Github Project Padawanとは?エージェントが自律的にイシューを解決?

開発現場に AI を「組み込む」のではなく “委任する” 時代が訪れつつございます。
GitHub が 2025 年 2 月に発表した Project Padawan は、Issue からマージ直前までを自律的に進めるソフトウェアエンジニアリングエージェントです。
この記事では、Github Project Padawanとはなんなのかについて解説いたします。
Padawan の狙いと位置づけ
Padawan は Copilot Agent Mode の「伴走型」に対し、クラウドで動く「完全委任型」を志向しております
Issue を copilot-swe-agent
へアサインすると、専用ブランチを切り、修正コードとテストを生成し、プルリクエスト (PR) を作成する設計です
Copilot エージェントとの違い
Project Padawan は「VS Code で会話しながら編集する Copilot Agent Mode」とは目的が異なります。
Agent Mode が“人の指示を逐次補助するアシスタント”であるのに対し、Padawan は“丸ごと任せて戻って来る”完全委任型ワークフローを志向しています。
コア機能
# | 機能 | 解説 | 参考 |
---|---|---|---|
1 | Issue 自動解決 | ラベル copilot/padawan が付いた Issue を監視し、修正 + テスト付き PR を生成 | turn0search1 |
2 | レビュー対応ループ | 人間レビューコメントを要約し、追加コミットで修正を反映 | turn0search1 |
3 | セキュリティスキャン統合 | PR 直前に Code Scanning API を呼び出し、脆弱性があればパッチ同梱 | turn0search6 |
4 | マルチモデル推論 | GPT-4o・Claude 3.5・Gemini 等をタスクごとに選択しコスト最適化 | turn0search5 |
5 | 自己回復処理 | テスト失敗時にログ解析し、原因ファイルを自動再編集 | turn0search0 |
アーキテクチャ概観
Padawan は Planner / Executor / Reviewer の3段マイクロサービスで構成され、各フェーズで異なる LLM が呼び出されます。
Planner が Issue をタスク分解し、Executor が差分を生成、Reviewer がテストとセキュリティチェックを担います
全体は GitHub Actions 上のイベント駆動で、失敗ログは Executor にフィードバックされるサイクルを形成いたします。
利用における前提条件
- GitHub Copilot Business を契約中であること
- 対象組織が Project Padawan のクローズドプレビューに招待されていること
- 対応 Issue にラベルを付け、GitHub 上で Copilot エージェントに割り当てること
利用時のイメージ
- 再現手順を詳細に記載した Issue を作成
- ラベル
copilot/padawan
を追加し、Assignee を Copilot に設定 - 自動生成された PR を確認し、レビューコメントを記入
- Padawan が再コミット後、CI がグリーンならマージ
- 成功例をチームに共有し、タスク粒度を徐々に大きくする
実際に解決できる課題と価値
Project Padawan が想定しているのは、以下のような開発上の課題に対する解決です。
# | 課題 | 解決される理由 |
---|---|---|
1 | 同じようなバグ修正に時間がかかる | 再現手順と期待動作から自動で PR を生成できるため、手作業が削減される |
2 | テストコードの追加漏れ | Padawan は PR にユニットテストを含めるよう設計されており、品質担保の一助になる |
3 | 人手不足でレビューが滞る | コメントを要約して自動修正を繰り返すため、レビュー待ち工数が圧縮される |
4 | セキュリティパッチの反映が遅れる | GitHub の code scanning API を通じた脆弱性検出 + 自動修正にも対応予定 |
5 | チームごとに実装品質がバラつく | テンプレート化された修正パターンで標準化されたコードが提供される |
利用イメージ
入力された Issue から実行が始まる
まず、開発者が GitHub に以下のような Issue を投稿したとします。
md### 不具合
404 が返るプロフィール画像
### 再現手順
1. `/users/42` を開く
2. 画像リクエスト `/avatars/42.png` が 404
### 期待動作
存在しない場合 `/avatars/default.png` を返却
### 受け入れ条件
- 既存テスト全通過
- 新規ユニットテスト 2 件追加
この Issue に copilot/padawan
ラベルが付与され、Assignee に Copilot エージェントが指定されると、Project Padawan が処理を開始します。
Padawan が行う処理の流れ
-
内容理解と方針設計
LLM が Issue を解析し、修正対象のコード・想定される原因・修正戦略をプランニングします。 -
コードの生成と変更
getFallbackAvatarPath()
という新しいユーティリティ関数を作成。
コントローラ内で画像取得の分岐を挿入し、デフォルト画像の返却に対応。 -
ユニットテストの自動追加
avatar.spec.ts
に 404 状況下の fallback 動作を確認するテストを 2 ケース追加。 -
Pull Request の生成
padawan/fix-avatar-404
のような名前でブランチを作成し、以下のコミットログ付きで PR を発行:
textfeat(avatar): add fallback image logic
* util getFallbackAvatarPath を実装
* UserController を更新し util を使用
* avatar.spec.ts を追加
GitHub Actions による自動テスト
PR 作成直後、GitHub Actions が起動し、以下のワークフローに従って CI テストが実行されます。
yaml# .github/workflows/padawan-ci.yml
name: padawan-ci
on:
pull_request:
branches: ["padawan/**"]
jobs:
test:
runs-on: ubuntu-latest
steps:
- uses: actions/checkout@v4
- uses: actions/setup-node@v4
with:
node-version: 20
cache: yarn
- run: yarn install --immutable
- run: yarn test
この処理により、以下が保証されます:
- 既存コードとの互換性:
--immutable
により依存ライブラリの変更なし - テストパスの検証:既存・新規含むすべてのテストが成功したことを確認
- 失敗時の再対応:もし
yarn test
が失敗すれば、Padawan はエラー出力を分析し、追加コミットで修正を試みます
最終的なレビューとマージ
テストがグリーンとなった段階で、開発チームのレビュー担当者が PR をチェックします。
内容に問題がなければ、そのままマージ。もしコメントが付いた場合でも、Padawan はそれを自然言語処理で要約し、再度修正コミットを作成して応答します。
実行結果として得られるメリット
この一連の流れによって、以下のような成果が得られます。
# | 項目 | 説明 |
---|---|---|
1 | 修正にかかる時間の短縮 | 1件ずつコードを書かずに、丸ごと任せることができる |
2 | テストの自動化 | 修正コードと一緒にユニットテストも追加されるため、品質担保につながる |
3 | チーム運用の均質化 | コーディングスタイルやテスト粒度が標準化される |
4 | レビューフィードバックの迅速反映 | 指摘を受けてからの再コミットも自動で行える |
まとめ
Project Padawan は「Issue を書くだけで、PR とテストまで返ってくる」未来を提示する GitHub の次世代 AI エージェントです。
日本国内でも、すでに GitHub CEO からの日本語紹介が公開されており、将来的な展開は視野に入っています。
すぐに誰でも利用できるものではありませんが、どんな課題が解決されるか、どのような導入設計が必要かを理解しておくことは、生成 AI 時代のチーム開発において極めて重要な一歩となりそうです。