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Vite で始める Svelte アプリ開発

Vite で始める Svelte アプリ開発

モダンなフロントエンド開発において、高速な開発体験と優れたパフォーマンスを両立させることは重要な課題です。そんな中、注目を集めているのがViteとSvelteの組み合わせです。

この記事では、Viteを使ったSvelteアプリケーション開発の基礎から実践的な使い方まで、初心者の方にもわかりやすく解説いたします。実際に手を動かしながら、最新のフロントエンド開発環境を体験していただけるでしょう。

背景

Svelte とは

Svelteは、Rich Harrisによって開発された革新的なフロントエンドフレームワークです。ReactやVueとは異なり、コンパイル時に最適化されたバニラJavaScriptコードを生成するという独特のアプローチを採用しています。

Svelteの主な特徴は以下の通りです。

特徴説明
コンパイル時最適化ビルド時にフレームワークコードを除去し、純粋なJavaScriptを生成
小さなバンドルサイズ実行時ライブラリが不要なため、アプリケーションサイズが小さい
直感的な記法HTMLライクな記法で、学習コストが低い
高いパフォーマンス仮想DOMを使わず、直接DOM操作で高速動作

Vite とは

Viteは、Vue.jsの作者であるEvan Youが開発した次世代のビルドツールです。ESモジュールとesbuildを活用することで、従来のWebpackベースの開発環境では実現できない高速な開発体験を提供します。

Viteが注目される理由を見てみましょう。

mermaidflowchart LR
  dev[開発サーバー起動] -->|瞬時| hmr[ホットリロード]
  hmr -->|高速| build[ビルド処理]
  build -->|最適化| deploy[デプロイ]
  
  vite[Vite] -.->|支援| dev
  vite -.->|支援| hmr
  vite -.->|支援| build

上図のように、Viteは開発からデプロイまでの全工程を高速化します。特に開発サーバーの起動は驚くほど速く、大規模プロジェクトでも数秒で立ち上がります。

従来の開発環境との違い

従来のWebpackベースの開発環境と比較して、Vite + Svelteの組み合わせには明確な優位性があります。

開発時の違い

  • サーバー起動時間:Webpack(30-60秒) → Vite(1-3秒)
  • ホットリロード:Webpack(2-5秒) → Vite(100-300ms)
  • 初回ビルド:従来の束縛から解放される体験

運用時の違い

  • バンドルサイズ:React/Vue(100-200KB) → Svelte(10-50KB)
  • 実行時パフォーマンス:仮想DOM → 直接DOM操作
  • メモリ使用量:フレームワークオーバーヘッドの大幅削減

課題

従来のビルドツールの問題点

多くの開発者が直面している課題として、ビルドツールの重さと複雑さがあります。

特に以下のような問題が頻繁に報告されています。

javascript// Webpack設定ファイルの例(複雑な設定が必要)
const webpack = require('webpack');
const HtmlWebpackPlugin = require('html-webpack-plugin');

module.exports = {
  entry: './src/index.js',
  module: {
    rules: [
      {
        test: /\.js$/,
        exclude: /node_modules/,
        use: {
          loader: 'babel-loader',
          options: {
            presets: ['@babel/preset-env']
          }
        }
      }
    ]
  },
  plugins: [
    new HtmlWebpackPlugin({
      template: './public/index.html'
    })
  ]
};

この設定だけでも、初心者には理解が困難な複雑さがあります。さらに、プロジェクトが大きくなるにつれて設定はより複雑になり、保守が困難になってしまいます。

開発効率の課題

現代のフロントエンド開発では、**開発体験(DX: Developer Experience)**が生産性に直結します。

主な課題として以下が挙げられます。

課題影響頻度
長い起動時間開発開始までの待機時間毎日複数回
遅いホットリロードコード変更の確認遅延1日100回以上
複雑なエラーメッセージデバッグ時間の増加エラー発生時

これらの課題により、開発者のモチベーション低下や生産性の著しい低下が発生しています。

パフォーマンスの問題

エンドユーザーのパフォーマンス体験も重要な課題です。

mermaidsequenceDiagram
  participant User as ユーザー
  participant Browser as ブラウザ
  participant Bundle as バンドル
  participant Framework as フレームワーク
  
  User->>Browser: ページアクセス
  Browser->>Bundle: JS読み込み (200KB+)
  Bundle->>Framework: フレームワーク初期化
  Framework->>Browser: 仮想DOM構築
  Browser->>User: 画面表示 (3-5秒)

従来のフレームワークでは、このように多段階の処理が必要で、初期表示に時間がかかってしまいます。

解決策

Vite + Svelte の組み合わせの利点

ViteとSvelteの組み合わせは、前述の課題を根本的に解決します。

技術的な解決アプローチ

javascript// Vite設定ファイル(シンプルな設定)
import { defineConfig } from 'vite'
import { svelte } from '@sveltejs/vite-plugin-svelte'

export default defineConfig({
  plugins: [svelte()]
})

このように、Viteの設定は驚くほどシンプルです。複雑な設定ファイルは不要で、すぐに開発を始められます。

高速な開発サーバー

Viteの開発サーバーは、ESモジュールを活用したオンデマンド処理により、従来とは比較にならない速度を実現しています。

mermaidflowchart TD
  start[開発サーバー起動] -->|即座| ready[準備完了]
  ready -->|ファイル変更| detect[変更検知]
  detect -->|必要な部分のみ| update[HMR更新]
  update -->|即座| reflect[ブラウザ反映]
  
  style start fill:#e1f5fe
  style ready fill:#c8e6c9
  style update fill:#fff3e0
  style reflect fill:#f3e5f5

上図のプロセスは、大規模プロジェクトでも数百ミリ秒で完了します。

最適化されたビルド

本番環境向けのビルドでも、Vite + Svelteの組み合わせは優秀です。

ビルド最適化の仕組み

javascript// ビルド時の自動最適化例
// 開発時のSvelteコンポーネント
<script>
  let count = 0;
  
  function increment() {
    count += 1;
  }
</script>

<button on:click={increment}>
  クリック数: {count}
</button>

このコンポーネントは、ビルド時に以下のような最適化されたJavaScriptに変換されます。

javascript// ビルド後の最適化されたコード(抜粋)
function create_fragment(ctx) {
  let button;
  let t0;
  let t1;
  
  return {
    c() {
      button = element("button");
      t0 = text("クリック数: ");
      t1 = text(/*count*/ ctx[0]);
    },
    m(target, anchor) {
      insert(target, button, anchor);
      append(button, t0);
      append(button, t1);
      
      if (!mounted) {
        dispose = listen(button, "click", /*increment*/ ctx[1]);
        mounted = true;
      }
    }
  };
}

フレームワークのランタイムコードが含まれず、純粋なDOM操作コードのみが生成されます。

具体例

プロジェクトのセットアップ

実際にVite + Svelteプロジェクトを作成してみましょう。

必要な環境

  • Node.js 16.0 以上
  • Yarn パッケージマネージャー

まずは、Viteテンプレートを使用してプロジェクトを作成します。

bash# Svelteテンプレートでプロジェクト作成
yarn create vite my-svelte-app --template svelte

# プロジェクトディレクトリに移動
cd my-svelte-app

続いて、依存関係をインストールします。

bash# 依存関係のインストール
yarn install

これだけで、基本的なSvelteアプリケーションの雛形が完成します。作成されるファイル構造は以下の通りです。

arduinomy-svelte-app/
├── public/
│   └── vite.svg
├── src/
│   ├── lib/
│   │   └── Counter.svelte
│   ├── App.svelte
│   └── main.js
├── index.html
├── package.json
└── vite.config.js

基本的な Svelte コンポーネント作成

Svelteコンポーネントの基本的な作成方法を見てみましょう。

まず、シンプルな挨拶コンポーネントを作成します。

javascript// src/lib/Greeting.svelte
<script>
  // プロパティの定義
  export let name = "世界";
  export let greeting = "こんにちは";
  
  // リアクティブな変数
  $: fullMessage = `${greeting}${name}さん!`;
</script>

<!-- テンプレート部分 -->
<div class="greeting-container">
  <h2>{fullMessage}</h2>
  <p>今日も良い一日をお過ごしください。</p>
</div>

<!-- スタイル部分 -->
<style>
  .greeting-container {
    padding: 20px;
    border: 2px solid #4CAF50;
    border-radius: 8px;
    background-color: #f9f9f9;
    text-align: center;
  }
  
  h2 {
    color: #2E7D32;
    margin-bottom: 10px;
  }
  
  p {
    color: #666;
    margin: 0;
  }
</style>

次に、このコンポーネントを使用するためにメインのAppコンポーネントを更新します。

javascript// src/App.svelte
<script>
  import Greeting from './lib/Greeting.svelte';
  
  let userName = '';
  let greetingType = 'こんにちは';
  
  const greetingOptions = [
    'こんにちは',
    'おはようございます',
    'こんばんは'
  ];
</script>

<main>
  <h1>Vite + Svelte アプリケーション</h1>
  
  <!-- ユーザー入力フォーム -->
  <div class="input-section">
    <label for="name">お名前:</label>
    <input 
      id="name" 
      type="text" 
      bind:value={userName} 
      placeholder="名前を入力してください"
    />
    
    <label for="greeting">挨拶:</label>
    <select id="greeting" bind:value={greetingType}>
      {#each greetingOptions as option}
        <option value={option}>{option}</option>
      {/each}
    </select>
  </div>
  
  <!-- 挨拶コンポーネント -->
  {#if userName}
    <Greeting name={userName} greeting={greetingType} />
  {/if}
</main>

<style>
  main {
    padding: 2rem;
    max-width: 600px;
    margin: 0 auto;
    font-family: Arial, sans-serif;
  }
  
  .input-section {
    margin: 20px 0;
    display: flex;
    flex-direction: column;
    gap: 10px;
  }
  
  label {
    font-weight: bold;
    color: #333;
  }
  
  input, select {
    padding: 8px;
    border: 1px solid #ddd;
    border-radius: 4px;
    font-size: 16px;
  }
</style>

開発サーバーの起動

開発サーバーを起動して、作成したアプリケーションを確認してみましょう。

bash# 開発サーバーの起動
yarn dev

このコマンドを実行すると、以下のような出力が表示されます。

bash  VITE v4.4.0  ready in 89 ms

  ➜  Local:   http://localhost:5173/
  ➜  Network: use --host to expose
  ➜  press h to show help

わずか89ミリ秒でサーバーが起動しました!ブラウザで http:​/​​/​localhost:5173​/​ にアクセスすると、作成したアプリケーションが確認できます。

ホットリロード機能の確認

コンポーネントファイルを編集してみてください。保存と同時に、ブラウザの画面が瞬時に更新されることが確認できるでしょう。

ビルドとデプロイ

本番環境向けのビルドを実行してみましょう。

bash# 本番用ビルドの実行
yarn build

ビルドが完了すると、dist ディレクトリに最適化されたファイルが生成されます。

bashdist/
├── assets/
│   ├── index-[hash].css
│   └── index-[hash].js
└── index.html

ビルド結果のサイズを確認してみましょう。

bash# ビルドサイズの確認
ls -la dist/assets/

一般的な結果:

ファイルサイズ説明
index-[hash].js15-25KBメインのJavaScriptファイル
index-[hash].css2-5KBスタイルシート
合計20-30KB全体のバンドルサイズ

同等のReactアプリケーションと比較すると、50-70%程度のサイズ削減が実現されています。

ローカルでの本番確認

bash# 本番ビルドのプレビュー
yarn preview

このコマンドで、本番環境と同じ条件でアプリケーションを確認できます。

まとめ

得られるメリット

Vite + Svelteの組み合わせにより、以下のような具体的なメリットが得られます。

開発体験の向上

  • サーバー起動時間:95%短縮(60秒 → 3秒)
  • ホットリロード:90%高速化(3秒 → 300ms)
  • 設定の簡素化:80%削減(100行 → 20行)

パフォーマンスの向上

  • バンドルサイズ:60%削減(150KB → 60KB)
  • 初期表示速度:40%向上(3秒 → 1.8秒)
  • 実行時メモリ:50%削減

保守性の向上

  • 学習コスト:HTMLライクな記法で習得が容易
  • デバッグ:シンプルなコードで問題の特定が簡単
  • チーム開発:統一された開発環境で品質向上

次のステップ

この記事で基礎を学んだ後は、以下のステップで更なるスキルアップを目指してください。

  1. 状態管理の学習

    • Svelte Store の活用
    • リアクティブプログラミングの理解
  2. ルーティングの実装

    • SvelteKit の導入
    • SSR(Server-Side Rendering)の活用
  3. TypeScript統合

    • 型安全な開発環境の構築
    • より堅牢なアプリケーション開発
  4. テスト環境の構築

    • Jest + Testing Library の導入
    • E2Eテストの実装
  5. デプロイメント最適化

    • Vercel、Netlify への自動デプロイ
    • パフォーマンス監視の実装

これらのステップを通じて、プロダクションレベルのSvelteアプリケーション開発スキルを身につけることができるでしょう。

関連リンク