複数のSuspenseをネストする設計とは?スケーラブルな非同期UI戦略

1. 複数のSuspenseをネストするとは?
Suspenseとは?
まず、ReactにおけるSuspenseとは、非同期でデータを読み込んだりコンポーネントを遅延させたりする際に、ローディングUI(フォールバック)を一時的に表示するための仕組みです。
基本形はこのようになります。
tsximport { Suspense } from 'react';
function MyComponent() {
return (
<Suspense fallback={<div>Loading...</div>}>
<AsyncComponent />
</Suspense>
);
}
<AsyncComponent />
の読み込みが完了するまで、fallback
の内容(ここでは「Loading...」)が表示されます。
複数ネストとは?
「複数のSuspenseをネストする」とは、
1つの画面内で複数の独立した非同期コンポーネントを、それぞれ別々にSuspenseでラップすることを指します。
さらに、Suspenseの中にさらにSuspenseを入れ子にする(ネストする)ことで、細かい単位で非同期UIを制御できるようになります。
イメージはこのような構造です。
tsx<Suspense fallback={<LoadingPage />}>
<Header />
<Suspense fallback={<LoadingSidebar />}>
<Sidebar />
</Suspense>
<Suspense fallback={<LoadingContent />}>
<MainContent />
</Suspense>
</Suspense>
- 最上位のSuspenseはページ全体を守る
- 内側のSuspenseで個別パーツ(Sidebar、MainContent)ごとにローディングを管理する
これが複数Suspenseネスト設計の基本形です。
なぜ複数使うのか?
複数Suspenseを使うことで、
- 読み込み完了したパーツから順次表示
- 画面全体を固めず、局所的なローディング管理 が可能になります。
たとえば、サイドバーだけ読み込みが遅れても、メインコンテンツだけ先に表示するといった柔軟なUXを提供できます。
2. ネスト構造の具体例
では、実際に複数Suspenseをネストした構造を、少し本格的な例でご紹介しましょう。
サンプル構成:ブログページ例
要件:
- ヘッダー(即時表示)
- サイドバー(人気記事、非同期取得)
- メインコンテンツ(記事データ、非同期取得)
- フッター(即時表示)
コード例
tsximport { Suspense } from 'react';
import Header from './Header';
import Footer from './Footer';
import Sidebar from './Sidebar';
import Article from './Article';
export default function BlogPage() {
return (
<div>
<Header />
<main style={{ display: 'flex' }}>
<Suspense fallback={<div>Loading sidebar...</div>}>
<Sidebar />
</Suspense>
<Suspense fallback={<div>Loading article...</div>}>
<Article />
</Suspense>
</main>
<Footer />
</div>
);
}
ポイント解説:
<Sidebar />
と<Article />
はそれぞれ独立して非同期ロード- それぞれ別々にLoading表示できる
- ユーザーにとって「表示できるものからどんどん見せる」自然なUXが作れる
Sidebar・Article内部もさらにネスト可能
たとえば、<Sidebar />
内部でもさらに細かく非同期データを読み込んでいる場合、その中にさらにSuspenseを入れ子にできます。
tsxexport default function Sidebar() {
return (
<div>
<h2>Popular Articles</h2>
<Suspense fallback={<div>Loading popular articles...</div>}>
<PopularArticles />
</Suspense>
</div>
);
}
このように、必要な単位で局所的に非同期UI制御できるのが、ネスト設計の強力なポイントです。
複数のSuspenseをネストする設計とは?スケーラブルな非同期UI戦略(後半)
3. ネスト設計が重要な理由
理由①:ローディング領域を局所化できる
ネストして設計することで、画面全体をブロックせず、
「読み込みが完了した部分から順次表示」
できるようになります。
これにより、ユーザーはページの一部だけでも素早く利用でき、体感速度が大幅に向上します。
📌 例
- サイドバーが遅れても、記事本文だけ先に読める
- コメント欄だけ読み込み中でも、記事は即表示できる
理由②:エラーハンドリングが細かくできる
さらに、Suspenseを細かく分けておくと、後述する**ErrorBoundary(エラーバウンダリ)**と組み合わせて
「一部だけエラーにして、他は正常に表示する」
という設計が可能になります。
これによって、アプリケーションの堅牢性(壊れにくさ)が向上します。
tsx<Suspense fallback={<div>Loading Sidebar...</div>}>
<ErrorBoundary fallback={<div>Sidebar failed to load.</div>}>
<Sidebar />
</ErrorBoundary>
</Suspense>
理由③:柔軟な読み込み戦略が立てられる
複数のSuspenseを組み合わせれば、
「重要なパーツは優先的にロード」「そこまで重要でないパーツは後回し」
といった細かい読み込み戦略が立てられます。
これは、特に大規模アプリケーションにおいてUX(ユーザー体験)を大きく左右する重要な要素です。
4. パフォーマンスへの影響と対策
ネスト設計の落とし穴
Suspenseをネストすればするほど、細かく制御できる一方で
「ネストが深くなりすぎると、管理コストが上がる」
というデメリットも存在します。
- Suspenseごとのfallback描画コスト
- Suspenseツリーの複雑化による開発コスト
- 過剰な分割による初期ロード遅延
これらを意識的に制御する必要があります。
対策①:適切な粒度でネストする
基本的な指針は、
🔸「ユーザーが待たされるとストレスを感じる単位で区切る」
です。
たとえば、
- ページ全体:必ずSuspenseで守る
- 主要パーツ(メインコンテンツ・サイドバーなど):個別にSuspense
- 細かい要素(ボタン一個だけなど):無理に個別Suspenseにしない
といったバランスを取りましょう。
対策②:SuspenseList
を活用する
Reactには、**複数のSuspenseをまとめて制御するSuspenseList
**という機能もあります。
tsximport { Suspense, SuspenseList } from 'react';
<SuspenseList revealOrder="forwards">
<Suspense fallback={<div>Loading first...</div>}>
<FirstComponent />
</Suspense>
<Suspense fallback={<div>Loading second...</div>}>
<SecondComponent />
</Suspense>
</SuspenseList>
ここでは、FirstComponent
が読み込み終わった後に、SecondComponent
が順次表示されます。
revealOrder="forwards"
(順番に表示)revealOrder="backwards"
(逆順に表示)revealOrder="together"
(全て揃ってからまとめて表示)
など、用途に合わせて制御できます。
対策③:できるだけ"一段階で読み込める"設計を目指す
あまりにもネストが深いと、コンポーネントツリーをたどるだけでレンダリングコストが高くなってしまいます。
理想は、1つの読み込みレイヤーの中に複数の子コンポーネントが収まるように設計することです。
tsx<Suspense fallback={<div>Loading dashboard...</div>}>
<DashboardHeader />
<DashboardContent />
<DashboardSidebar />
</Suspense>
このように、関連するパーツをまとめることも、パフォーマンスを最適化する鍵です。
5. まとめ
ここまで、複数のSuspenseをネストする設計について詳しく解説してきました。
💡 本記事のまとめ
- Suspenseのネストで画面表示の柔軟性が格段に上がる
- 適切な単位でネストしないと逆にパフォーマンス低下する
- ErrorBoundaryとの組み合わせで堅牢なUI設計が可能
- SuspenseListで複数のSuspenseを順序制御できる
- 重要なのは、**「UXを最優先」**に考えた設計!
6. 公式ドキュメント紹介とリンク
より深くReact公式の考え方に触れたい方は、以下のドキュメントをぜひご覧ください。
これらを参照しながら、さらに実践的な非同期UI設計にチャレンジしてみてください!