Playwright MCP のセキュリティ対策と認証フロー

ブラウザ自動化の新時代を切り開く Playwright MCP ですが、その強力な機能故に、セキュリティ対策と認証フローの設計は非常に重要な課題となっています。
AI とブラウザ自動化の融合により、これまで想像もできなかった業務効率化が実現できる一方で、新たなセキュリティリスクも生まれています。本記事では、企業環境で Playwright MCP を安全に運用するために必要なセキュリティ対策と、効果的な認証フローの構築方法について、実践的な観点から詳しく解説いたします。
皆さんの組織で安心して Playwright MCP を活用できるよう、実際のエラーコードや設定例を交えながら、わかりやすくご説明していきますね。
背景
Playwright MCP とは何か
Playwright MCP は、Model Context Protocol(MCP)を通じて AI モデルがブラウザ自動化を行えるようにする Microsoft が開発した革新的なツールです。従来の Playwright が人間の開発者向けの API を提供していたのに対し、Playwright MCP は AI エージェントが直接ブラウザを操作できる環境を提供します。
この技術の画期的な点は、スクリーンショットベースの操作ではなく、アクセシビリティスナップショットを活用することで、より高速で確実なブラウザ操作を実現していることです。
typescript// Playwright MCPの基本設定例
{
"mcpServers": {
"playwright": {
"command": "npx",
"args": [
"@playwright/mcp@latest"
]
}
}
}
上記の設定だけで、AI エージェントがブラウザを操作できるようになります。しかし、この手軽さこそが、セキュリティ上の懸念点でもあるのです。
AI 時代のブラウザ自動化における課題
AI 駆動のブラウザ自動化は、従来の自動化とは異なる特徴的な課題を抱えています。
人間と AI の判断基準の違い
人間であれば「このサイトは怪しい」と直感的に判断できる場面でも、AI は論理的な制約がない限り、あらゆる Web サイトにアクセスしてしまう可能性があります。
予期しない動作の可能性
AI の生成する操作シーケンスは、人間が想定しない複雑なパターンを含むことがあり、これが思わぬセキュリティホールを生む可能性があります。
セキュリティリスクの現状
現在、Playwright MCP を導入する企業で報告されている主なセキュリティリスクは以下の通りです。
# | リスク項目 | 影響度 | 発生頻度 |
---|---|---|---|
1 | 不正サイトへの意図しないアクセス | 高 | 中 |
2 | 認証情報の漏洩 | 高 | 低 |
3 | 内部ネットワークへの侵入 | 中 | 低 |
4 | 大量リクエストによる DDoS | 中 | 高 |
これらのリスクを理解した上で、適切な対策を講じることが重要です。
課題
従来のブラウザ自動化のセキュリティ問題
従来の Selenium や Puppeteer ベースの自動化では、スクリプト内でのセキュリティ制御が主流でした。しかし、この方法には以下のような限界がありました。
制御の分散化
各スクリプトファイルにセキュリティロジックが散在し、一元管理が困難でした。
javascript// 従来の方法:各スクリプトでの個別制御
const puppeteer = require('puppeteer');
async function automateTask() {
const browser = await puppeteer.launch();
// セキュリティチェックがスクリプトに散在
if (url.includes('suspicious-site.com')) {
console.error('Blocked suspicious site access');
return;
}
// 同様のチェックが複数箇所に...
}
この従来のアプローチでは、セキュリティポリシーの更新時に、すべてのスクリプトを修正する必要があり、メンテナンス性に課題がありました。
AI 連携時の認証フロー複雑化
AI エージェントによる自動化では、認証フローがより複雑になります。特に以下の点が課題となります。
動的な認証判断
AI が「このサイトにログインが必要」と判断した際の認証情報の管理が複雑です。
セッション管理の自動化
人間であれば自然に行うセッションの使い分けを、AI が適切に行えるかという問題があります。
マルチクライアント環境での権限管理
Playwright MCP の特徴的な機能であるマルチクライアント接続は、権限管理の新たな課題を生み出します。
json// 複数クライアントからの同時接続設定
{
"mcpServers": {
"playwright-shared": {
"url": "http://localhost:3002/sse"
}
}
}
上記のような共有設定では、複数の AI エージェントが同一のブラウザインスタンスにアクセスできるため、以下のような問題が発生する可能性があります:
- 異なるエージェント間での認証情報の意図しない共有
- 一方のエージェントの操作が他方の処理に影響を与える
- セキュリティポリシーの適用範囲の曖昧さ
解決策
Playwright MCP のセキュリティ対策機能
Playwright MCP には、これらの課題を解決するための強力なセキュリティ機能が組み込まれています。
オリジン制御メカニズム
最も重要なセキュリティ機能の一つが、アクセス可能なサイトを制御するallowedOrigins
とblockedOrigins
の設定です。
json{
"mcpServers": {
"playwright": {
"command": "npx",
"args": [
"@playwright/mcp@latest",
"--allowed-origins",
"https://company.com;https://trusted-partner.com",
"--blocked-origins",
"https://malicious-site.com;https://phishing-site.com"
]
}
}
}
この設定により、AI エージェントは指定されたサイトにのみアクセスでき、悪意のあるサイトへのアクセスが自動的にブロックされます。
ブロックリストは許可リストよりも先に評価されるため、万が一両方に同じサイトが含まれている場合は、安全側に倒れてアクセスがブロックされます。
ネットワーク分離とプロキシ設定
企業環境では、プロキシサーバーを経由したアクセス制御が一般的です。Playwright MCP は、この要件にも対応しています。
json{
"browser": {
"contextOptions": {
"proxy": {
"server": "http://corporate-proxy:8080",
"bypass": ".internal.company.com,.localhost"
}
}
}
}
プロキシバイパス設定により、社内システムへのアクセスは直接接続を使用し、外部サイトへのアクセスはプロキシ経由で行うという使い分けが可能です。
認証フロー最適化手法
永続プロフィール vs 分離モード
Playwright MCP では、認証情報の管理方法として 2 つのモードを選択できます。
永続プロフィールモード
通常のブラウザのように、ログイン状態や Cookie 情報が保持されます。
bash# デフォルトで永続プロフィールが有効
npx @playwright/mcp@latest
永続プロフィールは以下の場所に保存されます:
- Windows:
%USERPROFILE%\AppData\Local\ms-playwright\mcp-chrome-profile
- macOS:
~/Library/Caches/ms-playwright/mcp-chrome-profile
- Linux:
~/.cache/ms-playwright/mcp-chrome-profile
分離モード
セキュリティを重視する環境では、分離モードが推奨されます。
json{
"mcpServers": {
"playwright": {
"command": "npx",
"args": [
"@playwright/mcp@latest",
"--isolated",
"--storage-state=./secure-session.json"
]
}
}
}
分離モードでは、各セッションが独立しており、ブラウザを閉じると認証情報は消去されます。初期認証情報はstorage-state
ファイルから読み込まれ、セッション終了時には保存されません。
Storage State 管理
認証フローの自動化において、Storage State の適切な管理が重要です。
typescript// Storage State生成スクリプト例
const { chromium } = require('playwright');
async function generateStorageState() {
const browser = await chromium.launch({
headless: false,
});
const context = await browser.newContext();
const page = await context.newPage();
// 手動ログイン後にStorage Stateを保存
await page.goto('https://company-portal.com/login');
// ログイン完了後(手動操作)
await page.waitForSelector('[data-test="dashboard"]');
// 認証状態を保存
await context.storageState({
path: './authenticated-session.json',
});
await browser.close();
}
このスクリプトで生成された Storage State ファイルを使用することで、AI エージェントが毎回ログイン操作を行う必要がなくなります。
設定とベストプラクティス
設定ファイルによる一元管理
セキュリティ設定の一元管理のため、設定ファイルの使用が推奨されます。
json// playwright-mcp-config.json
{
"browser": {
"isolated": true,
"launchOptions": {
"headless": true,
"args": ["--no-sandbox", "--disable-dev-shm-usage"]
},
"contextOptions": {
"viewport": { "width": 1280, "height": 720 },
"ignoreHTTPSErrors": false
}
},
"network": {
"allowedOrigins": [
"https://company.com",
"https://trusted-api.com"
],
"blockedOrigins": [
"https://analytics-tracker.com",
"https://ad-network.com"
]
},
"capabilities": ["core", "tabs", "wait"]
}
設定ファイルを使用する場合の起動コマンド:
bashnpx @playwright/mcp@latest --config ./playwright-mcp-config.json
この方法により、セキュリティポリシーが一箇所に集約され、管理が容易になります。
具体例
セキュリティ設定の実装
実際の企業環境での設定例を見てみましょう。
ステップ 1: 基本セキュリティ設定
json{
"mcpServers": {
"playwright-secure": {
"command": "npx",
"args": [
"@playwright/mcp@latest",
"--config",
"./security-config.json",
"--headless",
"--no-sandbox",
"--isolated"
]
}
}
}
ステップ 2: 詳細なセキュリティポリシー設定
json// security-config.json
{
"browser": {
"isolated": true,
"launchOptions": {
"headless": true,
"args": [
"--disable-web-security",
"--disable-features=TranslateUI",
"--disable-ipc-flooding-protection"
]
}
},
"network": {
"allowedOrigins": [
"https://*.company.com",
"https://api.trusted-vendor.com"
],
"blockedOrigins": [
"https://*.facebook.com",
"https://*.google-analytics.com",
"https://*.doubleclick.net"
]
}
}
上記の設定では、自社ドメインと信頼できるベンダーの API にのみアクセスを許可し、広告やトラッキング系のサイトをブロックしています。
認証フロー構築事例
実際の業務システムでの認証フロー構築例をご紹介します。
企業ポータルサイトでの自動ログイン
typescript// 認証フロー構築スクリプト
async function setupCorporateAuthentication() {
try {
// 分離モードでブラウザ起動
const browser = await chromium.connectOverCDP(
'ws://localhost:3002'
);
const context = await browser.newContext({
storageState: './corporate-auth.json',
});
const page = await context.newPage();
// 認証確認
await page.goto('https://portal.company.com/dashboard');
// ログイン状態確認
const isAuthenticated = await page
.locator('[data-test="user-menu"]')
.isVisible();
if (!isAuthenticated) {
throw new Error(
'AUTH_FAILED: User not authenticated'
);
}
console.log('認証フロー確立完了');
return { browser, context, page };
} catch (error) {
console.error('認証エラー:', error.message);
throw error;
}
}
多要素認証(MFA)対応
現代の企業システムでは多要素認証が必須です。Playwright MCP でもこれに対応できます。
typescriptasync function handleMFAAuthentication(page) {
try {
// MFA画面の検出
const mfaRequired = await page
.locator('[data-test="mfa-prompt"]')
.isVisible({ timeout: 5000 });
if (mfaRequired) {
console.log('MFA認証が必要です');
// TOTPコード入力待機
await page
.locator('[data-test="mfa-code"]')
.fill(process.env.TOTP_CODE || '');
await page
.locator('[data-test="verify-mfa"]')
.click();
// 認証完了待機
await page.waitForSelector(
'[data-test="mfa-success"]',
{ timeout: 30000 }
);
}
return true;
} catch (error) {
console.error('MFA_ERROR:', error.message);
return false;
}
}
トラブルシューティング
実際の運用で発生する可能性のあるエラーと対処法をご紹介します。
よくあるエラー 1: Origin Blocked
arduinoError: net::ERR_BLOCKED_BY_CLIENT at https://blocked-site.com
原因: blockedOrigins
設定によりサイトがブロックされています。
対処法:
json{
"network": {
"allowedOrigins": ["https://necessary-site.com"],
"blockedOrigins": [] // 一時的にブロックリストを空にして確認
}
}
よくあるエラー 2: Authentication Timeout
javascriptError: Timeout 30000ms exceeded while waiting for selector '[data-test="dashboard"]'
原因: 認証プロセスが予想より時間がかかっているか、Storage State が無効です。
対処法:
typescript// タイムアウト時間を延長
await page.waitForSelector(
'[data-test="dashboard"]',
{ timeout: 60000 } // 60秒に延長
);
// Storage State再生成
await context.storageState({
path: './refreshed-auth.json',
});
よくあるエラー 3: Browser Launch Failed
javascriptError: Browser closed
Error: spawn /usr/bin/chromium-browser ENOENT
原因: ブラウザのインストールが不完全です。
対処法:
bash# ブラウザ再インストール
npx playwright install chromium
# または、Dockerを使用
docker run -i --rm --init --pull=always \
mcr.microsoft.com/playwright/mcp
セキュリティログの監視
運用環境では、セキュリティイベントの監視が重要です。
typescript// セキュリティログ出力例
function logSecurityEvent(eventType, details) {
const logEntry = {
timestamp: new Date().toISOString(),
eventType: eventType,
details: details,
userAgent: 'PlaywrightMCP/1.0',
sessionId: process.env.SESSION_ID,
};
console.log('SECURITY_LOG:', JSON.stringify(logEntry));
// 必要に応じて外部監視システムに送信
// await sendToSecuritySystem(logEntry);
}
// 使用例
await page.goto(url).catch((error) => {
if (error.message.includes('ERR_BLOCKED_BY_CLIENT')) {
logSecurityEvent('BLOCKED_ACCESS_ATTEMPT', {
blockedUrl: url,
reason: 'Origin policy violation',
});
}
});
まとめ
Playwright MCP のセキュリティ対策と認証フローの構築は、AI 時代のブラウザ自動化において欠かせない要素です。
セキュリティ対策の重要ポイント
- オリジン制御の徹底:
allowedOrigins
とblockedOrigins
を適切に設定し、アクセス可能なサイトを明確に制限する - 分離モードの活用: 機密性の高い作業では分離モードを使用し、セッション間の情報漏洩を防ぐ
- 一元的な設定管理: 設定ファイルを使用してセキュリティポリシーを一元管理する
認証フローの最適化ポイント
- Storage State 管理: 効率的な認証フローのために Storage State を適切に管理する
- MFA 対応: 現代的なセキュリティ要件に対応するため、多要素認証に対応する
- エラーハンドリング: 認証失敗時の適切な処理を実装する
これらの対策を適切に実装することで、Playwright MCP の強力な機能を安全に活用できます。AI 駆動のブラウザ自動化は、適切なセキュリティ対策と共に実装されることで、企業の生産性向上に大きく貢献するでしょう。
皆さんの組織でも、本記事でご紹介した設定例やベストプラクティスを参考に、安全で効率的な Playwright MCP 環境を構築していただければと思います。セキュリティは一朝一夕で完璧になるものではありませんが、継続的な改善により、より堅牢なシステムを構築していくことができますね。
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