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Storybook 代替ツール比較:Ladle/Histoire/Pattern Lab と何が違う?

Storybook 代替ツール比較:Ladle/Histoire/Pattern Lab と何が違う?

UI コンポーネントの開発において、Storybook は圧倒的なシェアを誇るツールです。しかし、プロジェクトの規模や要件によっては、より軽量で高速な代替ツールが適している場合もあります。

本記事では、Storybook の代替として注目される Ladle、Histoire、Pattern Lab という 3 つのツールを徹底比較します。それぞれの特徴や強み、どんな場面で活用すべきかを詳しく解説しますので、プロジェクトに最適なツール選びの参考にしていただけます。

背景

UI コンポーネント開発ツールの必要性

現代の Web 開発では、コンポーネント駆動開発(Component-Driven Development)が主流となっています。React、Vue、Svelte といったフレームワークでは、UI を再利用可能な小さなコンポーネントに分割して開発するアプローチが一般的です。

このような開発スタイルでは、各コンポーネントを独立した環境で開発・テスト・ドキュメント化できるツールが不可欠です。コンポーネントカタログツールを使うことで、以下のような効果が得られます。

  • ビジネスロジックや API から切り離してコンポーネントを開発できる
  • さまざまな状態やプロパティでの表示を簡単に確認できる
  • チーム全体で UI パターンを共有・再利用できる
  • デザイナーや PM との認識合わせがスムーズになる

Storybook の現状と課題

Storybook は、月間 3,855 万ダウンロード、GitHub スター数 88,569 を誇る、デファクトスタンダードのコンポーネント開発ツールです。400 以上のアドオンによる拡張性、豊富なテスト機能、充実したドキュメントなど、多くの強みを持っています。

しかし、その豊富な機能ゆえに以下のような課題も指摘されています。

  • セットアップの複雑さ: 初期設定や設定ファイルの記述が煩雑になりがち
  • ビルド速度: 大規模プロジェクトでは起動やビルドに時間がかかる
  • 学習コスト: 多機能であるがゆえに、習得に時間がかかる
  • バンドルサイズ: 依存パッケージが多く、プロジェクト全体のサイズが増える

これらの課題を解決するために、よりシンプルで高速な代替ツールが登場してきました。プロジェクトの要件や規模に応じて、Storybook 以外の選択肢を検討する価値は十分にあるでしょう。

以下の図は、Storybook とその代替ツールの関係性を示しています。

mermaidflowchart TD
    need["コンポーネント<br/>開発ツールの必要性"]
    storybook["Storybook<br/>(デファクト)"]
    issues["課題:セットアップ複雑<br/>ビルド遅い・学習コスト高"]
    alternatives["代替ツールの登場"]

    ladle["Ladle<br/>(React専用・Vite)"]
    histoire["Histoire<br/>(Vue/Svelte・Vite)"]
    patternlab["Pattern Lab<br/>(静的サイト生成)"]

    need --> storybook
    storybook --> issues
    issues --> alternatives
    alternatives --> ladle
    alternatives --> histoire
    alternatives --> patternlab

この図からわかるように、各代替ツールは Storybook の課題を解決するために、それぞれ異なるアプローチを取っています。

課題

Storybook が抱える主要な課題

Storybook を導入する際、多くの開発チームが直面する課題をより詳しく見ていきましょう。

1. 初期セットアップの複雑さ

Storybook は高機能であるがゆえに、プロジェクトへの導入時に以下のような設定が必要です。

  • Webpack や Babel などのビルドツール設定
  • アドオンの選択とインストール
  • TypeScript や CSS in JS などの環境設定
  • プロジェクト固有のエイリアスやパスの調整

これらの設定は、プロジェクトの構成によっては複雑になり、初心者には敷居が高く感じられます。特に、既存のビルド設定と Storybook の設定を整合させる作業は、時間がかかることが多いです。

2. ビルドパフォーマンスの問題

Storybook は従来、Webpack をベースにしていたため、以下のパフォーマンス課題がありました。

  • 初回起動に数十秒から数分かかる(プロジェクト規模による)
  • コンポーネントの変更時のホットリロードが遅い
  • 本番ビルドに時間がかかる

Storybook 7 以降では Vite サポートが追加され改善されていますが、従来の Webpack ベースの設定を使っているプロジェクトでは、依然としてパフォーマンスがボトルネックになることがあります。

3. 学習コストと保守負担

Storybook は豊富な機能を持つ反面、以下のような学習・保守コストが発生します。

  • CSF(Component Story Format)の記法を学ぶ必要がある
  • アドオンの使い方や設定方法の習得
  • バージョンアップ時の breaking changes への対応
  • 多数の依存パッケージの管理

小規模なプロジェクトや、シンプルなコンポーネントカタログだけが必要な場合、Storybook はオーバースペックに感じられることもあるでしょう。

以下の図は、これらの課題が開発フローに与える影響を示しています。

mermaidflowchart LR
    dev["開発者"] --> setup["セットアップ"]
    setup --> complex["設定ファイル多数<br/>依存関係の調整"]
    complex --> time1["時間コスト増"]

    dev --> develop["開発・テスト"]
    develop --> slow["ビルド遅延<br/>HMR待機"]
    slow --> time2["開発効率低下"]

    dev --> maintain["保守・更新"]
    maintain --> learning["バージョンアップ<br/>アドオン管理"]
    learning --> time3["保守コスト増"]

    time1 --> result["プロジェクト<br/>コスト増大"]
    time2 --> result
    time3 --> result

これらの課題に対して、代替ツールはそれぞれ異なる解決策を提供しています。

解決策

代替ツールの登場とそれぞれのアプローチ

Storybook の課題を解決するため、複数の代替ツールが登場しています。それぞれが異なる設計思想とアプローチで、特定のニーズに最適化されているのが特徴です。

Ladle:React × Vite で圧倒的な高速化

Ladle は React 専用のコンポーネント開発ツールで、Vite をベースにした高速ビルドを最大の特徴としています。

主な特徴

1. ゼロコンフィグで始められる

Ladle は、設定ファイルをほとんど書かずに始められます。以下のコマンドだけで導入できます。

bash# インストール
yarn add -D @ladle/react

# ストーリーファイルを作成して実行
yarn ladle serve

この簡潔さは、Storybook の複雑な設定ファイルに比べて大きなアドバンテージです。

2. Vite による高速ビルド

Vite の以下の特徴を活かし、劇的な速度向上を実現しています。

  • esbuild による超高速トランスパイル
  • ES Modules によるネイティブなモジュール読み込み
  • HMR(Hot Module Replacement)による瞬時の反映
  • コード分割による効率的な読み込み

実際の開発では、起動時間が 数秒以内、変更の反映が ミリ秒単位 と、体感できるほどの差があります。

3. Storybook との互換性

Ladle は CSF(Component Story Format)と Controls をサポートしているため、Storybook からの移行がスムーズです。既存の Storybook ファイルを少しの修正で再利用できる場合も多いでしょう。

メリットとデメリット

#項目内容
1メリットVite ベースで圧倒的に高速
2メリットゼロコンフィグで始められる簡潔さ
3メリットCSF 対応で Storybook から移行しやすい
4メリット単一の依存関係で管理が楽
5デメリットReact 専用(Vue や Svelte では使えない)
6デメリットStorybook ほどアドオンやエコシステムが豊富ではない
7デメリットコミュニティが小さく、情報が少ない

Ladle は、React プロジェクトで高速な開発環境を求める場合に最適な選択です。

Histoire:Vue / Svelte に特化した高速ツール

Histoire は、Vue と Svelte に特化したコンポーネント開発ツールです。Ladle と同様に Vite をベースにしており、高速性とシンプルさが特徴となっています。

主な特徴

1. Vue 2.7 / Vue 3 / Svelte 3 対応

Histoire は以下のフレームワークに対応しています。

  • Vue 3(Composition API / Options API)
  • Vue 2.7
  • Svelte 3

React は対象外で、Vue と Svelte のエコシステムに最適化されているのが特徴です。

2. Vite の設定を自動的に再利用

Histoire の大きな利点は、既存の Vite 設定を自動的に継承することです。プロジェクトで使っている Vite の設定(エイリアス、プラグイン、環境変数など)をそのまま活用できるため、設定の二重管理が不要になります。

typescript// vite.config.ts の設定がそのまま Histoire でも使われる
import { defineConfig } from 'vite';
import vue from '@vitejs/plugin-vue';

export default defineConfig({
  plugins: [vue()],
  resolve: {
    alias: {
      '@': '/src',
    },
  },
});

3. テーマのカスタマイズとダークモード

Histoire は、独自のブランディングに合わせて外観をカスタマイズできます。ダークモードもデフォルトでサポートされており、開発者の好みに応じて切り替えられます。

4. コピー可能なコード自動生成

Histoire は、ストーリーから動的にテンプレートソースコードを生成します。開発者は表示されているコンポーネントのコードをワンクリックでコピーでき、実装がスムーズになります。

メリットとデメリット

#項目内容
1メリットVue / Svelte に特化した最適化
2メリットVite 設定の自動継承で設定不要
3メリット高速な開発ビルドと本番ページ読み込み
4メリットテーマカスタマイズとダークモード対応
5メリットコピー可能なコード自動生成
6デメリットReact では使えない
7デメリットStorybook に比べるとエコシステムが小さい
8デメリット大規模プロジェクトでの実績がまだ少ない

Histoire は、Vue や Svelte プロジェクトで、既に Vite を使っている場合に特におすすめです。

Pattern Lab:静的サイト生成による柔軟なアプローチ

Pattern Lab は、他のツールとは大きく異なるアプローチを取っています。Node 駆動型の静的サイトジェネレーターとして、UI パターンを組み合わせて静的なコンポーネントカタログを生成します。

主な特徴

1. フレームワーク非依存の柔軟性

Pattern Lab は特定の JavaScript フレームワークに依存しません。以下のような幅広いテンプレートエンジンに対応しています。

  • Handlebars
  • Twig
  • Mustache
  • その他カスタムテンプレートエンジン

この柔軟性により、React や Vue を使わないプロジェクトでも活用できます。例えば、WordPress や Drupal などの CMS テーマ開発、静的サイトジェネレーターとの組み合わせなど、幅広いユースケースに対応可能です。

2. Atomic Design との親和性

Pattern Lab は、Atomic Design の概念と相性が良い設計になっています。

  • Atoms(原子)
  • Molecules(分子)
  • Organisms(有機体)
  • Templates(テンプレート)
  • Pages(ページ)

これらの階層構造でコンポーネントを整理でき、デザインシステムの構築に適しています。

bashsrc/
  _patterns/
    00-atoms/          # ボタン、入力欄などの基本要素
    01-molecules/      # フォーム、カードなどの組み合わせ
    02-organisms/      # ヘッダー、フッターなどの複雑な構成
    03-templates/      # ページの骨格
    04-pages/          # 実際のページ例

3. 動的データ対応とプロトタイピング

Pattern Lab は JSON ファイルで動的データを定義し、テンプレートに流し込むことができます。実際のデータに近い形でプロトタイプを作成できるため、デザイナーやクライアントへのプレゼンテーションに有効です。

json// data/sample-data.json
{
  "title": "サンプルタイトル",
  "description": "これは説明文です",
  "items": [
    { "name": "アイテム1", "price": 1000 },
    { "name": "アイテム2", "price": 2000 }
  ]
}

4. パターンの系統図表示

Pattern Lab には、どのコンポーネントがどこで使われているかを追跡する機能があります。コンポーネントの変更時に影響範囲を把握しやすく、大規模なデザインシステムの管理に役立ちます。

5. レスポンシブ検証ツール

ビューポートリサイザーツールが組み込まれており、さまざまな画面サイズでの表示を簡単に確認できます。

メリットとデメリット

#項目内容
1メリットフレームワーク非依存で汎用性が高い
2メリットAtomic Design との親和性が高い
3メリット静的ファイル生成でホスティングが簡単
4メリット動的データでリアルなプロトタイプ作成
5メリットパターンの使用箇所を追跡できる
6デメリットReact / Vue のようなモダンフレームワークとの統合が弱い
7デメリットインタラクティブなコンポーネントのテストには不向き
8デメリットビルドツールが古く、開発速度は他ツールに劣る
9デメリットコミュニティが縮小傾向にある

Pattern Lab は、フレームワークに依存しない静的なデザインシステムを構築したい場合や、Atomic Design を厳密に適用したい場合に適しています。

以下の図は、各ツールの解決アプローチを比較しています。

mermaidflowchart TD
    problem["Storybook の課題"]

    subgraph ladle_solution["Ladle の解決策"]
        ladle_target["対象:React専用"]
        ladle_speed["Vite で高速化"]
        ladle_simple["ゼロコンフィグ"]
    end

    subgraph histoire_solution["Histoire の解決策"]
        histoire_target["対象:Vue/Svelte"]
        histoire_speed["Vite で高速化"]
        histoire_config["Vite設定を継承"]
    end

    subgraph pattern_solution["Pattern Lab の解決策"]
        pattern_target["対象:フレームワーク非依存"]
        pattern_static["静的サイト生成"]
        pattern_atomic["Atomic Design"]
    end

    problem --> ladle_solution
    problem --> histoire_solution
    problem --> pattern_solution

このように、各ツールは異なる課題に対して異なる解決策を提供しています。プロジェクトの技術スタックや要件に応じて、最適なツールを選択することが重要です。

具体例

実際のプロジェクトでの選択基準と実装例

ここでは、各ツールが実際にどのような場面で活用されるのか、具体的なコード例とともに見ていきましょう。

ケース 1:React プロジェクトで Ladle を使う

React と Vite を使った中規模プロジェクトで、コンポーネントカタログを高速に構築したいケースを考えます。

インストールとセットアップ

bash# Ladle のインストール
yarn add -D @ladle/react

package.json にスクリプトを追加します。

json{
  "scripts": {
    "dev": "vite",
    "build": "vite build",
    "ladle": "ladle serve",
    "ladle:build": "ladle build"
  }
}

ストーリーファイルの作成

Ladle では、*.stories.tsx ファイルを作成するだけでコンポーネントカタログに追加されます。

typescript// src/components/Button.tsx
import React from 'react';

interface ButtonProps {
  label: string;
  variant?: 'primary' | 'secondary' | 'danger';
  size?: 'small' | 'medium' | 'large';
  onClick?: () => void;
}

export const Button: React.FC<ButtonProps> = ({
  label,
  variant = 'primary',
  size = 'medium',
  onClick,
}) => {
  return (
    <button
      className={`btn btn-${variant} btn-${size}`}
      onClick={onClick}
    >
      {label}
    </button>
  );
};

次に、このコンポーネントのストーリーを作成します。

typescript// src/components/Button.stories.tsx
import type { Story } from '@ladle/react';
import { Button } from './Button';

// デフォルトのストーリー
export const Primary: Story = () => (
  <Button label='Primary Button' variant='primary' />
);

// バリエーション:セカンダリーボタン
export const Secondary: Story = () => (
  <Button label='Secondary Button' variant='secondary' />
);

// バリエーション:危険なアクション
export const Danger: Story = () => (
  <Button label='Delete' variant='danger' />
);

// サイズのバリエーション
export const Sizes: Story = () => (
  <div
    style={{
      display: 'flex',
      gap: '1rem',
      alignItems: 'center',
    }}
  >
    <Button label='Small' size='small' />
    <Button label='Medium' size='medium' />
    <Button label='Large' size='large' />
  </div>
);

Controls を使った動的なプロパティ変更

Ladle は Controls をサポートしているため、UI 上でプロパティを動的に変更できます。

typescript// src/components/Button.stories.tsx
import type { Story } from '@ladle/react';
import { Button } from './Button';

// Controls を使った動的なストーリー
export const Controlled: Story<ButtonProps> = ({
  label = 'Click me',
  variant = 'primary',
  size = 'medium',
}) => (
  <Button label={label} variant={variant} size={size} />
);

// Controls のデフォルト値を設定
Controlled.args = {
  label: 'Click me',
  variant: 'primary',
  size: 'medium',
};

このように設定すると、Ladle の UI 上で label、variant、size を動的に変更しながら、コンポーネントの表示を確認できます。

実行とビルド

bash# 開発サーバーの起動(数秒で起動します)
yarn ladle

# 本番用の静的ファイル生成
yarn ladle:build

Ladle は Vite ベースなので、起動は非常に高速です。変更の反映もほぼ瞬時に行われるため、開発体験が大幅に向上します。

ケース 2:Vue 3 プロジェクトで Histoire を使う

Vue 3 と Vite を使ったプロジェクトで、コンポーネントドキュメントを作成するケースです。

インストールとセットアップ

bash# Histoire のインストール(Vue 3 用)
yarn add -D histoire @histoire/plugin-vue

Histoire の設定ファイルを作成します。ただし、Vite の設定を自動継承するため、最小限の記述で済みます。

typescript// histoire.config.ts
import { defineConfig } from 'histoire';
import { HstVue } from '@histoire/plugin-vue';

export default defineConfig({
  plugins: [HstVue()],
  // Vite の設定が自動的に継承されるため、追加設定は不要
});

package.json にスクリプトを追加します。

json{
  "scripts": {
    "dev": "vite",
    "story:dev": "histoire dev",
    "story:build": "histoire build"
  }
}

ストーリーファイルの作成

Histoire では、*.story.vue ファイルを作成します。

vue<!-- src/components/UserCard.story.vue -->
<script setup lang="ts">
// コンポーネントのインポート
import UserCard from './UserCard.vue';

// サンプルデータの定義
const sampleUser = {
  name: '山田太郎',
  email: 'yamada@example.com',
  avatar: 'https://i.pravatar.cc/150?img=1',
};
</script>

<template>
  <!-- ストーリーのグループ -->
  <Story title="Components/UserCard">
    <!-- デフォルトのストーリー -->
    <Variant title="Default">
      <UserCard :user="sampleUser" />
    </Variant>

    <!-- アバターなしのバリエーション -->
    <Variant title="No Avatar">
      <UserCard :user="{ ...sampleUser, avatar: '' }" />
    </Variant>

    <!-- 長い名前のバリエーション -->
    <Variant title="Long Name">
      <UserCard
        :user="{
          ...sampleUser,
          name: 'これは非常に長い名前のユーザーです',
        }"
      />
    </Variant>
  </Story>
</template>

Histoire の特徴的な機能として、Controls を使った動的な変更も可能です。

vue<!-- src/components/Button.story.vue -->
<script setup lang="ts">
import Button from './Button.vue';

// 初期状態の定義
function initState() {
  return {
    label: 'ボタン',
    variant: 'primary',
    disabled: false,
  };
}
</script>

<template>
  <Story title="Components/Button" :init-state="initState">
    <template #default="{ state }">
      <Button
        :label="state.label"
        :variant="state.variant"
        :disabled="state.disabled"
      />
    </template>

    <!-- Controls の定義 -->
    <template #controls="{ state }">
      <HstText v-model="state.label" title="ラベル" />
      <HstSelect
        v-model="state.variant"
        title="バリアント"
        :options="['primary', 'secondary', 'danger']"
      />
      <HstCheckbox
        v-model="state.disabled"
        title="無効化"
      />
    </template>
  </Story>
</template>

実行とビルド

bash# 開発サーバーの起動
yarn story:dev

# 本番用ビルド
yarn story:build

Histoire は Vite の設定を継承するため、プロジェクトで定義したエイリアスやプラグインがそのまま使えます。これにより、設定の二重管理を避けられるのが大きな利点です。

ケース 3:Pattern Lab で静的デザインシステムを構築

フレームワークに依存しない静的な HTML/CSS デザインシステムを構築するケースです。

インストールとセットアップ

bash# Pattern Lab のインストール(Handlebars 版)
yarn add -D @pattern-lab/core @pattern-lab/engine-handlebars @pattern-lab/uikit-workshop

Pattern Lab の設定ファイルを作成します。

javascript// patternlab-config.json
{
  "paths": {
    "source": {
      "root": "./src/",
      "patterns": "./src/_patterns/",
      "data": "./src/_data/"
    },
    "public": {
      "root": "./public/"
    }
  },
  "engines": {
    "handlebars": {
      "extends": "@pattern-lab/engine-handlebars"
    }
  }
}

package.json にスクリプトを追加します。

json{
  "scripts": {
    "pl:serve": "patternlab serve",
    "pl:build": "patternlab build"
  }
}

Atomic Design に基づいたパターン作成

まず、Atoms(原子)レベルのボタンコンポーネントを作成します。

handlebars{{!-- src/_patterns/00-atoms/button/button.hbs --}}
<button
  class="btn btn-{{variant}} btn-{{size}}"
  {{#if disabled}}disabled{{/if}}
>
  {{label}}
</button>

ボタンのデータを JSON で定義します。

json// src/_patterns/00-atoms/button/button.json
{
  "label": "ボタン",
  "variant": "primary",
  "size": "medium",
  "disabled": false
}

次に、Molecules(分子)レベルのフォームフィールドを作成します。

handlebars{{!-- src/_patterns/01-molecules/form-field/form-field.hbs --}}
<div class="form-field">
  <label class="form-field__label" for="{{id}}">
    {{label}}
    {{#if required}}<span class="required">*</span>{{/if}}
  </label>
  <input
    type="{{type}}"
    id="{{id}}"
    name="{{name}}"
    class="form-field__input"
    {{#if required}}required{{/if}}
  />
  {{#if helpText}}
    <p class="form-field__help">{{helpText}}</p>
  {{/if}}
</div>

フォームフィールドのサンプルデータです。

json// src/_patterns/01-molecules/form-field/form-field.json
{
  "id": "email",
  "name": "email",
  "type": "email",
  "label": "メールアドレス",
  "required": true,
  "helpText": "有効なメールアドレスを入力してください"
}

Organisms(有機体)レベルで、複数のパターンを組み合わせます。

handlebars{{!-- src/_patterns/02-organisms/login-form/login-form.hbs --}}
<form class="login-form">
  <h2 class="login-form__title">{{title}}</h2>

  {{> molecules-form-field:emailField }}
  {{> molecules-form-field:passwordField }}

  <div class="login-form__actions">
    {{> atoms-button:submitButton }}
    {{> atoms-button:cancelButton }}
  </div>
</form>

サンプルデータで各パーツを定義します。

json// src/_patterns/02-organisms/login-form/login-form.json
{
  "title": "ログイン",
  "emailField": {
    "id": "email",
    "name": "email",
    "type": "email",
    "label": "メールアドレス",
    "required": true
  },
  "passwordField": {
    "id": "password",
    "name": "password",
    "type": "password",
    "label": "パスワード",
    "required": true
  },
  "submitButton": {
    "label": "ログイン",
    "variant": "primary",
    "size": "large"
  },
  "cancelButton": {
    "label": "キャンセル",
    "variant": "secondary",
    "size": "large"
  }
}

実行とビルド

bash# 開発サーバーの起動
yarn pl:serve

# 静的ファイルの生成
yarn pl:build

Pattern Lab はブラウザ上で、各パターンの階層構造、使用箇所、レスポンシブ表示などを確認できます。生成された静的ファイルは、そのままホスティングしてデザインシステムのドキュメントとして公開できます。

各ツールの使い分けまとめ図

以下の図は、プロジェクトの特性に応じた各ツールの選択基準を示しています。

mermaidflowchart TD
    start["プロジェクト要件"]

    framework{"使用フレームワーク"}

    react["React"]
    vue["Vue / Svelte"]
    other["フレームワーク非依存<br/>または静的HTML"]

    speed{"開発速度重視?"}
    atomic{"Atomic Design<br/>厳密に適用?"}

    ladle_choice["★ Ladle<br/>高速・シンプル"]
    histoire_choice["★ Histoire<br/>Vite統合"]
    pattern_choice["★ Pattern Lab<br/>静的生成"]
    storybook_choice["Storybook<br/>(高機能必要時)"]

    start --> framework

    framework -->|React| react
    framework -->|Vue/Svelte| vue
    framework -->|その他| other

    react --> speed
    speed -->|はい| ladle_choice
    speed -->|いいえ| storybook_choice

    vue --> histoire_choice

    other --> atomic
    atomic -->|はい| pattern_choice
    atomic -->|いいえ| storybook_choice

この図からわかるように、各ツールには明確な「得意領域」があります。プロジェクトの技術スタック、開発速度の優先度、デザインシステムの構築方針などを考慮して選択することが重要です。

まとめ

本記事では、Storybook の代替ツールとして注目される Ladle、Histoire、Pattern Lab の 3 つを詳しく比較してきました。最後に、それぞれのツールの特徴と選択基準をまとめます。

各ツールの特徴まとめ

Ladle:React × Vite で高速開発

  • React 専用で Vite ベースの圧倒的な高速性が魅力
  • ゼロコンフィグで始められる手軽さ
  • CSF 対応で Storybook からの移行もスムーズ
  • 小〜中規模の React プロジェクトに最適

Histoire:Vue / Svelte に特化した最適化

  • Vue 3、Vue 2.7、Svelte 3 に対応
  • Vite 設定を自動継承し、設定の二重管理が不要
  • テーマカスタマイズやダークモード標準対応
  • Vue / Svelte プロジェクトで Vite を使っている場合に最適

Pattern Lab:フレームワーク非依存の静的生成

  • フレームワークに依存せず、幅広いテンプレートエンジンに対応
  • Atomic Design との親和性が高く、デザインシステム構築に適する
  • 静的ファイル生成でホスティングが容易
  • フレームワーク非依存のデザインシステムや、厳密な Atomic Design を適用したい場合に最適

プロジェクトに応じた選択基準

以下の表は、プロジェクトの特性に応じたツール選択の目安です。

#プロジェクト特性推奨ツール理由
1React プロジェクト・開発速度重視LadleVite ベースで高速、設定不要
2Vue 3 / Svelte プロジェクトHistoireフレームワーク最適化、Vite 統合
3フレームワーク非依存Pattern Lab汎用性が高く、静的生成可能
4Atomic Design 厳密適用Pattern Lab階層構造とパターン追跡に強い
5大規模・多機能必要Storybookエコシステムとアドオンが豊富
6小規模・シンプル重視Ladle / Histoire軽量でセットアップが簡単

Storybook を使い続けるべきケース

代替ツールが優れている点は多いですが、以下のようなケースでは Storybook を選択すべきでしょう。

  • 複数フレームワークを同時に扱うプロジェクト(React + Vue など)
  • 充実したテスト機能が必要(ビジュアルリグレッションテスト、インタラクションテストなど)
  • 豊富なアドオンを活用したい(Figma 連携、アクセシビリティチェックなど)
  • 大規模なデザインシステムで、実績のあるツールを使いたい
  • チーム全体で共通認識があり、学習コストをかけられる

最後に

Storybook は優れたツールですが、すべてのプロジェクトに最適とは限りません。プロジェクトの規模、使用フレームワーク、開発速度の優先度、チームのスキルセットなどを総合的に考慮し、最適なツールを選択することが重要です。

Ladle、Histoire、Pattern Lab はそれぞれ異なる強みを持ち、特定のユースケースでは Storybook を上回る開発体験を提供してくれます。本記事が、皆さんのプロジェクトに最適なコンポーネント開発ツールを選ぶ際の参考になれば幸いです。

まずは小さなプロジェクトや実験的な環境で試してみて、それぞれのツールの特性を体感してみることをおすすめします。実際に触れてみることで、各ツールの良さがより深く理解できるでしょう。

関連リンク