの全バリエーションを表示します。用途に応じて使い分けてください。',
},
},
},
};
ステップ 6:ドキュメント整備
Storybook の Docs 機能を活用して、使い方のドキュメントを整備します。
typescript// .storybook/main.ts
export default {
stories: ['../src/**/*.stories.@(js|jsx|mjs|ts|tsx)'],
addons: [
'@storybook/addon-essentials',
'@storybook/addon-docs',
{
name: '@storybook/addon-docs',
options: {
configureJSX: true,
},
},
],
};
この手順に従うことで、段階的に本格的なコンポーネントライブラリを構築できます。
チームで運用するためのルール作り
デザインシステムを構築しても、チーム全体で適切に運用されなければ、その価値は半減してしまいます。持続可能なデザインシステムを実現するためのルール作りが重要です。
基本的な運用ルール
1. コンポーネント作成のガイドライン
typescript// コンポーネント作成時のチェックリスト
const ComponentChecklist = {
// 必須項目
required: [
'TypeScript インターフェースの定義',
'Storybook ストーリーの作成',
'JSDoc コメントの記述',
'アクセシビリティの確認',
'レスポンシブ対応の確認',
],
// 推奨項目
recommended: [
'ユニットテストの作成',
'Visual Regression テスト',
'パフォーマンステスト',
'ブラウザ横断テスト',
],
};
2. 命名規則の統一
要素 | 命名ルール | 例 |
---|---|---|
コンポーネント | PascalCase | Button , InputField |
Props | camelCase | onClick , isDisabled |
CSS クラス | BEM 記法 | .btn , .btn--primary |
ストーリー | PascalCase | Primary , AllVariants |
3. バージョン管理ルール
typescript// package.json でのバージョン管理例
{
"name": "@company/design-system",
"version": "1.2.3",
"dependencies": {
// セマンティックバージョニングに従う
// MAJOR.MINOR.PATCH
// MAJOR: 破壊的変更
// MINOR: 新機能追加
// PATCH: バグ修正
}
}
コンポーネントレビュープロセス
1. プルリクエストテンプレート
markdown## 変更内容
- [ ] 新規コンポーネント追加
- [ ] 既存コンポーネント修正
- [ ] バグ修正
- [ ] ドキュメント更新
## チェックリスト
- [ ] Storybook で動作確認済み
- [ ] アクセシビリティチェック済み
- [ ] デザイナーレビュー済み
- [ ] 破壊的変更の場合は関係者に通知済み
## スクリーンショット
(Storybook の画面キャプチャを添付)
2. レビュー観点
観点 | チェック項目 |
---|---|
デザイン | ブランドガイドラインとの整合性 |
実装 | コードの品質、パフォーマンス |
ユーザビリティ | 使いやすさ、アクセシビリティ |
保守性 | ドキュメント、テストの充実度 |
継続的改善の仕組み
1. 使用状況の追跡
typescript// コンポーネント使用状況の追跡例
export const ComponentUsageTracker = {
// どのコンポーネントがよく使われているか
mostUsed: ['Button', 'Typography', 'Input'],
// 使われていないコンポーネント
unused: ['OldButton', 'DeprecatedCard'],
// アップデートが必要なコンポーネント
needsUpdate: ['ComplexForm', 'LegacyModal'],
};
2. フィードバック収集
- 定期的なチームミーティング
- デザインシステム改善提案の仕組み
- ユーザーからのフィードバック収集
3. 教育・啓蒙活動
typescript// チーム教育のための取り組み
const EducationProgram = {
// 新メンバー向けオンボーディング
onboarding: [
'デザインシステム概要説明',
'Storybook の使い方講習',
'コンポーネント作成ハンズオン',
],
// 定期的な学習会
regularSessions: [
'月次デザインシステム勉強会',
'新機能・改善点の共有',
'ベストプラクティスの事例紹介',
],
};
これらのルールを整備することで、チーム全体でデザインシステムを効果的に活用できるようになります。
まとめ
今回は、Storybook を活用したデザインシステム構築の第一歩について詳しくご紹介しました。
デザインシステム構築の価値
デザインシステムは、単なる見た目の統一だけではなく、チーム全体の生産性向上とユーザー体験の改善を実現する重要な取り組みです。
効果 | 具体的なメリット |
---|---|
開発効率 | コンポーネント再利用による開発時間短縮 |
品質向上 | 一貫した UI/UX によるユーザビリティ改善 |
チーム連携 | デザイナーとエンジニアの円滑なコミュニケーション |
保守性 | 体系化されたコンポーネントによる保守コスト削減 |
Storybook を選ぶべき理由
数あるツールの中で Storybook が最適な理由は、段階的な導入が可能で、技術的な知識に関係なく全員が活用できる点にあります。
特に印象的なのは、デザイナーが技術的な詳細を理解せずとも、直感的にコンポーネントの状態を確認・調整できることです。これにより、従来の「作って → 確認して → 修正して」という時間のかかるサイクルが劇的に短縮されます。
成功のポイント
デザインシステム構築を成功させるポイントは以下の通りです:
1. 小さく始める 完璧を求めず、基本的なコンポーネント(Button、Typography など)から段階的に構築する
2. チーム全体の合意形成 デザイナー、エンジニア、プロジェクトマネージャーなど、関係者全員の理解と協力を得る
3. 継続的な改善 作って終わりではなく、使いながら継続的に改善していく仕組みを作る
4. 教育・啓蒙 新しいメンバーが参加しても迷わないよう、ドキュメントと教育体制を整備する
今日から始められること
この記事を読んだあなたが、今日からできることは:
- 既存プロジェクトへの Storybook 導入(30 分程度)
- 最もよく使うコンポーネント 1 つのストーリー作成(1 時間程度)
- チームメンバーへのデモ(15 分程度)
「完璧なデザインシステムを作らなければ」と考える必要はありません。まずは小さな一歩から始めて、チーム全体で育てていけば良いのです。
最後に
デザインシステム構築は、一人で完結するものではありません。デザイナー、エンジニア、プロジェクトマネージャーなど、様々な役割の人が協力して初めて価値のあるものが作れます。
Storybook は、そんなチームワークを支援する素晴らしいツールです。技術的なハードルを下げながら、全員が参加できる環境を提供してくれます。
ぜひ今日から、あなたのチームでもデザインシステム構築の第一歩を踏み出してみてください。きっと、開発体験の変化に驚かれることでしょう。